《日本アルプス十二題 劔山の朝》大正15(1926)年,木版,個人蔵
《日本アルプス十二題 劔山の朝》大正15(1926)年,木版,個人蔵

「生誕140年 吉田博展 山と水の風景」は明治から昭和にかけて風景画の第一人者として活躍した吉田博(1876-1950)の生誕140年を記念する回顧展です。
福岡県久留米市に生まれた吉田博は、10代半ばで画才を見込まれ、上京して小山正太郎の洋画塾不同舎に入門します。仲間から「絵の鬼」と呼ばれるほど鍛錬を積み、1899年にアメリカへ渡り数々の作品展を開催、水彩画の技術と質の高さを絶賛されます。
その後も欧米を中心に渡航を重ね、国内はもとより世界各地の風景に取材した油彩画や木版画を発表、太平洋画会と官展を舞台に活動を続けました。

自然美をうたい多彩な風景を描いた吉田博は、毎年のように日本アルプスの山々に登るなど、とりわけ高山を愛し題材とする山岳画家としても知られています。制作全体を貫く、自然への真摯な眼差しと確かな技量に支えられた叙情豊かな作品は、国内外の多くの人々を魅了し、日本近代絵画史に大きな足跡を残しました。今回の展覧会では、水彩、油彩、木版へと媒体を展開させていった初期から晩年までの作品群を一堂に展示、吉田博の全貌とその魅力に迫ります。

ダイアナ妃や精神医学者フロイトも魅了した吉田博

吉田博は日本よりも早くから欧米で評価され知名度を上げた画家です。水彩画、油彩画、木版画といった幅広い作品の中でも、洋画の描写と浮世絵版画の伝統技法を融合させた独自の木版画はとりわけ人気が高く、欧米の美術館や個人のコレクションとなっている作品も少なくありません。吉田博の木版画は、GHQのマッカーサーやイギリスのダイアナ妃といった海外の要人に愛され、またオーストリアの精神医学者フロイトの書斎には富士山を描いた木版画が飾られていたといいます。今回の展覧会では、ダイアナ妃の執務室に飾られていた『瀬戸内海集 光る海』(1926年)も展示されます。

吉田博(1876~1950)略歴

《雲叡深秋》明治31(1898)年,油彩,福岡市美術館蔵
《雲叡深秋》明治31(1898)年,油彩,福岡市美術館蔵

1876年9月19日、旧久留米藩士の上田束秀之の次男として福岡県久留米市に生まれる。15歳のとき、図画教師吉田嘉三郎にその画才を見込まれ、吉田家の養子となる。その8年後の23歳のとき、初めて渡米。1901年の帰国までデトロイト美術館などで不同舎仲間と展覧会を開き大成功をおさめ、1900年に訪れたパリ万博では褒賞を得る。
【主な作品】
『冬木立』(1894-99年)
『雲叡深秋』(1898年)
『チューリンガムの黄昏』(1905年)
『ヴェニスの運河』(1906年)
『堀切寺』(1907年)
『アルプス十二題 劒山の朝』(1926年)
『穂高山』(大正期)
『瀬戸内海集 帆船 朝』(1926年)

 開催概要

展覧会名

「生誕140年 吉田博展 山と水の風景」

会 期

2017年7月8日(土)~8月27日(日)
*月曜日休館(ただし7月17日は開館、翌18日も開館)
*会期中に一部展示替えあり
【前期】7月8日~7月30日【後期】8月1日~8月27日

会 場

東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
http://www.sjnk-museum.org/

開館時間

午前10時~午後6時 ※入館は午後5時30分まで

公式HP

http://www.sjnk-museum.org/program/expect/4778.html

応募締切

7月27日(木)



定員に達したため応募は締め切りました。