「恋愛と戦いのドラマで、世界へ。」をコンセプトに女性向け恋愛ドラマアプリを主軸にサービス展開する、株式会社ボルテージ。
恋愛ドラマアプリとしては約2年ぶりとなる完全新作タイトル『幕末維新 天翔ける恋(ばくまついしん あまかけるこい)(以下『幕天』)』を配信開始しました!
女性向けコンテンツを、男性社員が作るときの苦悩とは?幕天の魅力って何?本タイトルを担当したディレクター(以下敬称略:D)、プロデューサー(以下敬称略:P)のお二方にお話しを伺いました。
ボルテージが “いま” 幕末を選ぶ理由
――『天下統一恋の乱 Love Ballad』『ダウト〜嘘つきオトコは誰?〜』など、数多くの女性向けゲームをリリースされているボルテージですが、その中でも、企画コンセプトが被らないようアイデア出しをされてると思います。
最新作の『幕天』に関してはどのような議論をされたのでしょうか。
D 弊社の既存ユーザーに、「新作の候補」というテーマでアンケートを採った結果、多くの票を獲得した世界観が“幕末”だったんです。幕末をテーマにした女性向けゲームは世間的には多いのですが、弊社にはまだ幕末をテーマとして扱ったソーシャルゲームは無かったので、ゲーム企画するタイミングを窺っていました。
また、新型コロナウイルス感染症(以下:COVID-19)のタイミングと企画の立ち上げ時期が被っていたこともあり、新しい生活様式の中で、どのような女性向けゲームを届けていくべきか。メンバーと喧々諤々、話し合いました。
その話し合いの中で、「幕末は、新しい時代を前向きに切り開いて作っていった人たちの物語なので、そのキャラクターたちの生きざまを描くことで、これからの時代に寄り添う内容にできるのではないか」という結論に至りました。
――COVID-19による影響を加味して “幕末”というキーワードをもう一度捉え直されたんですね。
D そうですね。あとは暗い内容にしたくないという想いもありました。
――“幕末”をテーマにした女性向けゲームは多いとのことでしたが、その2つの相性の良さはどの辺りに感じますか。
D 幕末に限りませんが、命の危険と隣り合わせの世界観ではドラマチックなストーリーになりやすく、その点がプレイしてくださる方の心を掴むのかもしれません。幕末でも、多くの偉人が志半ばで亡くなっておりますので、それを念頭に入れて作っています。
――世界観的にはシリアスな展開が予想されながらも、暗くなりすぎないストーリーなんですね。とても気になります。
D 是非プレイして頂きたいです。また、史実に対して、少し裏切りを入れるようなことも意識はしていますね。
たとえば、自由民権運動で有名な板垣退助は、教科書で知る限り激しい性格を想像させますが、本作では無口な人たらしの青年です。その意外性を楽しんでいただいたり、そういったキャラ設定でありつつも史実通りの事件が起きた時に、そのキャラの気持ちがどのように変化していくのかを楽しんでいただきたいです。
「現代ではない舞台」への需要
――御社の女性向けゲームに登場するメンズたちは、イケメン度合いが飛びぬけていると思っています。『幕天』に登場するキャラクターたちは従来のイケメンにくわえ、妖艶さもレベルアップしている気がします。
それぞれのキャラ設定について教えて頂いてもよろしいでしょうか。
D 『幕天』のキャラクターについては、長州、薩摩、土佐、朝廷、徳川幕府、新撰組、からそれぞれ2名ずつ、計12名という設定の仕方をしています。
ある程度はそれぞれの組織の中で人間関係のストーリーが展開されるようになっています。
――女性向けゲームは男性キャラクターに注目が集まりがちですが、実はヒロインの設定(性格、造形)が重要なのかと思います。その辺りは如何でしょうか。
D ヒロインのデザインについては、時代感も考慮して作っています。たとえば、男性キャラに対する自我の出し方の強さが挙げられます。戦国時代だと女性はかなり控えめですが、幕末はそこから少し時代が進んでいるので、ヒロインも職業を持っていて、現代ほどではないけど、少し前に出るようなキャラ設定にしました。
ゲームの世界観に沿いつつ、現代のお客さんの感性と合うキャラ感を考えていきました。また、男性キャラとの化学反応も重要で、ヒロインがどういう影響を与えていくのかも同時に考えてデザインをしていますね。
価値観が転換するとき、物語が進む
――映画監督の押井守氏は「映画には3つの要素しかない。“1:キャラクター、2:ストーリー、3:世界観”である。まずは世界観から考えて、次にキャラクター、ストーリーは最後に考えれば良い」と話されており、井上雄彦氏は「まずはキャラクターを作る、すると勝手にキャラクター達が動き出しストーリーを作っていく」と話されています。女性向けゲームの企画においても、これらに近い議論はされますか。
D いつも考えていることにすごく近いお話だと思いました。もちろんストーリーは重要なので、そこは命を懸けて作っているのですが、女性向けゲームは、キャラクターに恋してもらわなければ始まらないコンテンツなので、キャラ作りには一番注力をしています。
作っていく順番としても、キャラクターを作っていくときに、まずキャラクターの価値観を設定するステータスがあります。それは志に対しての価値観でもあり、恋愛に対する価値観でもある。たとえば「恋愛ができない価値観」があるのであれば、その枷となっているものは何なのかを決めていきます。
また、ストーリーが進んでヒロインと関わることで、どのような価値観に転換されていくのかであったり。それぞれの価値観を基に異なるキャラクター感に仕上げることで、お客様にもどれかは気になる、と言って頂ければいいなと。
――なるほど。価値観が転換することが「ストーリーが進むこと」と定義されているのが面白いですね。
D そうですね。物語の基礎として、○○という価値観が何かの事件を経て、△△になっていくような変化。これはゲームにせよ、映画にせよ、世の中にある9割近くのストーリーはその構造になっていると思っています。
男性が女性向けゲームを作るときの苦悩
――男性が女性コンテンツに関わる際の苦労などはどのようなことがあるのでしょうか。
P 以前は私含めて男性社員もストーリー作りに関わっていたのですが、ロジックで作れるノウハウが社内に蓄積されているので、そこまで未知な仕事というわけではありませんでした。ただ、女性向けゲームとしての盛り上がりというか、キュンとさせるようなエピソードの引き出しという点では全然、男性目線からの引き出しとは違うと感じましたね。
――めっちゃ気になります。たとえばどんなエピソードでしょう?(笑)
P (笑)うーん、かなり前のことなので…たとえば…(笑)
D わかりやすいところでいうと、”壁ドン”みたいなことですよね。
P ああ、そうですね。
D “壁ドン”のバリエーションみたいな。
――え!ちょっと待ってください、“壁ドン”にもバリエーションがあるんですか?
D 壁ドンのバリエーションというと語弊があるのですが(笑)。壁ドンが及ぼすような、キュンとするシチュエーションのパターンをたくさん考えるのが難しいということですね。
P あとは女性目線だと「こういうシチュエーションだったら、こういうこと言われたら嬉しいよね」という感性が男性と女性では違っていることがありますね。
――なるほど。男性は女性の前だと、自分をよく見せることに意識が行き過ぎて、なかなか本音というか素を見せてくれなかったりするとも言います。その辺りの感覚のズレみたいなのがあると。
P 男性キャラにずっと気を張らせちゃうって点はあるかもしれません。あとストーリーの本筋を考える際に、大きな山(盛り上がりポイント)を作ることばかりに頭が行ってしまって、肝心の恋愛要素が少なくなってしまうことがありましたね。
“結婚がゴール”じゃない時代のハッピーエンドとは?
――今後の女性向けゲームはどうなっていくと予想されていますか?
D 女性向け恋愛ゲームの多くが、”結婚”をゴールに設定しています。でも、ゴールが結婚であるという価値観って、徐々に共有されにくくなっていると思うんですね。なので、ゴールが結婚ではない女性向けゲームのパターンとして増やしていく必要があると思っています。
――たしかにミレニアル世代は必ずしも結婚をしようという価値観でもなくなってきているので、同じゴール設定を続けていると、世間のニーズとズレてしまう可能性があるということなんですね。
D そうなんです。実際、いま以上にみんなが「結婚=ゴール」だと信じてた頃は、女性向けゲームって作りやすかったんです。ゴールをすごく設定しやすいので。この設定しやすさから逃れた時に、何をどうするべきかは悩みどころですね。
――十分にノウハウが溜まってきた、女性向けゲームの制作ですが、その制作枠組みから飛び出すときが近づいているということなんですね。
D はい。価値観がより多様化していき、みんなのゴールがそれぞれバラバラになったときにどういうゲーム構造にしていくべきかは考えていかなければなりません。
――従来の作り方では成り立たなくなった時というのは、ある種、クリエイターからするとそれは腕がなるというか、楽しみなことでもありますよね。
D そうですね。今までになかったストーリー展開になると思うので楽しみです。
ファンの声「ふと日常から離れられてキュンとした!」
――多様化するニーズに応えるという視点では、例えば男性向けのアイドル育成型のゲームでは、恋愛目的ではなく応援目線などの幅広い遊ばれ方をされているので。今後は、こういった他ゲームの知見が必要になってくるのでしょうか。
D 弊社にもアイドル育成ゲームがあるのですが、そういう要素を女性向けゲームのほうにも増やしていこうという試みも『天下統一 恋の乱 Love Ballad』から少しずつありましたね。
P ただ現状としては、特定の知見が欲しいというよりも、新しいエッセンスを入れていくという観点では、様々な分野の知見が必要な段階だと思います。
D 実際、弊社でシナリオディレクターをやっている女性陣も、全く違う業界から入ってきている方も多いですね。私も前職は全く違う職業だったので。
――え!そうなんですか。前職を伺ってもよろしいでしょうか。
D コピーライターをずっとしてました。その後は雑誌やWEBでフリーライターをしていましたね。ライターと編集、少し挿絵を描く仕事を3年ほどやっていたことがあります。なのでキャラクター作りやストーリー作りとは違う畑から来ましたね。
――意外でした!でも確かに、グッとくる文字を作るという能力は、劇中のセリフ作りに活かせそうですね。
D そうですね!刺さるセリフを考える際には、コピーライターの経験が役に立っているのかも(笑)他にもいろんな業界の方々が活躍されていますね。
――本日はありがとうございました。2021年1月21日にリリースとなった最新作『幕天』もかなり好調で、既に盛り上がりを見せていますね。
D ありがとうございます。女性として女性向けゲームを作っていて、いちばん嬉しい瞬間がお客様からの声で、「日々の疲れを忘れられた」とか、「ふと日常から離れられてキュンとしました!」という反応があったときが、ホントに幸せで、もちろん男性向けゲームを作ってみたいという気持ちもあるのですが。
でもやっぱり、同性として少しでもお客様に元気になってもらえるコンテンツを作っていきたい。女性って、本当に頑張り屋さんじゃないですか。本当に皆さん毎日ギリギリ張りつめて頑張っておられる中で、私たちのコンテンツが少しでも癒しになっているということが何よりのモチベーションになるので。全ての女性の方に、ふと日常を忘れて頂けるような作品になればと思います。
取材・ライティング:小川 翔太/撮影:SYN.PRODUCT/編集:田中 祥子(CREATIVE VILLAGE編集部)
企業プロフィール
「恋愛と戦いのドラマ」をテーマとし、エンターテイメントコンテンツにおける企画・制作・開発・販売・運営を行う。女性向けのスマートフォンアプリを主軸とし、海外展開、イベント開催やグッズ販売も実施。
男性向け「サスペンスアプリ」の配信も開始し、近年においては、オリジナルコミックレーベルやストアも運営をスタートした。
■社名:株式会社ボルテージ
■所在地:〒150-6028 東京都渋谷区恵比寿4-20-3 恵比寿ガーデンプレイスタワー28階(本社)
■設立:1999年
■代表者:代表取締役 社長 津谷 祐司
■事業内容:モバイルコンテンツの事業、イベント・ライツ事業、電子書籍事業
■URL:https://www.voltage.co.jp/