Webデザイナーとしてのキャリアアップやフリーランスからの就職を考えた場合、転職活動は1つの手段となります。すでにスキルや実績を持つ人材を欲しがる企業も数多くあるため、Webデザイナーの転職市場は思いの外、活況です。
ところで、Webデザイナーの転職においてポートフォリオが重要であることはご存知でしょうか。ポートフォリオと言うと自身の「作品集」「作品紹介」というイメージを持つ方も少なくありません。しかし、実はデザイナーにとって個性やスキルを伝える「名刺代わり」となり、採用担当者にとっては人材選定の「重要な情報源」となるのです。今回はWebデザイナーの転職活動におけるポートフォリオの重要性について解説していきます。
個性やスキルを伝える手助けになるポートフォリオ
ポートフォリオとはイタリア語のPortafoglio(ポルタフォリオ)が語源で、直訳すると「紙ばさみ」「折かばん」といった意味になります。クリエイターにとっては携わってきたプロジェクトや制作物をまとめたものであり、転職活動で必要に応じて採用担当者に見せる実績集のような役割があります。Webデザイナーにとってポートフォリオとは、具体的にどのようなものなのかを簡単に解説していきます。
Webデザイナーにとって名刺代わりに
一言で言えば、ポートフォリオはWebデザイナーにとって「名刺代わり」のようなものです。名前やSNS等の情報、保有しているスキル、これまで制作してきた作品などを掲載することで、自分が「どのようなWebデザイナーなのか」を相手に分かりやすく伝えるためのツールとなります。
有名なデザイナーやクリエイターであればその人の「顔」そのものが「名刺」となるかもしれません。しかしそういった人材は一握りです。実際に転職活動をする際には、採用側に「私はこういう人材です」という自己紹介ができるポートフォリオは必須であり、実績を証明するうえでも説得力につながることでしょう。もちろん名刺代わりですから、転職を行うのであれば事前に作成しておき、常に見せることができるように準備しブラッシュアップしておくことが大切です。
作品集ではなく自分を売り込む営業資料である
ここで勘違いしてはいけないのが、ポートフォリオは単なる「作品集」ではなく、自分を売り込む「営業資料」であるということです。強いこだわりが前面に出て制作物を羅列するだけのポートフォリオは、ただの作品集に過ぎません。個展を開くわけではなく転職活動をするという目線に立った場合、自分の持つスキルや経歴、できることを証明する手段として実績を掲載することが望ましいと言えます。そういった意味でも、ポートフォリオは自分を売り込むための対外的な営業資料=名刺代わりであるわけです。
採用担当者の心に響くポートフォリオとは
Webデザイナーの転職活動においてポートフォリオは、自分を知ってもらうために必要な名刺代わりです。そして、採用担当者に自分のスキルや経験、デザインセンスなどをアピールするための営業資料となります。では営業資料と考えた場合、ポートフォリオは具体的にどのようなことを意識して作成すべきなのでしょうか。採用担当者に響くポートフォリオとはどのようなものなのかを解説します。
採用担当者にとって貴重な情報源である
転職時にはほぼ確実にポートフォリオの提出を求められます。これは採用担当者が、履歴書や職務経歴書、面接だけではWebデザイナーの個性やスキルを判断しきることができないためです。ポートフォリオを見ればデザイン観やスキル、個別の癖や思考などを含めたWebデザイナーの個性を知ることができます。そのため、ポートフォリオは採用担当者にとって重要な情報源となるのです。
「何ができるか」を伝える
採用担当者にとってもっとも知りたいこと、それは「何ができる人なのか」ということです。企業は即戦力となる、または育成によって将来的に伸びる人材を欲しいと考えています。その見極めのためには「まず何ができるのか」を採用担当者は知る必要があるのです。
たとえば、作品集のように実績をただ羅列するだけだとどうでしょうか。採用担当者にしてみれば「結局何ができるのか分からなかった」「自慢だけされてしまった」と感じるかもしれません。そして、「自社に合うか合わないか以前の問題」と一笑に付される可能性すらあります。
転職活動におけるポートフォリオでは自分に「何ができるのか」を明確にしたうえで、それに合った「実績」を掲載していくことが大切です。そのWebデザイナーの「できること」が明らかになれば、採用担当者も選考しやすくなりますし、自社に合うものであれば前向きに検討してくれることでしょう。
採用後のポジションをイメージしてもらう
「できること」をアピールするだけでなく、「採用後のポジション」も意識してもらえるとより良いでしょう。企業の採用担当者は「このポジションにこういった人材が欲しい」「このポジションが手薄」という前提を持ったうえで選考を行っています。そのため、ポートフォリオでも特定の制作物の中で担当したポジションを明記しておくと、採用担当者もイメージをしやすくなります。
もちろん、マッチせず不採用となる可能性はあるかもしれません。しかしそれは逆に言うと、ミスマッチを防ぐことにもつながります。ポジションがイメージできないまま採用されてしまうと、採用後に「できると思って採用したのに…」とトラブルになることがあるためです。
自分とマッチする企業に転職できるよう、プロジェクトメンバーとして自分が担当した役割を必ず明記するようにしましょう。
Webデザイナーのポートフォリオ作成のポイント
ポートフォリオは単なる作品集ではありません。Webデザイナーにとって名刺代わりであり営業資料です。そして採用担当者にとってはそのデザイナーを知るための貴重な情報源となります。これらを踏まえたうえで、Webデザイナーのポートフォリオを作成するうえでの構成の仕方や、押さえておきたいポイントを解説していきます。
全体の構成について
ポートフォリオ構成の1つの例として、以下に骨組みをご紹介します。
表紙 | ポートフォリオは単なる作品集ではありませんが、Webディレクターとしての個性はアピールすることも必要です。自分に興味を持ってもらうためにも、端的に自身のスキルや個性が分かるような表紙を作成しましょう。「センスが良さそう」「スッキリして見やすそう」と採用担当者に思ってもらえれば正解です。 |
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自身の特徴とスキル | まずは自分の特徴として大まかに「できること」「役に立てること」を伝えましょう。続いて特徴を基に、スキルという切り口で自分の能力を伝えていきます。特徴・スキルをアピールすることで、その後に続く実績紹介に厚みを持たせる効果があります。 |
実績 | 前段で紹介した特徴やスキルに合わせ実績を紹介していきます。制作物の羅列だけではなく、プロジェクトの概要や状況説明、制作期間、担当領域、工夫した点、解決事例、URLなどを端的に明記しておきましょう。 |
プロフィール | 最後に自身のプロフィールを作成します。採用担当者がよりくわしくパーソナルなことについて知りたいと思ってくれた時のために、各種SNSやブログのリンクを掲載しておくと親切です。 |
この構成はあくまでも一例です。持ち込む企業や自身の個性に合わせてアレンジしていってください。
転職先に合わせてブラッシュアップする
ポートフォリオは一度作成したからと言ってそれで完成というわけではありません。そもそも、ポートフォリオは見せる相手や状況に合わせて内容を差し替えることが前提です。完成したからと安心してそれをそのまま使い回すのではなく、ブラッシュアップすることを意識しましょう。
たとえば、グラフィックを重視する企業への転職活動ならば、そのスキルをアピールするような資料をまとめると良いでしょう。企業と自分の特徴・スキルが重なる案件をより強調することが採用の可能性を高め、ミスマッチを防ぐことにつながります。
もし転職活動先の会社に合った実績がないという場合は自主制作をしてもかまいません。公の実績とは言えませんが、スキルやどのようなセンスを持っているかが伝わりますし、「作成した熱意」は伝わるためです。
ユーザー目線を忘れない
Webデザイナーにとって制作物を作るうえで「ユーザー目線」を忘れないことは当たり前の心構えです。実はポートフォリオでもその心構えを忘れてはいけません。
ポートフォリオを見るのは自分のことを全く知らない採用担当者です。ただの作品集でしかなく、自分の理想を語るばかりのポートフォリオでは良い印象を与えることはできません。そもそも最後まで見てもらえない可能性が高いでしょう。ポートフォリオでは「自分ができること」「企業にとって役に立つこと」を分かりやすく端的に伝えることが大切です。ユーザー目線=採用担当者目線を忘れずに作成していきましょう。
気軽に閲覧できるWebがおすすめ
ポートフォリオは紙やPDFなどで作成することができますが、Webデザイナーであれば、基本的にはWeb上に作成することをおすすめします。
紙の場合、郵送の手間がかかりますし採用担当者に保管する手間をかけてしまいます。また、複数企業にわたす場合は多く印刷しなければなりませんし、ブラッシュアップするたびに印刷し直さなければいけません。Webであれば採用担当者にURLを送るだけで済むため、双方にとって手間がかからずスムーズです。SNSやブログにURLを掲載して、常設のWeb名刺として活用することも可能です。現在はAdobe XDを始め、簡単にポートフォリオを作成できます。ツールを上手く活用して、ぜひWeb上にポートフォリオを作成しましょう。
Webデザイナーの転職成功のカギはポートフォリオにあり
【転職 Webデザイナー ポートフォリオ】
- ポートフォリオはWebデザイナーにとって名刺代わりとなる
- 「できること」を伝え、採用担当者に響くポートフォリオを目指す
- 「ユーザー目線」を忘れずに見てもらいやすいポートフォリオ作成をする
ポートフォリオはWebデザイナーにとって名刺代わりであり、転職活動においては営業資料にもなる大切な資料です。採用担当者は少ない時間で、多くの募集の中から自社に合うクリエイターを選ぶ必要があります。つまり、ポートフォリオは採用担当者にとってクリエイター選定における重要な情報源です。
そういったことを踏まえると、ポートフォリオは単なる作品集では意味がないことはお分かりいただけることでしょう。ご紹介したように、ユーザー目線に立って自分のできることを分かりやすく、実績とともに伝えることが大切です。そして企業に合わせてブラッシュアップしていていき、目指す企業への転職を成功させましょう。