「今日のV撮り、外ロケからのCXの湾スタになったから、トラバラシといて~」
ディレクターがADに対して何気なく発した言葉。
もしあなたがADの立場だったら、それぞれの単語を理解できますか?
様々な業界において “隠語”と呼ばれる独自の用語を使うシーンが多々あります。ですから、目的の仕事に就く前にまずは業界用語を知っていないと話になりません。
そこで今回は、映像業界でよく耳にする業界用語から技術用語まで、一気に紹介していきます!
撮影用語編
まずは撮影の現場でよく使われる業界用語を紹介します。
あご
食事や食費のことです。食事には顎を使うことから、こう表現されるようになったと考えられています。「明日の仕事はあご付きです」との連絡があれば、食事は先方で用意してもらえます。
あし
交通費や交通手段を指します。「次の現場はあし付きね」と言われれば、交通費が支給されることを意味します。「深夜はあしに困るから早めに終わろう」との指示があれば、交通手段がないと想像できるでしょう。
アリネガ
使用頻度が高いと想定して準備した写真素材のことを指します。レンポジやストックフォトなども、汎用性の高い写真素材を意味する類語です。
内トラ
スタッフがエキストラとして出演することです。「トラ」はエキストラの略ですね。「内」は内輪を語源としています。
少人数のエキストラを発注するのが面倒な場合や、コストを削減したい場合に用いられます。
うるさい
被写体以外に余計なものが写り込んでしまっている状態を指します。似たような業界用語には「見切る」が挙げられるでしょう。
オス
電源ケーブルや音声・映像等のコネクターの接点が突起になっていて、はめ込む側のことです。
対義語は『メス』と表現されます。電源ケーブルや音声・映像等のコネクターの接点が穴になっていて、はめ込まれる側のことです。
映像パラ
パラは「Parallel」の略で、英語で並列を意味します。『映像パラ』とは、2台のカメラで映像を撮影する手法で、それぞれのカメラには役割や担当を振り分けられます。
押す
撮影や収録の進行が定刻よりも遅れること。「押してるから休憩は短縮しよう」「このペースだと今日も押すね」などのように使われます。
オールラッシュ
台本に合わせて編集したものを試写すること、もしくはその編集テープを指します。
ケツカッチン
収録後に次の予定が入っていて、ゆっくり撮影ができない状態を指します。撮影の際に利用する「カチンコ」が由来となってできた言葉で「ケツカッチンなので次のシーンで終了です」のように使われます。
上手(かみて)
撮影者から見て右側のことです。出演者側から見た場合は左側を指します。
「あの小道具、上手に移動させて」と指示があれば、撮影者から見て右に移動させます。
対義語の下手(しもて)は、撮影者から見て左側、出演者から見て右側のことです。
がや
エキストラや群衆のように、大勢の人を指す言葉です。
「がや入れて」と言われたら、エキストラスタッフを呼び、撮影に参加してもらいましょう。
完パケ
収録した映像にCMやテロップなどを挿入し、完全に編集されて放送できるVTRのことです。
「完全パッケージ化」の略語で、放送業界や音楽関係者、最近ではYouTuberにも使われています。
「完パケしたから、明日には納品できる」「完パケまでは残業覚悟で」などと日常的に用いられています。
消え物(きえもの)
食事シーンの撮影で使用する食べ物や飲み物のことです。撮影のために飲食して消耗することから、消え物と呼ばれるようになりました。
そのほかにも、タバコや線香、落として割る予定のグラス、破る予定の手紙なども消え物の一種です。
叩く(たたく)
カメラを上から下に向かって撮ることを指します。
また、シナリオや企画書を検討し直すことや値切ることにも使われます。
てっぺん
24時のことです。時計の針が真上を向くことが語源となっています。
てれこ
互い違いや入れ違い、あべこべになることです。また、一つおきにといった意味ももっています。
なめる
おもに下から上に向かってカメラアングルを上げることや、一定方向にアングルを移動させながら全体を見せることです。『叩く』の対義語です。
ばらす
機材を撤収したり、人が解散することを指します。ほかにも、仕事や案件がキャンセルになることを指す場合もあります。
場見る(バミる)
出演者の立ち位置やセットを置く位置の目安にするため、スタジオのセットや舞台の床などにテープなどを使ってしるしを付けることです。「バミっといて」と指示があれば、ガムテープやビニールテープで該当場所にしるしをつけましょう。
パン
カメラを水平方向に旋回させながらおこなう撮影技法のことです。パンニングと呼ばれることもあります。
船(ふね)
カメラを三脚に取り付ける際に必要になる板状の保持具のことで、『ベース』とも呼ばれます。
べた
カメラの三脚を可能な限り低い位置にセットすることで、さらに低い位置の場合は「べたべた」と表現されます。
ラスタチ
台本上で最後となる殺陣廻りのことです。「ラストのタチマワリ」を略しています。
巻き
『押す』の対義語で、進行が予定より早い状態や、急いで撮影して帳尻を合わせようとすることを表します。「巻きでお願い」といわれたら、急ぎ目で撮影して終了時間を早める必要があるでしょう。
わらう
物を片付けて、作業に支障のない場所に移動することです。「そこの小道具わらっといて」「さっきわらったセットは明日も使うからよろしく」のように使われます。
映像業界用語編
続いて映像業界で使われる専門用語をチェックしましょう。
F1層
20歳から34歳までの女性(Female)のことをF1層と呼びます。
35〜49歳までの女性はF2層、50歳以上はF3層と分類されています。
M1層
20〜34歳までの男性(male)のことをM1層と呼びます。
ちなみに35〜49歳までの男性はM2層、50歳以上をM3層と分類されています。
P帯
プライムタイムの略で、18:00〜23:00の時間帯を指します。もっとも視聴率が取れるのがこの時間帯のため、プライムタイムと名づけられたようです。
G帯
ゴールデンタイムの略で、19:00〜22:00の時間帯を指します。プライムタイムよりも2時間短くなっています。
クール
おもにテレビ番組で使用されることが多い業界用語で、1クールは3カ月間です。
2クールは6カ月、3クールは9カ月、4クールは12カ月なので1年間になります。
芸能界のお金の数え方
・1万円:「ツェーマン」
・2万円:「デーマン」
・3万円:「イーマン」
・4万円:「エフマン」
・5万円:「ゲーマン」
・6万円:「エーマン」
・7万円:「ハーマン」
・8万円:「オクターブ」
・9万円:「ナイン」←これだけは、そのままですね(笑)
これらは演奏家のギャラに由来していて、演奏家は数字を音の単位に置き換えて表現していたそうです。
1万から7万までは、C(ド)、D(レ)、E(ミ)、F(ファ)、G(ソ)、A(ラ)、B(シ)の順になっており、アルファベットの読み方はドイツ語です。
出代(でしろ)
出演する余白や余地のことを『でしろ』といいます。「あのタレントさんの出代があるか検討しといて」のような使われ方をします。
出役(でやく)
その名の通り、出演する役者のことです。裏方のスタッフとは反対の立場であり、表舞台に立つ人のことを指します。
平場
平場とは、ネタ以外の部分を指す言葉です。芸人さんがネタを披露する場面以外は、すべて平場と表現されます。
まとめ
一般的に浸透した業界用語もありますが、まだまだ業界人にしか伝わらない言葉もたくさんあります。
業界用語は業務の効率化を目的として用いられることもあるため、ある程度の業界用語は把握しておきましょう。
業界用語を使った指示にすぐに対応できなければ、最悪の場合、次の現場に呼んでもらえない可能性があります。
他の業界でも隠語は使われているようですが、ここまでの徹底ぶりは映像業界ならではなのかもしれません。