通信技術は日進月歩であり、歩みを止めることなく進化し続けている点が特徴です。2022年現在において4Gがベースにありつつ、2020年3月から開始から商用化が開始された5Gに徐々に移行が進んできています。5Gでのやり取りが今後の世の中では当たり前に世の中に浸透していくでしょう。では5Gとはどんな技術なのでしょう。スマートフォンなどに導入されていますが、Gの技術とどんな違いがあるのかを明確に説明できる人もあまり多くはないかもしれません。
また、5G以降の通信技術はどのように発展していくのでしょうか。5Gのその先、「Beyond 5G」と呼ばれる6G時代に触れつつ、今後の通信の進化を予想します。
「G」は何の略?5Gと4Gとの違いは?
5Gが何かを理解するには、まず「G」や1G~4Gまでの理解が先決です。「G」は英語のGeneration=世代の略です。つまり、5Gとは“第5世代“、より正確には「第5世代移動通信システム」を表します。現在のトレンドが第5世代であり、それ以前の世代も当然存在します。それが1G~4Gです。
第1世代(1G)
1Gは携帯電話登場時期の1985年から1990年代に使用されていました。日本国内では携帯電話が珍しかった時代の通信システムです。現在の通信システムは音声以外にもデータのやり取りが可能ですが、1Gはアナログ方式の通話のみ可能で、日本国内では1999年にサービスが終了しています。
第2世代(2G)
1993年にサービス開始となった2Gは、電話だけでなくメールなどのデータ通信もできるようになりました。この頃からモバイルサイト(ガラケーで見るサイト)のサービスが始まります。携帯電話にカメラが搭載され、いわゆる“写メ”が流行した時代です。ただし、通信速度が28.8Kbpsという規格であるが故に、大容量のデータ通信には不向きでした。
第3世代(3G)
3Gは、アップル社のiPhoneが初めて登場した時代に使われた移動通信システムで、日本国内でのサービス開始は2001年です。2Gと比べて通信速度も飛躍的に向上し、最大で2Mbps(静止時)の通信速度が出るようになりました。2Gよりも画像や音声がやり取りしやすくなり、コンテンツの幅や種類が拡充。その結果、2G時代に生まれたガラケーサイトは、姿を消していきました。
第4世代(4G)
4Gが日本国内でサービス開始となったのは2015年です。3Gと4Gの大きな違いとしては、通信速度が挙げられます。3Gの通信速度は最大2~40Mbps程度でしたが、4Gでは最大100Mbps~1Gbpsとなりました。これにより、3Gでは難しかった画質の高い動画配信サービスも、携帯電話(スマートフォン)で閲覧できるようになりました。
端的に表現すれば、3Gは“写真などの画像が閲覧しやすくなった時代”、4Gは“動画が視聴しやすくなった時代”と捉えると理解しやすいでしょう。
5Gの基本は「超高速」超低遅延」「多数同時接続」
総務省の「令和4年版情報通信白書」によると、5Gでは4Gを発展させた「超高速」に加え、遠隔地でもロボットなどの操作をスムーズに行うことができる「超低遅延」、多数の機器が同時にネットワークにつながる「多数同時接続」などの特長を持つ通信が可能となる点が特徴です。あらゆる「モノ」がインターネットにつながるIoT社会の実現において、5Gは不可欠なインフラとして大きな期待が寄せられています。
その1:超高速
現行、4Gの最大通信速度は100Mbps(0.1Gbps)~1Gbps程度です。一方5Gは、目標理論値での最大通信速度は20Gbpsで、20倍~200倍の通信速度となります。通信速度は文字通り「超高速」となり、大容量通信が可能です。
たとえば、2時間を超える映画などの大容量コンテンツを、5Gでは数秒でダウンロードできます。通信速度の上昇によって、4Kや8Kの超高画質動画の配信もスムーズに行なわれ、ユーザーの利便性が向上します。超高速に、超高画質画像や動画を扱えるようになると、さまざまな分野の進歩にも役立ちます。セキュリティの領域が5Gによって超高速に大容量の通信が可能になると、従来では人がいるかいないかの判断しかできなかったのが、人物の認識・特定や行動が把握まで行えます。
その2:多数同時接続
5Gになることで、一定面積内の同時接続数も飛躍的に向上します。平方kmあたりの同時接続数は、4Gは10万台なのに対して、5Gでは10倍の100万台です。
4Gで一定面積内の同時接続数が増えると、通信が集中して接続できなくなったり、通信速度が落ちたりする問題がありました。5Gでは、同じ面積のなかに基地局を密に配置する「小セル化」を進めることで対応します。スマートフォンやパソコンだけでなく、家電や車、カメラ、さまざまなセンサーなど、あらゆるモノがインターネットにつながるIoTを実現するために、5Gの多数同時接続は必要不可欠です。
あらゆるモノがインターネットにつながることにより、ユーザーの利便性やセキュリティの向上、コスト削減などの効果が期待でき、5Gによる通信変革の一端を担っています。
その3:超低遅延
5Gでは、通信の遅延が抑えられ、よりリアルタイムな通信が実現できます。
4Gでは、10ms(1秒の100分の1)ほどの通信遅延が発生しますが、5Gでは1ms以下です。つまり5Gでは、体感レベルの遅延をほぼ感じることがなくなります。超低遅延により、車の自動運転の精度や、遠隔治療などの分野での活用が期待されています。車の自動運転や遠隔治療、建機の遠隔操作などは、通信の遅延が致命的な事故につながる恐れがあり、安全性がなによりも重要です。
通信の遅延が危険を招くサービスやシステムも、超低遅延によって高い信頼性を持って実現できるようになります。その他、5Gを利用して離れた場所からバンド演奏をするなど、エンタメ分野においてもさまざまな変革がもたらされるでしょう。
4Gから5Gへの移行で生活はどう変わる?
4Gから5Gに完全に移行されることで、日常生活では大きな変化が見られるでしょう。デジタルにおける可能性が大きく広がるだけに、スポーツ、ゲーム、自動車、医療などさまざまな領域で革新的な進化を体験できるでしょう。
スポーツ観戦
大容量・高速通信により、4Kや8Kといった超高画質のVR体験がリアルタイムで実現されます。自宅にいながら、プレイする選手たちの側にいるかのような臨場感が味わえるでしょう。
実際にソフトバンクでは、バスケットの試合をコートの真横から見ている体験を提供しました。ほかにも、コートを囲むように多数のカメラを設置することで、見たい視点で観戦する「自由視点映像」も、5Gによる大容量・高速通信により実現されたのです。
NTTドコモも、2019年ラグビーワールドカップにおいて、パブリックビューイング形式で5Gプレリリースを実施。手元のスマートフォンを利用して「自由視点映像」や、選手データを閲覧が可能になりました。ハイライトシーンも自らのタイミングで確認できるなど、ユーザーの利便性が格段に向上したといえるでしょう。
ゲームがすべてクラウドに
現在は、専用のゲーム機とソフトを用意してプレイするのが一般的です。ソフトのダウンロード化やオンライン対戦など、ネットワークを通じたゲームプレイもできるようになっていますが、5Gでは大きく変わります。
5Gによって、ゲームはすべてクラウド上でプレイできるようになり、専用のゲーム機やソフトを用意する必要がなくなります。サブスクリプションが主流となり、都度購入することもほとんどなくなるでしょう。
また、動きの激しいアクションゲームやFPSといったジャンルのゲームは、通信遅延がプレイに大きく影響します。これまでは、通信遅延のためにすべてをクラウド上で実現することはできませんでしたが、5Gの超高速・超低遅延によってその問題の大部分は解消されます。ゲームの分野もeスポーツで盛り上がりを見せており、これからゲームのあり方も大きく変わることでしょう。
自動運転
5Gによって、車も自動運転が主流になっていくと考えられます。信号や他車の走行状況、発信、停止などの情報を遅延なく受信できるようになるためです。車の自動運転は、リアルタイムに多くの情報を処理しなければならず、わずかな通信遅延も許されません。少しの通信遅延によって、取り返しのつかない事故を引き起こす恐れがあるからです。
5GによってIoTが普及し、さまざまなセンサーがインターネットにつながることで、より効率的な情報の送受信ができるようになります。5Gは遅延なく情報を受け取って処理できるため、車の自動運転では不可欠と言えるでしょう。また、著しい発達を遂げているAIの分野でも、5Gは大きな影響をもたらします。IoTによって大量の情報が飛び交うようになりますが、これらを5Gによって遅延なく受信し、AIが適切に判断することで、車の自動運転の安全性が増すと予想されます。
医療の進化
5Gは、医療分野でも非常に期待されている技術です。5Gの超高速・超低遅延によって遠隔治療が可能となるからです。医療では高精密化されている画像が使われますが、場所を問わずにいつでも閲覧できます。
また、5Gによって、都市部・地方での「均てん化」にも期待が寄せられます。均てん化とは、都市部や地方での医療サービスの格差をなくし、どこでも高度な医療が受けられるようにすることです。現状では、医療の均てん化は実現できていません。都市部と地方を比較すると、医者の数や割合を考えても、高度な治療は都市部に集中しています。
しかし、5Gにより遠隔治療や遠隔手術などが遅延なく行なわれるようになると、インターネットを介して全国の医療施設がつながります。ロボット技術の発展も相まって、どこにいても最先端の治療が受けられるようになるでしょう。日本国内に限らず、海外とも5Gによって接続されれば、海外でしか受けられなかった手術を日本で受けることも夢ではありません。
すでに始まっている「Beyond 5G=6G」の考え方
5Gが徐々に一般でも浸透しつつある昨今ですが、実は次の世代を見据えた「Beyond 5G」、つまり6Gへの準備はすでに始まっています。5Gの特徴的機能に加えて、新たな価値の創造に資する機能を備えた次世代高速通信がベースです。
具体的には、100分の1の「超低消費電力」、障害からの瞬時復旧など「超安全・信頼性」、即座に最適なネットワークが構築される「自律性」、陸海空宇宙あらゆる場所で通信できる「拡張性」が求められます。Beyond 5G(6G)は、2030年(令和12年)頃の導入が見込まれており、総務省ではすでに、「Beyond 5G推進戦略-6Gへのロードマップ-」を公表しています。
5Gをはるかに超えたスペックを誇る6G。その実現によって現実と仮想という2つの世界でデータが共有され、仮想社会と現実社会が融合した「Society 5.0」と呼ばれるサイバー社会が誕生することが期待されています。近未来にはメタバースやXRといった技術と日常生活の融合が当たり前の社会が訪れるかもしれません。
次世代高速通信は今後も常に進歩し続ける
【次世代高速通信 4g 5g 6gのまとめ】
- 5Gは今後のネットワーク社会の基盤を担うインフラ
- 5Gが世の中に浸透する前にすでに6Gの準備が進行中
- 「Society 5.0」のサイバー社会に欠かせない6G普及
5Gすらまだ社会に浸透し始めたばかりではあるものの、テクノロジー界隈ではすでにその先の6G導入に向けての準備は着々と進んでいます。6Gは5Gのさらなる強化版であることは言うまでもなく、仮想社会と現実社会が融合したサイバー社会の実現に寄与すると考えられています。2030年の導入が目指されており、そう遠くない未来に実現する予定のテクノロジーです。
次世代高速通信は今後も常に進歩し続けるだけに、現代を生きる私たちは、常に新しいテクノロジーをキャッチアップし、使いこなせるように学び続けることが求められるでしょう。