データ活用、デジタルマーケティングなど、ビジネスにおけるデジタル活用の促進が急がれています。Web制作会社、事業会社、広告代理店関連会社など、多様な立場からデジタル施策に携わってきた柿沼は現在、クリーク・アンド・リバー社(以下C&R社)で、お客様と密な関係を築いての深いサポートに注力しています。デジタルを目的化せず、事業全体を捉えることが大切だという柿沼に、これまでのキャリアや、デジタルマーケティングの今後について伺いました。

  • デジマ業界で活躍したい人におすすめの記事です。
  • 弊社でプロデューサーとして活躍する柿沼が登場します。
  • これからのデジタルマーケティングについて聞いています。
株式会社クリーク・アンド・リバー社
デジタルマーケティンググループ(DMG)
柿沼洋介
Web制作支援会社へWebディレクターとして入社。Web制作、解析支援を経験した後に、ハンドバッグのキタムラへ転職し、自社のWeb・EC、ITシステムの責任者として、同社のIT推進を担当。ECサイトの改善やBIツール導入等、幅広いプロジェクトを経験。株式会社デルフィス・インタラクティブにてデジタルマーケティング、システムの設計、企画に参加。2020年にクリーク・アンド・リバー社へ入社。現在はDMGのPMを担当。新規プロジェクトの営業支援から既存案件のプランニングまで、幅広い案件を取り扱う。出向にて株式会社JDDLの取締役にも就任し、事業の推進にあたる。

C&R社ではお客様の事業に深く関わった仕事ができる

──2020年10月にC&R社に入社されたそうですね。現在のお仕事内容を教えてください。

プロジェクトマネージャー(PM)として、営業部署と連携し、お客様の事業課題などをヒアリングし、プランニング、ご提案をしています。入社当初は、ECのリニューアル、マーケティング施策設計の他、データ分析企画などを手がけました。現在は、主に2件の案件に関わっています。1件は大手企業の新サービス構築プロジェクトで、サービスをどのように提供するかをお客様と一緒に考えています。最近始まったもう1件のプロジェクトでは、プロデューサーとして、データ活用をはじめお客様のビジネス全体のサポートを行っていく予定です。

──とてもスケールの大きな案件をご担当されていますね。制作会社、事業会社、広告代理店関連会社と、多様な立場からお仕事をされてきましたが、C&R社に転職を決めたのは、なぜでしょうか。

C&R社では、スタートの段階から深く関われるからです。私が転職するときに重視していたのは、「お客様から仕事を発注いただく前の段階、ニーズが生まれるか生まれないかのところから関われるか」ということでした。お客様の事業にとって不可欠になるくらいのインパクトある仕事をしたかったのですが、デジタルマーケティング、デジタル施策というのは、外から一方的に提案する形で進めると失敗するのでは、という思いがあるからです。

──提案する形で進めると失敗する…どういうことでしょう?

デジタルとつくと、何が特別なものだと思われがちですが、つまりは「マーケティング」、会社の事業運用そのものなのです。他社が「こうしたらいいんじゃないですか?」と言ったくらいで変わるということは本来なく、変わるのであれば土台から変わっていく必要があります。その土台に立っていないのなら、デジタルを導入してもあまり意味がなくなってしまいます。お客様のニーズが固まった段階では、そのニーズを検証することなく、それに沿った提案をしていかなくてはなりません。それは、実は無責任なことではないかと思い、ニーズのもっと手前からアプローチできる環境はないかと考えていました。

他社ではなかなか叶わない“伴走型”の関わり方

──なるほど。しかし、そこまで早い段階から関われる環境となると、事業会社以外では難しいのではないですか。

そうですね。代理店、SIer、コンサルティング会社など、いろいろな会社のお話をうかがいましたが、私が聞いた範囲では、希望を話しても「そこまでがっつり入っている会社はないですよ」ということでした。C&R社と話したところ、「お客様に伴走しながらのサポートをします」といわれ、お客様と共にビジネスを組み立て、ニーズをつくっていける面白い環境だと思ってジョインしました。

──先ほどおっしゃられた2つのプロジェクトは、まさに柿沼さんのやりたいところですね。

その通りです。特に最新の案件では、今じっくりとビジネスの深いところからお話しさせていただいています。

デジタルとリアルを結ぶ施策が売上アップに貢献

──お客様との関わりについて、そのような考えに至る道筋も知りたいです。これまでのお仕事や、キャリアのターニングポイントも教えてください。

最初は、ベンチャーのWeb制作会社に入り、Webサイトのプロデュース、ディレクション、アクセス解析ツールのカスタマーサポートなど、幅広い仕事をしました。入って2ヶ月ほどでプロデューサーを任され、とりあえずやってみるという感じでしたが、運よく、大きな問題なく納品ができました。Web制作の最初から最後までを早い段階で経験できたことは自信になりましたね。

──その後、ファッション系の事業会社に転職されますよね。

たとえば当時はまだCMSが確立していなかったのですが、WEBサイト構築は定型化できるのではないかと考えていました。そこで、「制作する側よりも、そうした仕組みをビジネスにする方が向いているのかな?」と考えました。そんな折、ECを始めたいという企業の社長と話す機会があり、EC立ち上げに関わることにしました。このときにいちばん大変だと感じたのは、ECを会社の事業の中でどのように位置づけるのか、そしてそれをどのように会社の中に根づかせるか、ということでした。

──EC立ち上げだけでなく、事業のなかでECが占める位置から考えて具体化していったのですね。

ファッション系のブランドは、お店で接客を受けて商品に触れていただくことにバリューがあるわけで、ECは補助手段です。立ち位置を全体から考えなくては、ECの運用自体も方針がブレてしまうと思っていました。ですから、店舗と連携できるアイディアはいろいろ実施しました。たとえば、Webサイト上のカラーシミュレーションです。バッグの色のオーダーができるのですが、色のイメージはなかなかつかないですよね。そこで、Web上で、本体や持ち手など、パーツごとに色を設定して、でき上がりを画像で見て決め、店舗でオーダーできるようにしたところ、売上が大きく上がりました。デジタルやWebサイトが、事業全体のなかでどんな役割を果たせるのか、社内認知が広がったと思います。

ビジネスそのものを考える、コンサルティングの力をつけて

──そこで大きな成功を収めたあと、広告代理店関連会社に転職をされますね。どんな課題があったのでしょうか。

基幹システムのリプレイスや、ECとリアルの連携など、一通りのことをやれたので、新しい挑戦をしようと思いました。事業会社での経験も活かしつつ、ECよりも広い範囲で、ITを使ってどうビジネスをするのか、という視点を持てる仕事を目標に据えました。転職先では、自動車関連企業のCRMの仕組みづくりや、デジタルマーケティングの推進などのプランニングを中心に、場合によってはPMも担いました。

──ご自分の関わりたい領域でのお仕事で、内容は満足でしたか。

ジョブチェンジに近い転職でしたから、最初は戸惑うことが多かったですね。システムやツールの制作では、HOWの知識が中心になります。しかし、この仕事、特にコンサルティング領域では、WHYとかWHAT、ビジネスのそもそも論が議論の中心になっていました。何故なのか、何をするべきなのか、その議論の組み立て方そのものが、皆のビジネスとしての共通認識になるのだと、腹落ちするのに時間がかかりました。このロジックが自分の中に入ってくるまでに2年ほどかかったでしょうか。

──どのようにして、ご自分の中に取り入れたのでしょうか。

会議に出たら、一人ひとりの発言内容とその後を観察し、誰のどんな発言で案件が進んでいくのか、その流れを少しずつ自分の中に入れていきました。関わる人、会社、部署、どれも膨大になる仕事でしたから、人とのよい関係を築き、主導的に進められるようになるまでにはもう少し、3年くらいの時間はかかりましたが、充実した仕事ができました。そして、先ほどお話ししたように、より早い段階からお客様と話せる環境がないか、考え始めたのです。

──入社して10ヶ月ほど経ちましたが、感想は?

C&R社の「デジタルマーケティンググループ」という部署の特徴かもしれませんが、人がいいですね。優秀な方が多く、技術に関することも教授してくれる人がたくさんいて、とてもやりやすい環境です。持っている技術がすごい、お話がとても上手、なんかこうよくわからないけれど信頼されているとか(笑)。優秀さにもいろいろな方向性があって、社内での人との出会いが面白いです。また、自分で主張すれば希望の案件に関われるなど、自分にチャンスが巡ってくる環境でもあります。

デジマとは顧客との関係を“デジタルを含めて”つくり直すこと

──柿沼さんから見たデジタルマーケティングの今後について教えてください。

今のところ、何かをデジタルに置き換える「デジタル化」をデジタルマーケティングと呼ぶことが多いと思います。本来は、顧客との関係を、デジタルの手段を含めて再設計することが、デジタルマーケティングだと考えています。デジタルをどう使い、リアルと関連させるのか、UXの観点からつくり直していくことが今後必要になってくると思います。

──まさに先ほど、「デジタルとつくからといって特別ではない」とおっしゃっていたことにつながりますね。

そうですね、先ほどお話ししたブランドもそうです。体験自体はデジタル化が難しいので、リアルの価値を上げることがブランディングにつながると思います。一方、リアルの体験を、たとえば予約システムをつくって、スムーズにすることは、デジタルが得意です。データ分析では、ヨーロッパのGDPR、Appleが採用するITPなど、プライバシーを保護するルールがつくられ、フリーハンドでデータを取得できなくなっています。無理なデータ取得や、こじつけのようなデータ連携をするのではなく、お客様にどんな価値を提供できるか、にフォーカスし、デジタルでできること、リアルでできることをそれぞれ配置する必要があります。そうでなければ、結局、顧客の満足度を下げることになってしまいます。

──デジタル、リアル、両方を考える必要があるのですね。お話をうかがっていると、事業全体、会社全体と、全体を見渡すことが得意な方だなと思います。

得意かどうかはわかりませんが、全体をきちんと見ないと、何が正しいのか判断できないという思いはありますね。

──デジタルマーケティングに興味を持つクリエイティブ人材にアドバイスをお願いします。

自分のやっていることが、その事業にとってどういう役目があるのか考えることがいちばん大事だと思います。全体を見て、広く捉えることが必要です。たとえば、WebサイトやECでは、コンバージョン(CV)させることが目的になりがちですが、売上を上げる方法は、たぶんそれだけではないでしょう。質のよいユーザーを集める、お客様のフォローアップをするなどの方が重要かもしれません。CV率など、ひとつのKPIを最適化することが目的化してしまうと、非常に狭い話になってしまいます。

自分の仕事は事業全体にとって何の役割があり、そのために他の方法や方向はないのか、よく考えるようにすると、広い範囲に目が向いて、多様なものを吸収できるようになると思います。

インタビュー・テキスト:あんどう ちよ/撮影:SYN.PRODUCT/企画・編集:向井 美帆(CREATIVE VILLAGE編集部)


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