2022年10月31日、第1回「AIのべりすと文学賞」の受賞作が決定。高島雄哉氏による「798ゴーストオークション」が最優秀作品に選出された。

作家としての経歴を持つ高島氏の作品は、基本的な文章力を土台にAI技術による文書生成システムを使いこなしているところが高評価を獲得。各賞には小説のほかに短歌も選出されており、AIによる創作の新たな可能性を感じさせるコンテストとなったようだ。これらの作品は「AIのべりすと文学賞 作品集」として書籍化を予定しているという。

第1回「AIのべりすと文学賞」受賞作と審査員コメント

[最優秀賞]
高島雄哉 「798ゴーストオークション」

◆『798ゴーストオークション』はAIがアート界を支配する近未来を「AIのべりすと」を使って書くという皮肉。この時代に「AIのべりすと」を使ってしか表現できないニヒリズムだと思う>(審査員:田口ランディ)

◆AIについては万年筆やワープロと同様の「記述ツール」であると判断しますのであえてAIだからと特別には見ませんが、前述の「情景描写」の少なさなどが「AIを使用したが故の」特性だとしたら改善の余地があるかも知れません。単に作品として判断した場合は「798ゴーストオークション」が推薦できるものと考えます。(審査員:入江武彦)

[優秀賞]
minet 「Undo能力を手に入れた俺と後輩の桜井さんの長い一日」

◆「undo」能力設定がAIとの親和性が感じられ、違和感なく物語の世界に入り込めた。会話劇を中心とした展開はAI的な無機質な文章生成を感じさせず、現代の若者の恋愛観が瑞々しく描かれていて好感が持てる。(審査員:竹内宏彰)

◆いわゆるプロンプトエンジニアリングが文章や画像の作成に有効だという認知が進んで、次に問われてくるのはどのように導いた文章であるかを明示することだし、作画の根拠をストーリーテリングに散りばめることだと思われる。この作品は、応募要項にはまだ書いていない状況を把握して進めている。(審査員:川田十夢)

時雨屋 「5分後に探偵未遂」

◆AIらしさは関係なく単純な面白さで選ばせていただきました。結果的にAI生成の可能性と天然ボケを見事に凝縮した作品を推していました。AI生成小説の登場人物が実在の事件を解決しようと奮闘するコメディメタミステリ! 「AIのべりすと」が相棒でなければきっと書けない作品です!(審査員:ダ・ヴィンチ・恐山)

[ショート部門]
宇野なずき 「空に還る」

◆「空に還る」は、「AIのべりすと」と著者が、語り合うようにして創られた作品だと思います。短い定形の中に、著者のさまざまな感情と、見えている風景を感じることが出来ました。今後もAIのべりすと短歌の可能性を追求してください。(審査委員長:橘川幸夫)

[小学館賞]
ギン・リエ 「カミガカリ 不自然言語処理連続殺人事件」

◆サナギと呼ばれる超常的な存在が、警察・検察が収集したビッグデータを飲み込み、未解決事件の“犯人だけ”を言い当て、検察に所属する主人公が有罪を立証するべく捜査するというミステリー作品。ビッグデータを飲み込み、出力するというAIのような行為が「AIのべりすと」を使い書かれており、作品内容と執筆方法をリンクさせるという著者の発想力に脱帽した。(株式会社小学館)

[coly賞]
坂本未来 「好ってだけ」

短歌として、短い言葉に秘められた感情に心動かされると共に、連作として見たときには関係性や情景の想像を掻き立てられました。AIと人間の共作による、今後のエンタメの可能性にますます期待が高まる作品でした。(株式会社coly)

今回の文学賞には、10代から70代の幅広い世代から389作品の応募があったという。反響を受け、現在、第2回「AIのべりすと文学賞」の開催を計画中出そうだ。また、「AIのべりすと」開発者のSta氏は受賞作決定に際し「今回のAIのべりすと文学賞は、始まりに過ぎません。“AIに仕事を取られるかも”とか“AIに負けるかも”という恐怖ではなく、“AIを活用して大作家になった“とか“AIのおかげで創作が苦でなくなった“という実際の成功体験がこれから次々に出てくるはずです。その最初の触媒のひとつがAIのべりすと文学賞なのだと思います」と今後のクリエイティブな創作活動に期待を寄せている。

引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000096463.html
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