長引くコロナ禍で、エンターテインメントの制作に関する考え方や制作・提供方法、視聴者の鑑賞の仕方、感じ方、そしてクリエイターの働き方や環境は日々変化しています。

今回は2022年12月5日に行われた“エンターテインメントロイヤー&プロデューサー・四宮隆史先生に聞く ~契約と権利と労働 契約編~”のイベントレポートをお届け。元・TVディレクターの弁護士・四宮隆史先生に、エンターテインメント業界での契約について、事例を交えて解説していただきます。

目まぐるしく変化する「今」、制作に携わるうえで法律や権利について、何を理解し、どのように考えれば良いのでしょうか。一緒に考えていきましょう。

【ダイジェスト動画】でポイントをチェック!

  • 日常生活のあらゆる場面で契約は発生している
  • 契約書で見るべきポイント
  • エンターテインメント業界で頻出する権利と紛争事例
  • 日常生活は「契約」であふれている
  • 契約書はなんのためにある?
  • 契約書のココを見るべし
  • 印鑑とサインの違いは?
  • エンタメ契約の特殊なところ
  • エンタメ契約にまつわる紛争事例

登壇者紹介

四宮 隆史(しのみや・たかし)氏

慶應大学経済学部卒。TVディレクターとして勤務した後、司法試験を受験し2003年に弁護士登録。現在、E&R総合法律会計事務所の代表弁護士として映画、音楽、放送、広告等の各種プロジェクトのリーガルアドバイザーを務める一方、脚本家・福田靖(『HERO』『ガリレオ』『龍馬伝』等)、映画監督・深田晃司(『淵に立つ』等)らを擁するエージェント会社、株式会社CRG(Creative Guardian)を創設し、映画・ドラマの企画製作にも携わる。非営利団体「action4cinema」(共同代表・是枝裕和、諏訪敦彦)の事務局長として映像業界の労働環境保全やスタッフ・クリエイターの権利保護等のための提言や活動も行っている。

E&R総合法律会計事務所|恵比寿のエンタテインメント・著作権・弁護士相談 (er-law.biz)

四宮先生

日常生活は「契約」であふれている

我々は生きているなかで日々契約をしています。法律上、契約は「申し込みと承諾の一致」と定義されています。逆にいうと、それ以外のことは一切書いていません。

申し込みがあり、それを承諾し、双方の考えが一致していればそれは契約です。「この缶コーヒーを買いたいです」「〇〇円です」「では払います」という買い物の一場面も、実は立派な契約なのです。

レジ前で会話する店員と客
お店のレジ前で金額を確認する会話も「契約」になる。

また、Webサービスの利用規約に同意することも契約になります。
「利用規約に書いてあることをほとんど読まず同意して進める」という人も多いと思いますが、同意したということは「規約の内容を契約として了解・承諾した」ことになります。ですから規約に違反すれば、「契約違反」として訴えられる可能性もあります。

さらに一方的に見せられる注意書きのようなものでも、契約になります。
ある施設に利用するうえでの禁止事項、注意事項、利用ルールやマナーなどは、それを守ることがその施設を利用する条件になるので、違反すれば契約違反です。

注意書きの貼り紙
わかるように貼られた注意書きも守らなければ契約違反。

「我々はあらゆる場面で契約を交わしている」といっても過言ではありません。「契約とはなにか」「契約に違反したらどうなるか」ということを今一度考えてみて頂けたらと思います。

契約書はなんのためにある?

契約書がなくても契約は成立します。では契約書は何のためにあるのでしょうか。