11年間連載されている人気漫画『フリージング』。これまでアニメ化やゲーム化がされてきましたが、今夏にはソーシャルゲーム『フリージング・エクステンション』が配信されます。漫画には登場しないオリジナルキャラやストーリーも登場し、原作ファンも原作未体験の人もどちらにも楽しんでいただける仕掛けがたくさんあります。

新ゲームならではの楽しみや特典などを、林達永(原作)、金光鉉(作画)、金度亨(ゲーム開発)に聞いた。

連載10年続くのは、キャラクターの魅力

――『フリージング』の連載が始まったのは2007年でした。きっかけは?

林達永 2004年からヤングガンガンで「黒神」という漫画の原作を描いていたんです。その頃に日本の出版社から「ヒロインが戦うバトル漫画で、日本に進出できるものを企画して欲しい」という依頼をいただき、作画の金光鉉さんと一緒に描き始めたのが『フリージング』です。1巻を出したらかなり反応がよく、現在32巻まで続いています。10年の間に二度アニメ化され、ゲーム化もされ、今年の夏には新たにゲーム『フリージング・エクステンション』のリリースが決まっています。皆さんのおかげでいい作品になっていて、ありがたいです。

――他にも日本と韓国でいくつもの作品を発表されていますが、アイデアはどこから生まれてくるんですか?

林達永 たくさん見て感じることです。何十種類もの小説や漫画や文学作品を読み、映画を観て、いろんな人達の考えや思いをインプットします。多くのインプットがなければアウトプットもできません。

金光鉉 私も同じですね。作家はたくさん見なければならないし、たくさん感じないといけない。映画もよく観ます。そもそも私の根底にあるのが、幼い頃に観た80年代のロボットアニメーションなんです。それが私に、絵を描く事にあたっての感覚や、いろんな世界観などへの影響を与えてくれました。今でも自分が漫画を描く時には、頭の中に当時の作品が浮かんで「こういう動きがあったな」「あんなカッコいい事があった」「こういうふうに感じたね」と思い出しては、無意識に作画に投影してしまいます。

――キャラクターは、どのように作るのですか? 『フリージング』にもたくさんのキャラクターが登場しますね

金光鉉 二面性を描くように心がけています。『フリージング』ならば、ヒロインは人類の運命を背負って命がけで戦う軍人のような面がありながら、普段の生活や恋愛感情も描かれています。一人の人の中にある二面性を、一貫性があるように表現するのが難しい。ほぼすべてのキャラクターは二面性を持っているので、そこをどう表現するかをもっともこだわりますし、こだわった結果が作品の魅力になっていると感じます。

林達永 キャラクターに力を入れたからこそ、多くの方に愛していただき、10年以上の連載を続けてこられたのかな。愛してくださるファンやユーザーのためにも、これからも深みのあるコンテンツを心がけていきたいです。

ゲームと漫画、互いに行き交う世界観

――今回の新ゲームアプリについて、開発の金度亨さんにお伺いしたいと思います。ゲームのこだわりは?

金度亨 原作の魅力をお伝えできるゲームを作りたいなと思ったのが最初ですが、原作に頼っていては原作より劣ってしまう。原作を超えるものを創らなければいけません。そこで、原作を知ってる人も知らない人も楽しめて『フリージング』を好きになる事を目指しました。

中でもこだわったのは、キャラクターを伝えることです。もともと弊社はバトルものの3Dに力を入れていて、とあるプロジェクトを日本の大手ゲーム会社さんとつくっていました。そのノウハウを元に、今ゲームではバトルものの世界観をベースにして、キャラクターを丁寧に描くことを心がけました。すべてのシステムやバトルはキャラクターを伝えるために存在しています。キャラクターにこだわったのは、ゲームは漫画と違って繰り返して遊ぶものだからです。プレイするたびに好きになるには、キャラクターの魅力が不可欠でした。

林達永 金度亨さんのおっしゃる通り、原作を超えましたね。これまで『フリージング』はアニメ化もゲーム化もされてきましたが、原作を超えるのは今回が初めてです。

――原作を知っている人と、知らない人。それぞれどんなところを楽しめますか?

金度亨 もともとの『フリージング』ファンの方には、世界観に満足していただけると思います。キャラクター設定は漫画と同じですが、キャラとの距離感が違うので、そのギャップに盛り上がっていただけると思います。例えば漫画では主人公と距離があるキャラクターが、ゲームではプレイヤーの強い味方になったりもします。漫画とゲーム、同じ『フリージング』という世界観ながら、違った視点を体験してみてください。

そして原作を知らない方には、ゲームそのものを楽しめるように丁寧に作っています。だから安心して、自分の好みのキャラクターに注目して楽しんでください。基本的にバトルは単戦で、押すだけで戦える簡単な仕組みなので、「このキャラで戦ってみたいな」というシンプルな気持ちで始めていただければ大丈夫。その後は、好感度を高めてキャラとの関係を深めて行く恋愛モードや、キャラの成長が実感できるバトルなど、プレイするほど深みが増す仕掛けを組み込んでいます。メインのストーリーだけでなく、各キャラクターすべてのビハインドストーリーを用意していますので、自分が好きなキャラクターを育ててみてください。また、他のユーザーと協力して大きなボスを倒したりと、ソーシャルゲームとしてしっかりした作りになっているので、いろんな楽しみ方ができます。ゲームだけのオリジナルキャラクターもオリジナルストーリーもたくさん登場しますよ。

林達永 ゲームのオリジナルヒロインとして制作された代表的なキャラが「シラユキ・ヒメ」。いずれは原作漫画においても重要なポジションになるよう、かなり力を入れてつくったキャラクターです。彼女は明るくて愛されるみんなのアイドルですが、実は重大な秘密をもっているキャラクターです。ゲームでは好感度が上がるたびにキャラクターと仲良くなったり愛情表現ができるのですが、その秘密のためシラユキ・ヒメ本当の姿に会えるのはゲームで好感度を上げる楽しみの一つともなるででしょう。好感度があがると隠されたストーリーがどんどんオープンにされていき、シラユキ・ヒメがなぜ本来の秘密が明かされていく……。

プレイするほどに、各キャラクターの隠された秘密が楽しめるのが醍醐味でもあります。漫画を読んでいなくても楽しめるけれど、両方の設定は繋がっていて、両方遊ぶと面白さが増すように心がけています。原作とコラボするようなゲームであることが、エンターテイメントなんだと思います。

――原作者がゲーム制作に参加していることで、ゲームのクオリティも高まっているんですね

金度亨 原作者がゲーム制作に関わってくださっているので、『フリージング』という作品の魅力がしっかりと伝わるゲームになっています。そのために最善を尽くし、できる事はすべてやりました。ゲームのオリジナル設定には、原作以上のコンテンツを込めました。

林達永 ゲーム制作のために、原作者である私たちは原作の3倍ほどのオリジナルストーリーを用意しているんですよ。今回のゲームに登場するキャラクターのほぼ半分近くがオリジナルですが、すべて原作に繋がるように作っています。今後はゲームのオリジナルキャラクターが原作漫画にも登場し、影響を与える可能性もあります。原作者と一緒にゲームを作るからこそできることですね。

金光鉉 原作ファンの方に、漫画とゲームの違いを楽しんでいただきたい。そのためのクオリティを上げるためにも、私たちは原作者としてゲーム制作に参加しています。
同時に、『フリージング』の原作を知らない方にも愛していただきたい。まずはシンプルにプレイを楽しんでください。ゲームとして非常に良くできていますので、自信を持ってお勧めしますよ。そしてもし『フリージング』の世界観に興味を持っていただければ、ぜひ漫画も応援していただければ幸いです。