装丁家(ブックデザイナー)という仕事をご存知ですか?ブックカバーや表紙、扉、帯など本の外観をデザインする仕事です。
「紙面のデザインを作るデザイナーとは違うの?」と思われる方もいることでしょう。作家や編集者とは異なる視点で本の魅力をデザインする、装丁家の仕事内容や平均年収、やりがいなどをご紹介します。
装丁家(ブックデザイナー)の仕事内容とは
装丁家(ブックデザイナー)という職業は、あまり聞きなれないかもしれません。出版業界でデザイナーを志す人以外には一般的にはあまり知られていないのではないでしょうか。簡単に言えば「本の表紙をデザインする職業」のことで、ブックデザイナーとも呼ばれます。
書店やコンビニの棚にある書籍を見て、「気になる本だな」と手に取らせる――。本のデザインを通じて魅力を引き出す、クリエイティブディレクター的な役割を持っているといえるでしょう。
厳密には、装丁とは本の外側のデザインを手がけることで、ブックデザインとは外観だけでなく中身のデザインも含めたトータルデザインを指します。雑誌の表紙やページレイアウトを行う職業をエディトリアルデザイナーといいます。
装丁家(ブックデザイナー)はフリーランスか、出版社のデザイン部に属しているケースが多いです。
仕事の流れ
仕事の流れとしては、編集者や著者から依頼され、本の原稿(校正刷り)を読み、企画意図に合うようにイメージを膨らませます。
コスト・技術・時間などの制約がある中、本の内容に合わせて文字の書体や組み方、大きさを考え、写真・絵・イラスト・デザイン、さらには紙の材質にもこだわって決めていく「造本プラン」という本の設計書を作ります。
依頼側の要望を満たしつつも、書店で売れるデザインにすることが要求されます。
制作期間は短くて1ヵ月ほど、長い場合は1年以上かかるものまでさまざまです。
装丁家(ブックデザイナー)の平均年収と高収入の可能性
装丁家(ブックデザイナー)はフリーランスが多く、正確な平均年収を出すことは難しいといえます。会社勤務の平均年収でみると、デザイン会社に勤務する場合で300~400万円ほど、出版社勤務の場合で400~500万円(ともにクリーク・アンド・リバー社調べ)ほどでしょう。
クリエイティブ業界のお仕事情報サイト「CREATIVE JOB」に掲載されているいますので、是非探してみてください。
書籍の装丁を業務内容に含む都内勤務のグラフィックデザイナーで、想定月給18.5~40万円でした。額面に幅があるのは、実績によるところが大きいからだと予想できます。
装丁のみを専門で担当するケースは少なく、パッケージデザインなどグラフィックデザインの仕事のひとつとして、装丁を担当することが多いです。
社員でいる限りは、担当した本がベストセラーになっても給料制なので年収が大幅に増えることはありませんが、フリーランスになって仕事を引き受けるようになれば、仕事をした分だけ収入が増加します。
人気装丁家の場合、1冊20万円 のギャラが支払われるというケースもあります。月10冊担当すれば月収は200万円です。売れっ子になれば、年収1000万円以上を稼ぐことも不可能ではありません。
装丁家(ブックデザイナー)としてのスタートは、出版社・デザイン会社・広告代理店などの求人を見て社員になるところから始まります。書籍デザインを扱う会社の求人には、装丁を手がけるDTPデザイナー、グラフィックデザイナー募集といった求人募集がありますのでチェックしてみましょう。
装丁家(ブックデザイナー)になるには
装丁家(ブックデザイナー)を目指すためには、雑誌や書籍のデザインを行うデザイン会社や出版社でデザイナーとして働くか、ベテランの装丁家のアシスタントになるといった方法があります。
求められるスキル
装丁家(ブックデザイナー)に求められるスキルは、主に4つあります。
- デザイン力
- 読解力・情報収集力
- コミュニケーション能力
- 印刷や製本の知識
当然ですが、デザイナーとしてのデザイン力は必須です。
本を手に取るかどうか、売り上げにつながるかどうかは装丁のデザインに大きく左右されるからです。
担当する本が売れることが目的なので、作品から感じる魅力をデザインに反映する読解力・情報収集能力が求められます。作家や編集者と何度も打ち合わせをして擦り合わせるためコミュニケーション能力も必須です。
また、印刷や製本に対する知識も必要です。印刷・加工の工程や仕上がり、紙やインクの種類・特性・価格帯といった知識も業務を通じて学んでいきます。デザインの手法と印刷加工の技術を総合して、一冊の本に落とし込んでいく手腕が求められます。
そして、大前提として「本が好き」であることが最も重要です。
必要な資格
装丁家(ブックデザイナー)になるための資格は特にありません。デザイナーという職業なので、デザインソフトを使いこなす技術や、色彩感覚やアートディレクションのセンスを身につけることの方が大事です。
新卒ですぐに装丁家(ブックデザイナー)としてデビューすることはほぼなく、グラフィックデザイナーとしてデザインの基礎知識を学び、経験を積んでいくケースがほとんどです。
装丁家(ブックデザイナー)の魅力・やりがいとは
担当した本が売れていく様子、作家や作品の評価に大きく貢献できるという点が一番のやりがいといえるでしょう。
作品を生み出すのは作家ですが、その表紙やカバーのデザインは装丁家(ブックデザイナー)の力を借りるしかありません。本の顔ともいえる装丁の出来ばえによって本の売れ行きが変わることもあるため、とても重要な仕事です。
「この作品の魅力はどこにあるのだろうか」「作家の意図はなんだろうか」を熟考しながらデザインに落とし込むことで、本のクリエイティビティを無限に広げていくことができます。
制作に携わった本が多くの読者の手に渡った時、自身の仕事が評価されてたくさん仕事の依頼がやってくるようになった時に大きな達成感を得ることができるでしょう。
また、駆け出しの頃から一人前になる過程において、デザイナーとして自身の成長を感じられるところも魅力のひとつです。デザイン事務所などで得た知識や経験が何にも替えられない貴重な財産となり、フリーランスになってからそれらが生きて唯一無二のデザインを生み出すことができます。
まとめ
近年は出版不況で本の発行部数も減り、業界自体は新たな可能性を模索している状況です。しかし、本そのものは決してなくなることはありませんし、ブックデザインの需要自体がゼロになることはありません。
装丁家(ブックデザイナー)になりたいと思ったら、グラフィックデザイン学科がある専門学校や美術学校へ通い、デザイナーとしてスタートするケースが一般的です。
求人では、装丁も含めたさまざまなデザイン業務を担当するデザイナー枠で募集している会社が多いので、自分に合った職場かどうかを判断しましょう。一般的には、グラフィックデザイナーやイラストレーターといった肩書きの人もブックデザイナーとして装丁を手がけることもありますので、幅広い求人募集をチェックしておくとよいでしょう。