性被害の体験をSNSで告白する「#MeToo」運動などをうけ、近年映画界におけるハラスメントが国際的に問題視されています。さらに過労死問題やコロナ禍もあいまって、国内の各エンターテインメント業界で労働環境を適正化する機運が高まっています。
2023年3月13日”エンターテインメントロイヤー&プロデューサー・四宮隆史先生に聞く ~契約と権利と労働 労働編~”ウェビナーでは、元・TVディレクターの弁護士・四宮隆史先生が現場で働くスタッフやキャストの労働問題をクローズアップ。
「安全配慮義務」をキーワードに、「誰がどのように守られている/守られていないのか」「誰が責任を負うのか」を法的な見地から解説します。
【ダイジェスト動画】でポイントをチェック!
【記事で得られる学び、要点】
- 労働契約法で安全が配慮される対象は、「労働者」に限られる
- 業務委託で働くフリーランスは、「労働者」と認められないことがある
- 各エンタテインメント分野で進むフリーランスの労働環境対策
登壇者紹介
四宮 隆史(しのみや・たかし)氏
慶應大学経済学部卒。TVディレクターとして勤務した後、司法試験を受験し2003年に弁護士登録。現在、E&R総合法律会計事務所の代表弁護士として映画、音楽、放送、広告等の各種プロジェクトのリーガルアドバイザーを務める一方、脚本家・福田靖(『HERO』『ガリレオ』『龍馬伝』等)、映画監督・深田晃司(『淵に立つ』等)らを擁するエージェント会社、株式会社CRG(Creative Guardian)を創設し、映画・ドラマの企画製作にも携わる。非営利団体「action4cinema」(共同代表・是枝裕和、諏訪敦彦)の事務局長として映像業界の労働環境保全やスタッフ・クリエイターの権利保護等のための提言や活動も行っている。
労働契約法で保障される「安全配慮義務」とは?
労働問題について考えていくうえで避けては通れないのが「安全配慮義務」というキーワードです。
労働契約法の第5条で、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と書いてあります。
この条文を正しく理解するためのポイントが3つあります。
- 「労働者」に対して適用される法律であること。
- 生命・身体「等」とある通り、身体だけでなく精神・心の健康も配慮されるべきであること。
- 法律で規定されているのは「配慮・注意の義務・注意」で「安全の確保」ではないこと。
ここでいう「労働者」という表現がやや曲者。
労働者であればここに書いてある通り、労働契約法や労働基準法に基づく安全配慮義務の対象となり、労災などもおりることになります。 ただし働いていれば労働者かというと、実はそうではないのです。
ここは本日の主題に関わるため、もう少し詳しく見ていきましょう。