NHK入局以来、「紅白歌合戦」「MUSIC JAPAN」「スコラ坂本龍一 音楽の学校」など数々の音楽番組を手掛けてきた佐渡岳利さん。「MUSIC JAPAN」で司会を務めるPerfumeとの繋がりも長く、NHKでこれまで放送されたPerfumeの全てのドキュメンタリー番組にプロデューサーとして関わっています。Perfumeの結成15周年、メジャーデビュー10周年を彩るドキュメント映画『WE ARE Perfume -WORLD TOUR 3rd DOCUMENT』の公開に際し、お話を伺いました。
■ スタンダードではないけれど、面白い価値観のあるものをすくい取る
テレビ局で働きたいと思ったのは中学生くらいの頃でした。「3年B組金八先生」などのドラマが好きで、NHKにもドラマ志望で入りましたが、配属先が音楽だったんです。全員が希望の部署に行けるわけではないことは分かりながらも「あぁ、音楽担当なんだ」と思ってやっているうちに、いつの間にか20年以上が経っています(笑)
「MUSIC JAPAN」では、出演アーティストのラインアップにしても、ウィークリーチャートを中心に考えてはいますが、そこに入りきらない多様な価値観を伝えることを考えていましたね。全体を10としたら、そのうち8ぐらいメインストリームがあれば、その他の部分で、ちょっと変わっていたり、普段触れられないようなものが入っていると、「こんな音楽もあるんだ、凄いなぁ」と思ってくれる人が結構いる気がして、そういう番組作りを心がけていました。
これまでにも、例えば路上でのゲリラライブをインターネットで生中継するなど、動画配信から注目を集めた“神聖かまってちゃん”に、2010年に地上波での初出演をしてもらって、2015年6月の再びの出演時にもインターネットを中心に大きな反響を巻き起こしたこともありました。そのように、スタンダードではないけれど、面白い価値観のあるものを視聴者のみなさんに知って欲しいという想いはありますね。
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■ メンバーの近くで撮影したワールドツアーを、リアルに体験してもらえるような作品
音楽番組を担当していたので、Perfumeのメンバーとは初期からご一緒する機会が多く「MUSIC JAPAN」では司会をやってもらっているので、毎週のように会う機会がありました。初めての東京ドームや、初めてのワールドツアーなど節目ごとにドキュメンタリー番組を制作していたので、デビュー10周年、結成15周年の今年にふさわしいアウトプットを考えた時に、映画という形で動き出したのが、『WE ARE Perfume -WORLD TOUR 3rd DOCUMENT』です。
2014年から2015年にかけて行われた「Perfume WORLD TOUR 3rd」、「SXSW 2015」での、海外の丸2ヶ月間に亘る活動に密着取材を行いました。アジア、ヨーロッパ、アメリカなど、世界を駆け巡りながら、彼女たちの音楽、最新テクノロジーを掛け合わせたライブパフォーマンス、そして、これまであまり見せることのなかった舞台裏にも迫ることで、総撮影時間も500時間を超えました。メンバーがいないところでもファンの方を撮影する機会もあったので、本当に長い撮影時間になりましたね。
500時間を超える素材の中から、作品として仕上げるにあたっては、僕がメンバーの近くで撮影して、体験したワールドツアーをリアルに観客のみなさんにも体験してもらえるような作品を目指しました。
あまり作為的にならないで、あったままを記録するような、僕の視点にお客さんも一緒に立ってもらうイメージで作っていきました。
邦画ドキュメンタリー史上初となる日米同時公開が決まって、メンバーが繰り出す小ネタとかは伝わるのかなぁって少し心配になりますが(笑)、彼女たちのステージが海外でもあれだけ熱狂的に受け入れられるのと同様に、この作品も伝わってくれれば嬉しいですね。
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■ 真鍋大度さんの革新的な演出を体現するPerfumeの凄さ
Perfumeのステージの魅力として、真鍋大度さんのテクノロジー演出も大きな要素だと思います。真鍋さんは2010年から演出サポートを担い、ディレクションを担当したPerfume Global Site Projectはカンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル、サイバー部門にて銀賞を受賞しています。
真鍋さんとは僕自身、Perfume以外のプロジェクトでもご一緒しているのですが、いつも“誰もやったことのないもの”に凄くこだわっています。常に革新的なテクノロジーが入っていて、今回も特にテキサス公演では驚かされましたね。
その真鍋さんの革新的な部分をとても尊敬していますし、Perfumeはそういう試みを取り入れるのにふさわしいアーティストだと実感しています。真鍋さんも前からPerfumeが好きで、ぜひ仕事をしたいと思っていたそうなのですが、真鍋さんの目指すレベルの高いエンターテインメントを彼女たちが体現できることも素晴らしいことだと思いますね。
3人は成長を止めていなくて、観るたびにコンサートも凄くなってますよね。ワールドツアーもまだ3回目ですから、もっと会場が大きくなれば、日本でやっているような大規模な演出も見せられるでしょうし、さらにすごいことができるんじゃないでしょうか。中田ヤスタカさんの作った新曲のフレーズにある「いつだって今が常にスタートライン」という言葉が象徴していると思いますが、今回のワールドツアーも一つのステップで、さらに大きくなっていく途中ですよね。
■ テクノロジーは自分のイメージを実現するための道具、手段にすぎない
最近では4K、8Kなどの技術の発達も目覚ましく、僕自身も8Kでの映像制作に携わったこともありますが、テクノロジーは自分のイメージを実現するための道具、手段にすぎないのだと思います。例えば、クラシックな映画『ローマの休日』は白黒フィルムで作られていますが、それは今見ても凄く魅力的ですよね。結局、そういうことなんじゃないかと思うんです。
面白いものは時代を越えて、映像がどうこうという以前に力強いメッセージを持っています。例えばウォルト・ディズニーも常に最先端の技術を取り入れていますが、それは彼の脳内にある理想を追求するために必要だから取り入れているにすぎないというか…。Perfumeのステージもそうですよね。3人や真鍋さんや演出のMIKIKO先生が、脳内にイメージしたものが、時代ごとの最先端テクノロジーで現実のものになる…そういうことです。
なので、これから映像制作に携わりたいという方には、ベースとなる知識として最先端のものには常に触れながらも、技術に頼りすぎることなく、何を表現していきたいのかを考えて欲しいと思います。
僕たちが若い頃よりも映像を作ることは身近になっています。ツールも千差万別でいろいろな選択肢があるし、スマホでも作れるからこそ、自分がこんなことをやったら面白いかなと思うことをバンバン表に出していって欲しいですね。そのための表現方法や手段をセレクトしていく。そのセレクトする手段は今豊かにあるし、これからもさらに豊かになっていきますから。
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■作品情報
『WE ARE Perfume -WORLD TOUR 3rd DOCUMENT』
10月31日(土)TOHOシネマズ新宿ほか全国ロードショー
出演/Perfume(a-chan、KASHIYUKA、NOCCHi)
監督/佐渡岳利
音楽/中田ヤスタカ(CAPSULE)
主題歌/Perfume「STAR TRAIN」(ユニバーサルミュージック)
配給・宣伝/日活