普段何気なく手に取っている雑誌や本、カタログや教科書など、冊子に特化したデザインを手掛ける人をエディトリアルデザイナーといいます。
この記事では、エディトリアルデザイナーの仕事内容、必要な能力やスキル、年収など押さえておくべき情報をまとめました。
エディトリアルデザイナーを目指している人は、ぜひ参考にしてください。
- エディトリアルデザイナーとは?
- グラフィックデザイナーとの違い
- 仕事内容
- 年収
- エディトリアルデザイナーになるには?
- エディトリアルデザイナーに向いている人
- エディトリアルデザイナーに必要なスキル
- 選ぶべき進路・就職先
- 企業が求める人物像
- エディトリアルデザイナーの今後は?
- まとめ
エディトリアルデザイナーとは?
書籍・雑誌・カタログ・パンフレット・マニュアル本・フリーペーパーなど、ページ数が多い印刷誌面のレイアウトを手がける職業を指します。
文章や写真、イラストのレイアウトで全体の構成を考え、読みやすい誌面にまとめてあげる編集能力を要求されます。
それには適切な文字組みの設定やフォントの知識が必要とされ、使用する紙や印刷方法の提案もすることがあります。
グラフィックデザイナーとの違い
エディトリアルは編集という意味です。エディトリアルデザイナーは、出版物の数ページ~数百ページににわたる内容をまとめ上げ、読みやすいデザインを作り出す職業です。
グラフィックデザイナーは、クライアントの伝えたい情報を整理し、視覚的に伝達できるようにする人のことを指します。広告やポスター、パッケージなどを主に作成しますが、エディトリアルデザイナーもグラフィックデザイナーを兼ねることも多く、境界は曖昧です。
仕事内容
どのような手順で仕事をしていくのか、流れを簡単に解説していきます。
1)方向性のすり合わせ
出版社や編集プロダクションの編集担当者と打ち合わせをし、著者や出版社の意向を汲み取りながらデザインの方向性をすり合わせます。
このときに必要であれば、カメラマンやイラストレーターの選定・提案を行うこともあります。
2)フォーマットレイアウト作成
フォーマットとなるデザインをレイアウトします。読者層により配色や扱うフォントも大きく変わるため、自分のセンスをアウトプットしつつ、内容のバランスを考えながらデザインします。
ときには数百ページにもわたるレイアウトのもとになるので、ここで作るデザインはとても重要です。
3)写真のディレクション
カメラマンへ写真のディレクションを行い、撮影に立ち会うこともあります。イラストを使う場合は、イラストレーターにイメージや、作成するイラストの大きさを伝えます。
4)レイアウト作成
原稿、写真、イラストラフなどの素材が揃ったら、レイアウト作業に入ります。原稿は、レイアウトの文字数を見てから、ライターが書くことも多くなっています。
ここでフォーマットデザインをDTPオペレーターにお願いすることもあります。文字組みのルールを記した指示書を作成し、データとともにわたします。
5)校正・校閲チェック
デザインを仕上げ、編集者に送ります。そこから版元や著者、校閲のチェックが入り、そのやり取りは数回に渡ります。このフェーズで文字校正を入念に行い、ミスや漏れがないようにします。
6)入稿データ作成
誌面ができあがったら、印刷所に入稿するための準備をして、入稿データを納めます。
その後、色校正という印刷の仕上がりをチェックするためのテスト印刷を行います。ここで写真の色味を整えてもらう指示をしたり、文字の修正をしたりすることもあります。
Webはミスがあってもすぐに修正することができますが、印刷にまわってしまうと後戻りができないので、責任の重い仕事と言えます。
年収
エディトリアルデザイナーの年収にはかなりのばらつきがあるようです。
アシスタントや若手であれば年収は200万円台からスタートすることも珍しくありませんが、扱う出版物によっては年収が1,000万円近いこともあります。
作品が名刺代わりになり、別の仕事のオファーにつながることもあります。実力がものを言う世界であることは間違いありません。
参考:【職種】エディトリアルデザイナーが明かす仕事の本音(https://honne.biz/job/e1511/)
エディトリアルデザイナーになるためには?
未経験で入社後、すぐにエディトリアルデザイナーになれるわけではありません。
まずはアシスタントデザイナーから始め、デザイナーやアートディレクターの指示のもと、画像の処理からグラフの作成やフォーマットデザインの簡単なテキストの流し込みをします。
そこから少ないページのデザインの作成を任され、慣れてくると徐々にページも増えていき、最終的には一冊のデザインを任されるようになります。こうしてレイアウトのスキルや編集、印刷など必要な知識を身につけていき、一人前のエディトリアルデザイナーとなります。
エディトリアルデザイナーに向いている人
本や雑誌を読むことが好きなのはもちろん、自分の考えやイメージをわかりやすく相手に伝えることができる人が向いています。読者にとって読みやすい誌面とは何か?客観的な目線でいることが大切です。
また、編集やカメラマンなど多くの人と接する機会が多いので、高いコミュニケーション能力が不可欠です。
ときには数百ページにわたり間違いがないか隅々までチェックする作業があるので、緻密なことを正確に根気強く取り組める性格の人が適しています。
また、締め切り前には長時間の残業が発生することもあるため、体力があることも求められます。
エディトリアルデザイナーに必要なスキル
特に必要な資格はありませんが、「未経験可」の求人でも以下のソフトが使えることは、必須と言えるでしょう。
グラフィックデザインはAdobeのIllustrator(イラストレーター)、Photoshop(フォトショップ)を使用しますが、エディトリアルデザインでは、同じくAdobeのInDesign(インデザイン)を主に使用します。
選ぶべき進路・就職先
美大や美術系専門学校を卒業して、デザイン事務所や出版社に就職するのが一般的です。
美術系大学以外から就職する人も珍しくありませんが、やはり作品が選考の基準になるため、普段から自主的に作品作りをしておかないといけません。
企業で多くの経験を積んだ後はアートディレクターとして活躍したり、フリーランスになったり、新たに事務所を立ち上げるデザイナーもたくさんいます。
企業が求める人物像
デザインセンスがあるのは当然なのですが、編集者やカメラマン、ライター、イラストレーターなどとも接することも多いので、コミュニケーション能力が高いことが求められます。
また、常にデザインや技術に対する向上心を持ち続ける気持ちも大事です。
エディトリアルデザイナーの今後は?
近年の電子書籍の普及により、紙の書籍の発行部数も大幅に減少しています。雑誌の廃刊を耳にすることも多いです。年収額では二極化が進んでいるため、スキルを身につけて必要とされるデザイナーにならない限り、年収アップは難しいと予想されます。
ときには印刷物と合わせたWebデザインのディレクションの依頼もあるので、積極的にWebの知識も身につけておくと今後もデザイナーを続けていくには有利といえるでしょう。
まとめ
エディトリアルデザインを手掛ける事務所の規模は小さい所が多く、多くの新人が早く実践的にデザインに関わることができ、ほかのデザイナーにはない、エディトリアルデザイナーならではの魅力がたくさんあります。
なにより、印刷物としてできあがったものを手にするときの達成感は計り知れません。雑誌や書籍ではクレジット(自分の名前)が載ることもあります。また、書店で自分が手がけた雑誌や書籍を目にしたときはとても嬉しいものです。
いかに読者が読みやすく、魅力的な誌面を作るかは、エディトリアルデザイナーの使命でしょう。責任が重く要求の多い仕事ですが、その分とてもやりがいを感じられる職業と言えます。
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