2019年9月12日(木)~15日(日)の期間中に(一般公開日は14日・15日)、千葉・幕張メッセにて “東京ゲームショウ2019(以下TGS2019)”が開催されました。多々あるブースの中でも今年で7回目を迎えるインディーゲームコーナーでは22ヵ国・地域のインディーゲーム開発者がオリジナルタイトルを出展しました。今回はそのうちの6ヵ国7ブース(インド1、シンガポール1、チリ1、フランス2、香港1、ポーランド1)でお話を聞きました。
インド
4年前から始動した「XIGMA GAMES」設立者の一人、ゴバルダン氏は「インド国内では課金してアイテムを集めながらゲームを進めていく「ペイゲーム」が主流。課金することで利益につながるゲーム開発ではなく、ユーザーにもっとゲームそのものを楽しんでほしい。課金を気にせずにゲームにのめりこんでほしかったので、フリーゲームで課金不要の『THE BORNFIRE2』を開発した」と話します。
ゲーム内容はモンスターや盗賊の襲撃から生き延びるサバイバルゲーム。古代の東南アジア諸国や日本をイメージして作られたものでゲームに登場する地域はエリアを特定していないそうです。従来のプレイ時間は最大4時間でしたが、2では10時間まで引き延ばしたことで、プレイヤーがストーリー展開の幅を拡げることが可能になりました。フリーゲームは国外でブームになっているため、同氏は「今後、グローバル市場を見据えた展開を計画している。米国、中国に次いで日本も大きなゲーム市場だ」と話しました。
シンガポール
慶應義塾大学とシンガポール国立大学の連携で双方の大学に設置されたKeio-NUS CUTEセンターは『The LOST FOX FIRE(迷い狐火)』を出展(リリース未定)。同作品は五感を使った新しいVRゲームで、着用したスーツから熱風を感じたり、匂いを嗅ぐことができる仕様となっています。寺に迷い込んだ狐の精霊が通る場所に火がついてしまうところからゲームが始まります。偽の狐もいるため、熱風や匂いで嗅ぎ分けて、装備品の消火器をうまく駆使しながら寺の火事を防ぐことがゲームのミッションです。
シンガポール政府は同国のクリエイティブ産業の成長を国家戦略の一部として掲げていることから、同分野で先端的な研究を行っている学術機関10機関を選定しています。マサチューセッツ工科大学(MIT)、中国科学院オートメーション化研究所に次いで慶應義塾大学がパートナーに選ばれました。同センターではアジアにおけるコンテンツやポップカルチャーのトレンドに関する研究を行っています。
チリ
4HA Games SpAはゲーム分野に加え、映画・イラストレーション・ソフトウェア エンジニアリング・グラフィックデザイン部門のクリエイターを集めたチリのインディー開発者集団です。今年初めてTGSへのブース出展を果たしました。出展作品は『Bruma』プレイヤーは物語のキーキャラクターであるネコの「ルナ」としてストーリーを進めます。ルナの親友だったおばあさんはある事件をきっかけに姿を消してしまいます。ルナはおばあさんの記憶を辿って事件の背後にある手がかりを探す旅に出ます。
同ゲームは世界中のゲームブースの出展やビジネスの場として米国で開催されている「Game Connection America2019(次回は来月29日~31日にフランスにて開催予定)」にて「ベスト クオリティー オブ アート」賞を受賞。他にも「ベスト インディーゲーム」「ベスト ストーリーテリング」賞の2部門に受賞候補作品としてノミネートされました。
ゲーム開発者のアルベロ氏は「日本のゲームが好き、特にファイナルファンタジー」とし、チリのゲーム市場について「VRゲームは不人気。ストーリーテリング調(出展作品のBrumaもストーリーテリングのジャンル)のゲームが流行っている」と話しました。
フランス
二つのブースを紹介します。どちらのブースにも共通点として挙げられるのは「コアなファンのみならず、初心者でも遊べるゲーム作り」という、対象となるユーザーのレベルを絞らない・ゲームに登場するキャラクターに可愛さを追求している点でした。日本文化が大好きで、ゲームスタジオ立ち上げの際には任天堂から影響を受けたと話すタコ・スタジオ代表ジョナサン氏。
今回出展した『MINIMAL MOVE』は3D協力型パズルゲームで、二人の宇宙捜査官、カイテンとイドウが協力し合いながらブロックを動かし、出口を目指すストーリーです。カイテンはブロックを回転でき、イドウはブロックを上下左右に移動させる役割を持っています。1人のシングルモードもしくは2人のコーポレーションモードで遊ぶことができます。ゲームにはメインキャラクターのカイテンとイドウに加え、愉快な仲間たちも登場します。エピソードは7つあり、すべてコンプリートしたときに、MINIMAL WORLDの謎が解き明かされる仕組みです。同氏によると母国のフランスで流行っているゲームはRPGやシューティング・ゲームだそうです。
Kalankの『Tokotoko』は、描いた絵をスマートフォンのアプリにかざすと、「ハコ」というネコの主人公が絵の中から飛び出してくるARゲームです。自分が描いた絵を中心にオリジナルのストーリーが動き出します。
ハコの愛らしいキャラクターがKalankのトレードマークです。戦闘ものゲームでないことからスキルを気にせず始めることができるのでハードルは低く、老若男女問わず遊べるゲームの仕様となっていました。
Kalank関係者は「日本の“Kawaii”文化に影響されて『Tokotoko』を作った。大好きな国で思い入れがあるので、新しいゲームを導入する際には失敗したくない。だから最初にリリースする国は日本ではなく、あえて他国で行ってユーザーの反応を見る」と話しました。
香港
今年のTGSでは香港デジタルエンターテインメント協会(HKDEA)が香港のスタートアップ企業12社を集め、香港パビリオンを運営しました。
Zoomobはそのうちの1社で乙女ゲームが普及していない欧米・欧州のユーザーをターゲットにした恋愛シミュレーションゲーム『フォール イン ラブ:貴女の騎士』を出展(共同通信 PR Wireより)。
同社開発マネージャーのステファン氏は同ゲームについて「昨今、日本やアジアの市場で当たり前に目にする乙女ゲームから着想を得た」と話します。
プレイヤーは親の知人(大富豪)に預けられることになり、ひとつ屋根の下で知人の息子である歌手、俳優、アスリート、企業のCEO、ITなどの職業を持つ男性たちと同棲生活を始めます。彼らとの出会いの中で自分の好みのタイプを選択していき、恋愛を楽しみます。同氏は日本で普及している乙女ゲームに登場する男性キャラクターの特徴として「高身長・細マッチョ・可愛め系な男子」などをキーワードとして挙げましたが、欧米や欧州で普及させるには男性キャラクターの特徴を「がたいがいい、筋肉質」で「可愛いよりハンサム」に変えることで対象エリアとなる欧米・欧州のユーザーの好みに近いキャラクターを作ったといいます。
対象言語はポルトガル語・スペイン語・英語の三ヵ国語。対象年齢は20~45歳のすべての女性だそうです。Zoomob広報担当者によると新作のiosバージョンの最新版は10月に配信予定。Zoomobはモバイルディベロッパーで、アプリのダウンロード数は200万以上を記録しました。
ポーランド
ポーランドのインディーゲームパブリッシャー、Ysbryd Gamesが出展した『恐怖の世界(World of Horror)』は、日本ホラー漫画界における鬼才、伊藤潤二からインスピレーションを受けて開発されたホラーアドベンチャーゲームです。昨年に引き続き2度目の出展です。
ゲームの舞台は1980年台の日本の田舎町。不可解な事件が起こり、登場人物は次々と事件に巻き込まれていきます。プレイヤーが謎解きをしながらシナリオは進んでいき、誤った選択をするとデッド・エンドでゲームは終了します。
製品版でのエピソードは15~20話を収録予定で『ハサミ女の話』や『学校とはさみに関する恐怖』などの従来のエピソードに加え『記憶にない死んだ大叔父の遺体の番として儀式をする話』が新エピソードとして登場しています(https://www.4gamer.net/games/435/G043533/20180922021/より)。2019年にプレイステーション4、Nintendo Switch、PCで日本語に翻訳されてリリースされる予定です(https://www.famitsu.com/news/201909/11183032.htmlより)。
クリエイティブ・ディレクターのコズミンスキ氏によるとポーランドではシューティング・ゲームが流行っているそうです。
出展社情報
XIGMA Games(インド)
『THE BONFIRE2』
http://www.xigmagames.com/
Keio-NUS CUTE Center (CUTE Center)(シンガポール)
『THE LOST FOX FiRE(迷い狐火)』
http://cutecenter.nus.edu.sg/
4HA Games SpA(チリ)
『Bruma』
公式サイトなし
Tako Studio(フランス)
『MINIMAL GAME』
https://www.tako-studio.com/jp
Kalank(フランス)
『Tokotoko』
ZOOMOB(香港)
『Fall In Love』
Ysbryd Games(ポーランド)
『恐怖の世界(WORLD OF HORROR)』
http://www.wohgame.com/
TGS2019公式サイトはこちら
(CREATIVE VILLAGE編集部)