2019年から始まった新型コロナウイルス(以下、コロナ)による混乱は、落ち着きをみせはじめています。しかし、依然として多くの人々が、コロナ前の生活を取り戻せずにいるのが現状です。仕事におけるニューノーマルも定着しはじめていますが、「これまで通りの職のままで、今後も安泰なのだろうか……」と不安な方は多いでしょう。
一方、コロナの余韻が残る中、現在の転職市場は売り手市場であるため、転職希望者においては好機と言える状況です。2023年に転職を考える方は、どのようなことを意識すべきか今から考えておくべきでしょう。
そこで今回は、コロナや売り手市場といった背景を掘り下げつつ、2023年の転職市場で良い職場を選ぶポイントについて解説します。
転職経験者の約半数はコロナ禍で転職をより意識
コロナという前代未聞の状況は、転職市場が大きく変革するきっかけとなりました。ここではコロナ禍に転職をした方々が、どのような意識を持っているのか解説します。
多くのワーカーが転職を意識しはじめたコロナ禍
Sansan株式会社が提供するキャリアプロフィール「Eight」では、「転職経験者のキャリア形成に関する意識調査」を実施しました。20代転職経験者の7割が、コロナ禍で転職を考えるようになったという結果が明らかになったそうです。一方、現在の職場で勤め続けることを「想定していない」「分からない」と回答した方は、約4割という結果でした。
出典:Sansan株式会社 Eight 「転職経験者のキャリア形成に関する意識調査」
全世界を巻き込む未曽有の事態で、いまだにコロナ前の状況に戻っていない現状を踏まえると、「環境を変えるべき」という危機感を覚える大きなきっかけになったことは間違いないでしょう。
自身のキャリアを棚卸ししている方の割合は少ない
同調査で、「キャリアの棚卸し」の実施可否について質問したところ、「定期的にしている(17.1%)」と回答した方は2割以下という結果でした。自身のキャリアを振り返り、どのような経験やスキルを持っているのかについて可視化できる人材は、意外に少ないことが浮き彫りになっています。また、20代などの若年層のほうが、キャリアの棚卸しをしている方の割合が多いことは大きな特徴と言えるでしょう。
出典:Sansan株式会社 Eight 「転職経験者のキャリア形成に関する意識調査」
キャリアの棚卸しを実施する目的を質問したところ、「自分のスキルなどを見返すため」「自分の採用市場でのニーズを客観的に図るため」という回答が多くを占めました。その中で、20代の方は「自分の採用市場でのニーズを客観的に図るため」と回答した方が約半数ということで、新しいことへチャレンジしようとする姿勢が垣間見えます。一方、30代の方になると「キャリアプランを考える参考にするため」と回答した方の割合が増えることから、自身のキャリアプランを冷静に見直そうとする傾向が高くなるようです。
コロナ禍でも転職を検討すべきおすすめの業界とは
コロナ禍の影響で業績が大きく落ち込んだり、廃業に追い込まれたりした企業は多いです。しかし一方で、市場の変化に柔軟に対応して、急成長を遂げた企業も少なくありません。
転職を検討するうえでは、コロナ禍においても安定的な成長が期待できる業界に狙いを絞るのがおすすめです。ここでは、転職におすすめの業界について解説します。
ニューノーマルな働き方に変化した影響も!将来性のある業界とは
コロナ禍の転職は、業界の見極めが最重要です。転職する業界を決めるポイントは大きく2つあります。1つ目は、コロナ禍で業績を伸ばした業界であるかどうかです。そして、ニューノーマルな働き方への変化によるデジタル化の推進が、2つ目のポイントだと言えます。
以上を踏まえると、今後将来性のある業界は、IT・Web業界やデジタルマーケティング業界、医療業界などです。また、クリエイターやコンサルといった業界も需要が伸びています。一方で、介護業界や保育業界、税理士や会計士などの士業も、今後の将来性が期待できる業界です。
しかし、医療業界や士業などの業界で働くためには、国家資格が必要になるため、これからスキルを身につけるのは大変でしょう。そのため、これから転職を考える方には、IT・Web業界などがおすすめだと言えます。
IT・Web業界へ転職するポイント
IT・Web業界への転職をめざす場合には、業務に必要なスキルを事前に習得しておくと有利です。たとえば、エンジニアやプログラマであればプログラミング・スキル、WebクリエイターであればHTMLやCSSのスキルや、Illustrator、Photoshopのスキルを習得しておくと良いでしょう。基本的なスキルでも面接時に十分アピールできます。
また、基本的なIT・Webのスキルがある方は、資格を取得しておくのもおすすめです。「ITパスポート」や「MOS(Microsoft Office Specialist)」「基本情報技術者」などの資格を取得することで、客観的なスキルレベルを証明できるため、可能であれば取得しておきましょう。
まったくの未経験の方は、未経験でも可能な求人を探すこともポイントです。優秀なIT人材の確保に苦慮する企業も多いため、未経験者を採用しているところもあります。積極的に未経験でも可能な求人を探してみましょう。
転職希望者は売り手市場のうちに次の検討を
転職を検討しているものの、完全にコロナ禍から脱却できていない現状に不安を覚える方も多いでしょう。結論から言えば、転職する場合は早めに決断するべきです。ただし、本当に転職するべきか十分に検討しなくてはいけません。
転職する場合は早めに決断するべき
コロナの影響によって、大きなダメージを負った企業が多い半面、市場の変化に柔軟な対応ができたことで収益を大きく伸ばした企業が多いことも事実です。そのような企業では、優秀な人材の確保に力を入れているため、異業種からの転職者でも採用されやすくなっています。
したがって、企業の求人に比べて求職者の数が少ない売り手市場のうちに、より良い企業を見つけるのもキャリアアップの1つの手法と言えるでしょう。また、コロナ禍で行動が鈍化している転職希望者も一定数存在するため、現状をチャンスと捉えて動けるかどうかが成功のカギです。
本当に今転職するべきか考慮することも大切
転職を検討する場合は、まず自分の働いている業界が今後も継続して成長するかどうかを見極めることが大切です。コロナによる市場の変化に柔軟な対応ができた業種であれば、今後も収益を伸ばす可能性が高いので、別の業種への転職はよく検討する必要があります。一方、コロナの影響で業界自体が縮小傾向にある場合は、早めに別業界への転職を検討したほうが賢明でしょう。
ただし、20代~40代の方は転職に成功する可能性が高い反面、50代の方の転職成功率は著しく低い状況です。実際の転職市場において、50代でも可能という求人は多くあります。しかし、採用されるかどうかはまったく別の話です。そのため、早々に今の職場を辞めて、転職活動に入るのはリスキーと言わざるを得ません。
転職はできるタイミングを逃さないことが大切
【コロナ禍 売り手市場 転職のまとめ】
- 多くのワーカーが転職するきっかけはコロナ禍
- コロナ禍の転職は業界の見極めが非常に重要
- 転職希望者はコロナ禍を好機と捉えることも必要
コロナ禍の影響で市場が大きく変化したことをきっかけに、転職に踏み切る方が増えました。ニューノーマルな働き方に変わり、勝ち組企業と負け組企業が明確化したことも、別業種への転職を後押しするきっかけの1つだと言えるでしょう。
コロナ禍の転職は、業界の見極めが非常に重要です。IT・Web業界など、今後も継続して伸びる業界への転職であれば、コロナ禍をチャンスと捉え、早めに決断して動く必要があります。しかし、コロナによって縮小傾向にある業界への転職は、避けた方が良いでしょう。