10月20日から東京・お台場のホテル グランパシフィックLE DAIBAにて、国際コンテンツ見本市Japan Content Showcaseがスタートした。今年で12回目を迎えるTIFFCOMやTIMM、東京国際アニメ祭などを通じて、映画、テレビ番組、アニメ、音楽などの国際取引の場を提供している。
イベントは企業出展ブースやミーティングなどのビジネス取引が注目されがちだが、最新のビジネス情報を交換するセミナーも重要な機能のひとつだ。2015年はとりわけセミナーの数がほぼ倍増したのが注目となっている。
開幕初日、一般社団法人日本動画協会が主催した「株式会社テレビ東京における“国際共同制作”について」もそのひとつだ。数々のヒットアニメを扱ってきたテレビ東京のアニメ局 局長である川崎由紀夫氏が国際共同製作を中心に海外ビジネス展開と戦略を紹介した。
テレビ東京の海外アニメビジネスと言えば『NARUTO』や『遊戯王』などの成功例が思いつくが、今回取り上げられたのは『トレインヒーロー』『ナノ・インベーダーズ』といった作品である。その名前を知らない人も少なくないだろう。2作品に共通するのは、いずれも中国との共同製作である。今回のトークは中国が中心となった。
国内アニメ関係者による中国市場に対する評価は、2000年代以降だけでも何度も大きく揺れている。ビジネス機会は大きいが、ビジネス不確かさというリスクがあるためである。実際に川崎氏も当初はいけると思いチャレンジしたが、販売単価もあがらず、番組も売れないと一時は中国市場をあきらめた時期もあったようだ。しかし、2010年頃に本物志向が高まると考えて再び中国に目を向けたのが、現在の『トレインヒーロー』『ナノ・インベーダーズ』につながっている。
近年の日本の中国向けのアニメビジネスは配信やゲーム化などのライセンス販売が中心だが、川崎氏は「厳しくとも共同製作はやるべき」とする。国内でもテレビ放送するアニメのほとんどは出資作品というように、ビジネスにはより深く、製作から関わるべきとの考えかたが伝わってきた。
共同製作の一方で、テレビ東京がもうひとつ海外展開で力を入れているものがある。海外向けの番組配信だ。英語圏向けには、いち早く米国のクランチロールと手を組んだことも知られるが、中国でも有力サイトの優酷土豆を通じて広く作品を配信する。
これについて川崎氏は、「(異なったものに見えるが)日本の優れた本物をどう伝えるかといった点で同じ」だと言う。海外展開の背景には日本の優れたコンテンツをより広げたいとの考えがあり、ビジネスは違えども基本は同じというわけだ。
また配信については、有力タイトルの重要性を強調したのが印象的だった。ある年に中国での配信によるアニメ視聴の75%が上位4作品で占められた例などで説明する。配信ビジネスはラインナップが重要とされることが多いが、早くから配信で成功したテレビ東京だけに、無視できない指摘だ。
一方で、中国との国際共同製作となると、これまでに日本の他の産業で見られた日本の技術のノウハウの流出や産業の逆転が心配になる。
しかし、川崎氏は、単純にそうは考えていないようだ。個々の才能で見れば、中国に才能豊かな人は多い、しかし、その才能をまとめたりコーディネートする部分が十分でないと指摘する。チームマネジメントやコーディネートの力は日本の特徴だとする。「日本のアニメの強さはキャラクターやストーリーラインと言われることが多いが、組織運営もある」と話す。アニメはスタッフが時には数百人単位になる作業だけに、これは重要なポイントだ。
そんなテレビ東京が次に目指す海外ビジネスは何なのだろうか。川崎氏は同局の海外戦略を「配信事業」「共同製作」、そして「商品化展開」と説明する。
しかし、現状で海外での商品化ビジネスは、あまりかたちが見えない。それについて「2016年に何か発表できる。今まで考えてきた戦略が揃い節目になる」という。2016年に向けて、まだまだテレビ東京の動向は目が離せない。
[数土直志]
(2015年10月22日 animeanime)
[アニメ!アニメ!ビズ/www.animeanime.bizより転載]