漫画、テレビ、ゲームといったエンタメ業界でジャンルを超えて仕事をするには、採用される企画書の制作が不可欠。
この記事では、採用されるドラマの企画書の作り方について解説したウェビナー「エンタメ企画書の極意」を抜粋してレポート。同業者や企業が企画書を公開しない理由から、採用される企画書の特徴、実際の企画書の書き方まで、幅広く網羅しています。クリエイティブ業界で活躍する方は、ぜひ参考にしてみてください。
登壇者
白石マミ(しらいし・まみ)氏
脚本家(シナリオライター)・ゲームプランナー・漫画原作者
日本工学院八王子専門学校、非常勤講師
江戸川大学、非常勤講師
平成5年、『ティアフルムーン・涙ぐむ月』にて、第22回創作ラジオドラマ脚本コンクール佳作受賞。
平成6年『空色パラソル』にて講談社第一回オリジナルストーリー大賞受賞。以後、テレビドラマを始め、漫画原作、コンシューマーゲーム、モバイルゲームの企画・シナリオ、小説と活動は多岐に渡る。
TVドラマではフジテレビ系列で一条ゆかり原作の連続ドラマ『砂の城』。金曜エンターティメントでは、北大路欣也主演のスペシャルドラマ『男達の宿題』の脚本を執筆。テレ東では小早川警視正シリーズを。
NHKでは玉木宏主演、土曜ドラマ『氷壁』で企画・脚本協力。BSで『彼女のこんだて帖』の脚本を執筆。
ラジオドラマでは、NHKFM青春アドベンチャー『垂直の記憶』、『不思議や料理店』等の脚本。
FMシアターでは『やさしい歌を歌ってあげる』などの脚本を執筆する。
企画書の書き方は誰も教えてくれない
企画書の見本を見せてもらえないかと周囲に尋ねても、なかなか快く教えてくれる人はいないそう。なぜ、企画書の書き方は、誰も教えてくれないのでしょうか?
その理由として、大きく分けて2つの要因があります。
1.同業者からの情報開示の難しさ
同業者から企画書の書き方を教えてもらえないのは、いわば「商売敵」だから。自分の企画書を公開すれば、他人に真似されたり、より優れた企画書を作られてしまう可能性があると言います。そのため、同業者間では、企画書に関する情報は秘匿されることが多いのです。
2.企業側の機密性の高さ
企業にとっても、企画書は非常に重要な情報資産。企画書には、企業の戦略やノウハウが詰まっており、外部に漏れると競合他社に利用される可能性があります。そのため、企業は、企画書を外部に公開することを極端に嫌がります。
採用される企画書のポイントは”一言で説明できる”こと
企画書を作成する際、最も重要なのは、その企画を一言で説明できるかどうか。例えば、あるパーティーで、社長や会長など、決断を握る人に自分の企画を説明する場面を想像してみてください。「少女とロボットが出会って旅をする」といった漠然とした説明では、相手に企画の核心が伝わりません。では、どのように説明すれば良いのでしょうか?
実際の企画を例に考えてみましょう。ある企画を「超能力のスペックを持った女性刑事の話なんですけど」と説明すると、相手は「スペック」というキーワードから、ドラマ「SPEC(スペック)〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件」(TBS系)のような作品を連想するでしょう。この例からわかるように、企画の売りを一言で説明できる言葉を選ぶことが重要です。漠然とした言葉ではなく、「スペック」のように、具体的なイメージを喚起する言葉を選ぶことで、相手に企画の核心が伝わりやすくなります。
また、別の例として、「夜光虫」を題材にしたゲームの企画を考えてみましょう。「貨物船を舞台にしたサスペンス系のノベルゲーム」と説明することで、舞台の特殊性やゲームのジャンルを相手に伝えることができます。同様に、漫画原作の企画であれば「3姉妹がそれぞれ得意分野で起業する話」と説明することで、企画のテーマである「女性の起業」を明確に示すことができます。
このように、自分の企画を一言で説明できるように、常にブラッシュアップすることが大切です。一言で説明できないということは、企画の内容が整理されていないということでもあります。
企画書を作成する際は、以下の点に注意しましょう。
・企画の核となるキーワードを明確にする
・具体的なイメージを喚起する言葉を選ぶ
・簡潔かつ分かりやすく説明する
これらのポイントを意識することで、より魅力的な企画書を作成し、相手に企画の良さを効果的に伝えることができるでしょう。
ドラマ企画書を書くときに意識すべきこと
ドラマ企画書を書く上で、最も重要なのは、企画の意図を明確に伝え、クライアントの興味を引くことです。多くのドラマ企画が提出される中で、自分の企画をどのように際立たせるかが課題となります。
ドラマ企画書の一般的な構成
局や枠によって多少の違いはありますが、多くの場合、14ページから15ページ程度のボリュームになります。
ドラマ企画書のポイント
文字のみで構成する:
画像やタレントの写真は不要です。内容のみで勝負しましょう。
簡潔にまとめる:
1枚企画書のように、限られたスペースに情報を凝縮する練習をしましょう。
企画意図を明確にする:
なぜこのドラマを今放送するのか、その理由を具体的に説明しましょう。
ストーリーにシナリオの要素を入れる:
ドラマになったときを想像しやすいように、決めセリフを盛り込みシナリオの要素を入れましょう。
読みやすい文章を心がける:
小説のような美文を目指すのでなく、簡潔で分かりやすい文章を心がけましょう。
企画書が採用されるポイント
企画意図の説得力:
社会的な背景や視聴者のニーズを踏まえ、企画の必要性を論理的に説明しましょう。
映像を連想させる表現:
ストーリー概要には、具体的なシーンやセリフを盛り込むことで、読者に映像をイメージさせましょう。
ターゲットを明確にする:
どの層に届けたいのか、ターゲットを絞って企画を考えましょう。
競合作品との差別化:
他のドラマと何が違うのか、その特徴を明確にしましょう。
ドラマ企画書は、単にアイデアをまとめたものではなく、クライアントに向けてのラブレターです。企画したドラマがどのように視聴者の心を掴むのか。説得力のある内容に仕上げることが、企画採用の鍵となります。
漫画原作の企画書を書くときに意識すべきこと
漫画原作の企画書は、絵が描けない方でも、漫画原作として、魅力的な企画を提案することは可能です。ただし、ドラマ企画書より、オリジナリティや専門性が重視され、詳細な設定が求められます。
漫画原作の企画書の一般的な構成
ドラマ企画書の一般的な構成と同様ですが、特にマークがついている箇所が重要になります。
漫画原作企画のポイント
オリジナリティと専門性がある:
ワイン、書道、コスメなど、特定の分野に特化した専門知識や、独自の視点を持つことが重要です。
先行性がある:
まだ誰も取り上げていないような新しいテーマや切り口を探しましょう。
詳細な設定ができている:
キャラクター、世界観、ストーリーなどを具体的に描き、漫画家と一緒に作品を作り上げていくための土台を築きましょう。
資料が充実している:
ドラマの企画書と異なり、企画書には、関連資料を豊富に盛り込み、専門性や説得力を高めましょう。
漫画原作企画の成功事例
例えば、「お金の達人」という企画は、金融の専門知識を持つ著者が、一般人に金融リテラシーを高めるというテーマで提案し、採用されました。この企画は、当時、証券会社の口座を持つ女性が少なかったという社会背景を捉え、先行性のあるテーマとして評価されたと考えられます。また、「コスメの魔法」は、担当編集者が美容マニアとしての知識と経験を、漫画のアイデアとして提供し、成功を収めました。
漫画原作企画書の書き方
漫画原作の企画書では、以下の点に注意して書きましょう。
企画意図:
企画としてのオリジナリティ。専門(マニアック)性をしっかりと伝えます。
ターゲット読者:
どんな読者に読んでもらいたいのかを明確にします。
ストーリー概要:
ストーリーの全体像を簡潔に説明します。
キャラクター設定:
主な登場人物の性格や外見、バックグラウンドなどを詳しく説明します。
世界観設定:
ストーリーの舞台となる世界観を具体的に描きます。
資料:
関連資料(図、表、写真など)を豊富に盛り込み、企画の説得力を高めます。
また、漫画家と共同で作品を作り上げるためには、漫画家が作画しやすいよう常に意識することが大切です。企画書に盛り込む資料も、作画の参考になるような具体的な情報であることが求められます。自分の得意な分野や興味のあるテーマを活かしつつ、詳細な設定や資料を盛り込むことで、漫画家に描いてみたいと思わせるような、魅力的な企画を提案しましょう。
エンタメ業界は、常に新しいアイデアを求めています。あなたの独創的な企画が、業界を盛り上げるきっかけになるかもしれません。この記事で学んだ知識を活かして、ぜひ企画書の作成に挑戦してみてください。