コンシューマーゲーム機だけでなく、PCやスマホでも気軽にゲームができるようになった現代。以前にも増して、ゲームプログラマーの需要は格段に高まっています。しかし、ゲーム業界はあまりにも移り変わりが早いので、ゲームプログラマーとして長く活躍するイメージが持ちにくい面もあるでしょう。プログラマー界隈では「プログラマー35歳定年説」なるものが存在するだけに、今後のキャリア形成において不安を覚えている方も一定数いることが予想されます。
果たしてゲームプログラマーに年齢は関係あるのでしょうか。4年以上のキャリアを持ち、中堅クラスに差し掛かったゲームプログラマーを対象に、今後のゲーム業界を生き抜くために必要なスキル・考え方について考察します。
ゲームプログラマー35歳定年説は嘘?大切なのは「学習意欲」
「プログラマー35歳定年説」は1980年代ごろからずっと言われ続けてきた噂です。しかし、実際にプログラマーという職業と年齢は関係あるのでしょうか。また、それはゲーム業界においても同様なのかが気になる方もいるでしょう。ゲームプログラマーと年齢の関係について検証します。
「プログラマー35歳定年説」が囁かれる理由
プログラミングは技術の進歩が著しい世界です。最新の技術や知識も、数年後には陳腐化してしまうことも珍しくありません。そのため、長年プログラマーとしてやっていくには、新たなスキルの取得と既存スキルを捨て去る柔軟性が必要となります。また、年功序列的な賃金体系の場合、年齢が高くなればなるほど人件費がかかります。高齢プログラマーはコストの関係で、企業によっては頭を悩ませる存在となるかもしれません。こうした背景があり、プログラマー35歳定年説がささやかれるようになりました。
現場では35歳以上のプログラマーが多く活躍している
「プログラマー35歳定年説」が囁かれる中で、実際に35歳以上になるとプログラマーは活躍できないのでしょうか。プログラマー求人の多くは30代後半くらいまでがほとんどです。しかし、現場を見てみると30代はもちろん40代、50代で現役プログラマーとして活躍している人はたくさんいます。
たとえば、「Microsoft Windows NT」の開発者であるデヴィッド・カトラーは60代でもプログラマーとして現場に立ち、Windows AzureやXboxの開発に携わっていたと言われています。極端な例ですが、何歳であっても技術と知識、そしてバイタリティがあれば35歳を超えても現役として十分に活躍できると言えるでしょう。
学習意欲があれば年齢は関係ない
プログラマーの寿命を決めるのは年齢ではありません。技術進化の激しい業界において、生き残るためにもっとも大切なのは「学習意欲」です。たとえば、ゲームを問わずプログラミングの分野において、ハードウェアにもっとも近い低レベル層はブラックボックス化されています。さらに、提供されるソフトウェアデベロップメントキット(SDK)やミドルウェアなどは更新が頻繁に発生しているのが現状です。プログラマーはこうした変化に常に対応しなければならず、年齢に関係なく前向きに学ぶ姿勢を持つことが要求されます。
新しい技術・知識が生まれても、対応するために常に学ぶことを忘れない――そういったプログラマーは年齢に関係なく活躍することができるでしょう。それはよりアップデートが頻繁に求められるゲームプログラマーにおいても同様です。
変化の多い業界で生き抜くために必要なスキル・考え方とは
ゲームプログラマーは技術進化やそれに伴う仕様変更が激しく、常に学びの姿勢が求められます。ではゲームプログラマーは具体的にどんなことを学ぶ必要があるのでしょうか。変化の多い業界で生き抜くために必要とされる学びについて検証します。
どんなことでも実体験することが大切
変化の多い業界の中でプログラマーには幅広い知識が求められます。それは単に学習だけではなく、「実体験」の中で得た知識・経験も含まれます。そのため、ゲームプログラマーとして生き抜くためには技術を学ぶだけでなく、日常の中でさまざまな実体験を重ねて人間としての成長を遂げることも大切です。
たとえば、ゲームプログラマーとして自社・他社を問わずゲームをプレイすることも必要でしょう。副業としてゲームとまったく関係のないアルバイトをしてみるのも良い経験です。たとえば、Uber Eatsなどを経験すれば違う世界観を知るうえで役立つでしょう。他にも、結婚して家庭を作る、キャンプなどで自然の中に身をおいてみる、妄想で悪事を働いてみる……といった実体験・経験は、新たなニーズに活かせるタイミングが来るものです。
積極性を持って取り組む姿勢
ゲームプログラマーは特殊な職業と見られがちですが、長く活躍するために必要な考え方・姿勢は他業種とそれほど違いはありません。積極性や問題解決能力、継続性など、ほかの分野でも必要とされるものがゲームプログラマーにも必要と言えます。たとえば、プログラミングを進めていけば、ほぼ必ず何かしらの不具合が発生します。アプリゲームであれば配信後に何らかのバグが起こることも珍しくありません。「問題は発生して当たり前」と考え、原因を早急に解明し対処する能力が重要になります。
また、技術進化が著しい世界だけに、日々の勉強を怠れません。場合によっては業務が終わった後に自宅でも自主的に勉強することが必要となります。ある意味では、学生時代よりも机に向かうことが多くなるかもしれません。そういった状況になっても、諦めず継続し続けるバイタリティやモチベーションはゲームプログラマーにとって必須のスキルと言えるでしょう。
他にも、さまざまなことにチャレンジする積極性、ロジカルな思考力など、他業種でも必要・あった方が良いとされるスキルはゲームプログラマーにも必要なものとなります。末永く活躍するためにも、プログラミング技術・知識以外のスキルも伸ばしていく意識を持ちましょう。
何にでも活きるゲーム制作!強化すべきは国語力
ゲームは数ある処理系の中で、もっともリアルタイム性が求められる分野です。ゆえに作法は異なるとしてもゲームの組み方を知っていることで、他の分野についても処理速度の向上や最適化が期待できる面があります。それゆえに、ゲームプログラマーはゲーム開発だけでなく他分野でも活躍できる実力を兼ね備えることができると考えられるでしょう。ではゲームプログラマーがさらに幅広く活躍するために必要なスキルとは何でしょうか。
ゲームプログラマー活躍の場は増えている
ゲームはコンシューマーゲーム機だけでなく、スマホやPC、タブレットなど、さまざまな端末で遊べるなど多岐にわたります。また、同人・インディーズ、オンラインショップなど配信媒体も増え、開発物の露出は十年前と比べて選択肢が大きく増えているのも特徴です。そうした背景もあり、ゲーム需要は右肩上がりであり、年齢にかかわらずスキルのあるゲームプログラマーは多くの企業で必要とされています。また、フリーランスやアルムナイネットワークを活用して仕事を取るケースも増えていて、活躍の場は以前と比べて格段に幅広くなったと言えるでしょう。
プログラマーの経験は他分野でも活きる
ゲームプログラマーの経験はゲーム業界以外でも活かせます。ゲームプログラマーは柔軟性や学習意欲、ロジカルシンキング能力が高い傾向にあり、たとえば営業職やマネジメント職にシフトした場合も、プログラミングで得た知識・経験だけでなく、さまざまなスキルを仕事に応用することが期待できます。
コミュニケーション能力・国語力を鍛えよう
ゲームプログラマーがより幅広く活躍するためには、「コミュニケーション能力」が重要です。35歳を超えても活躍し、チームから頼られるプログラマーの多くはコミュニケーション能力が高い人でしょう。たとえば、COVID-19の流行以降、テレワークが社会に浸透していますが、これを成り立たせるためにはコミュニケーション能力が必要です。1日中モニターと向き合う仕事であるからこそ、基本的な報連相を徹底できなければ、テレワークは維持できません。
また、プログラムはプログラミング言語を使う以上、その実態は「国語」です。文字の理解、構成、想像といったものがプログラミングには必要です。つまり、たとえばどんなに計算ができたとしても、国語力がなければゲームプログラマーとしては成長が難しくなることでしょう。このように、ゲームプログラマーにとってコミュニケーション力は仕事を円滑に進めるために必要であり、その土台となる国語力はプログラムそのものにとって重要です。ゲームプログラマーとして長く活躍したいのであれば、基本となる国語力を鍛えましょう。
ゲーム作り経験者はどこの業界でも活躍できる
【ゲームプログラマー 定年 将来性のまとめ】
- 学習意欲の高いゲームプログラマーに年齢は不問
- ゲームプログラマーは積極的な学びで可能性が広がる
- 応用力の身につく仕事だけに土台となる国語力を鍛えるべき
「プログラマー35歳定年説」が囁かれてはいますが、そうした世間の印象と現場では大きな認識の乖離があると言えます。今の時代は経験・知識のあるゲームプログラマーは年齢にかかわらず必要とされるだけに、周囲の雑音などは気にせずに自分の仕事に集中することが大切です。
もちろん、技術進化の著しい業界なので、常に新しいことを取り入れる学習意欲は必要です。学ぶ姿勢がなければ取り残されてしまい、年齢に関係なく引退を余儀なくされるかもしれません。新たなことを学び、さまざまな実体験を積むことを意識的に取り入れましょう。そして、コミュニケーション能力とその土台となる国語力を鍛え上げ、末永く活躍できるゲームプログラマーを目指してください。