「私って、このまま一生派遣で働き続けていくのかな…?」
新型コロナウイルス感染拡大の影響で時短勤務や出勤ができない状況を経験し、これからの働き方を見つめ直している方は増えているように思います。
次のキャリアを選ぶとき、選択肢はいくつかあるもの。
今回は「派遣先で正社員になる」という道に進んだ映像クリエイターと、担当エージェントにお話を聞いてみました。
長谷川さん(以下敬称略)/映像クリエイター
映像制作→ネイリスト→映像クリエイターとして派遣就業を経て、2020年7月より株式会社GA technologies(以下、GA technologies)で正社員になる。趣味はお菓子づくり。
片瀬さん(以下敬称略)/C&R社・担当エージェント
C&R社に新卒入社後、一貫してエージェント職を担当。
座右の銘:度胸は負けない、みんなの世話焼き長女
一直線ではなかった、映像業界でのキャリア
――派遣先で正社員になるまでの経緯をお伺いしていくにあたり、まずは、長谷川さんがこれまでどんなお仕事をされてきたかお伺いできればと思います。
長谷川 芸大で4年間アニメーションを学ぶ中で「ものづくり」を仕事にしたいと思うようになり、新卒でポストプロダクション(※映画、放送、CMの撮影終了後の作業を行うスタジオや製作会社のこと)に入社しました。ドラマ「勇者ヨシヒコ」のエンディング動画をつくったりと、やりがいがありました。
でも業界特性上、拘束時間とか業務量がものすごく多くて。何回か体調を崩して倒れてしまい、一度は業界を離れました。
でも友達から頼まれてウェディングムービーを制作した際に、「すごい」「ありがとう」とすごく喜んでもらえて。また映像の仕事をしたい気持ちが膨らんできたんです。
業界を離れて3年くらい経っていたので技術的にはブランクがあると思い、それでも始められる働き方を探すようになりました。
そのときはまだ「社員になりたい」とかあまり明確に思っていなくて、けっこう漠然としていましたね。
片瀬 長谷川さんは最初ネイリストと両立しながらスタートできるペースをご希望で、週3日から働き始められるお仕事を探していらっしゃいましたよね。その条件にぴったり合ったのがGA technologiesさんでした。ポストプロダクションでしっかりと映像づくりの基礎ができていたことがご評価に繋がり、ご就業頂くことになりました。
――ポストプロダクションの経験を活かして即戦力となったことが正社員化のきっかけでしょうか?
長谷川 いえ、経験をそのまま活かせた訳ではなく最初は苦労しました。
GA technologiesさんは不動産業界の会社で、動画編集というポジションで人が入るのは私が初めてだったんです。なのでどこからどう始めていいのか…手探り状態でしたね。
ポストプロダクションでは、映像をつくる監督がいて、仕事を受注する制作がいて、私自身は決まったものをつくるオペレーターに近い立場でした。
でもGA technologiesさんでは、制作手順から全て自分で考えて進めていきます。つくったものに対しては「いいね!」とご評価頂けたのですが、私としては逆にそれもプレッシャーに感じてしまって。ポストプロダクションでは修正箇所もやり取りもすごく多いのが普通だったので、出したものがそのまま通っていったのが初めてで驚きました(笑)。
――ご経験に裏打ちされた信頼感があったからこそとも思えますが、入りたての現場では心配になるかもしれないですね。
長谷川 今考えてみると、プライオリティをどこに置いているかの違いだったのかなと思います。
ポストプロダクションでのプライオリティは「監督の言うことを忠実に再現しているか」。都度変化する監督の要求にいかに正確に応え品質を担保していけるか、という部分でした。
GA technologiesさんが大事にしているのは、こんな映像がほしいと思ってから実際にそれができるまでのスピードだったりします。変化が早い会社なので、次々とつくりたいコンテンツが出てくるんですよ!なので、要点を抑えてサクサク進むように心掛けてやっています。
――まずは求められることに応えていくようにされたのですね。その他に心掛けていたことはありますか?
長谷川 他部署の依頼で動画をつくるときは、依頼部署の専門領域のことを教えて頂くなどして担当の方と接点をつくることを心がけていました。動画編集の仕事をしているとあまり席から動かないので、社内のどんな部署にどんな人がいて、どんな仕事をされているか、よくわからないんです。
誰に聞いていいかも分からないので、まず周りの方にどの方に聞けばいいか聞いて、人づてに話しかけにいくような感じです。
片瀬 それも、最初は縮こまってしまってなかなか長谷川さんの方から話しかけにいきにくかったんですよね。10月からご就業頂いて、年内はそんな感じだったような。
長谷川さんからも相談をもらっていましたし、GA technologiesからもそういう状況を聞いていました。
私は「職場の人に自分のことを知ってもらって居場所をつくる、仕事をしやすい関係をつくる」って、雇用形態関係なく働いていく上ですごく大事なことだと思っています。
なので、「周りの人から話しかけて攻略していくのはどうでしょう?」とお話をしつつ、様子を伺いながら後押しをしている感じでした。
コミュニケーションは人によって型やスタンスがあるので、こちらがアドバイスしても変わらない、変えられないというケースも多々あります。そんな中、長谷川さんはそういったところを率直に話してくれて分かち合えることもけっこうあって。
長谷川さんなりのやり方で周りの方と関係値をつくろうとしてくださっているのが感じられて、エージェントとしてはすごく嬉しかったんです。そこから徐々にGA technologies内での評価が上がってきて、他部署からも相談をもらう今の状態にまで繋がっていきました。
――長谷川さん、自分から話しかけにいくのは勇気がいりましたか?
長谷川 そうですね。でも片瀬さんからたくさん「話せてますか?」と連絡を頂いて(笑)、「あ、私もやらなきゃ頑張らなきゃ」と思って。
エージェントさんて入ったら「はい、いってらっしゃい」かなと思っていたんですけど、その後もたくさんお電話を頂いて心強かったです。
いよいよ面接、聞かれたのは「今後のビジョン」
――ご評価を頂けるようになってから社員化のお声がかかるまでは、どのようにお話が進んだのでしょうか?
片瀬 2020年4月に大きな法改正(※改正労働者派遣法に関する詳細はこちら)があったので2月頃に今後のキャリアについて面談でお話し、そのとき長谷川さんから1年後くらいを目途に社員になれたら嬉しいと聞いていました。そこに向けて目線合わせをしていたら、その後どんどんコロナの影響が大きくなってきて。
状況的にパフォーマンスの良い方でも契約更新されない可能性が0ではなかったので、派遣先には早めに確認をしました。そうしたら先方から「正社員化を考えてます」というまさかのお返事でした!
長谷川 私が所属していた部署はその頃すでにリモート勤務に移行していたのですが、私自身はむしろそのとき契約がなくなるのでは?という不安の方が大きかったんです。予定していた社内イベントが中止になり、つくる動画もなくなり、手持ち無沙汰になってしまって。「あれ、私どうしよう」って。なので、片瀬さんから電話がきた時も怖くて…!
片瀬 その電話で「正社員として迎え入れたいってお話が来てます」とお伝えしましたね。
――長谷川さんは正社員化のお話を聞いてどんなお気持ちでしたか?
長谷川 めちゃめちゃプレッシャーでした!
GA technologiesの皆さん、特に中途の方はプロフェッショナルな方が多くて、私はその域に達していないと思っていたので…。思っていたよりずっと早い段階でお声をかけて頂き、驚きました。
片瀬 今だから言えますが、まだ先の話だと思っていたので私もびっくりしました(笑)。
その後、人事面談を1回経て条件提示という流れです。
――人事面談ではどんなことをお話されたのでしょう?
長谷川 今後どうなっていきたいかやこの会社で何をやっていきたいかといった私自身のキャリアビジョンに関する質問と、あとは企業の社風やスピリッツに共感できそうか、といった内容でした。
片瀬 派遣社員の方が直接雇用に切り替わるケースを他にも担当したことがありますが、他社の面接でもこういった質問は多いです。スキルについては、現場で一緒にお仕事されている方が申し分ないと社内推薦してくれるケースが多いので、面接では社風や今後の希望・ビジョンが会社とマッチするかすり合わせることが多いですね。
――うまく答えられましたか?
長谷川 答えられなかったです(笑) 正直「落ちたかも…」と思いました。
面談と聞いていたのでラフにお話すると思っていたのですが、実際はけっこう面接に近い雰囲気だったんですよね。リモート期間でオンライン面談だったのも、余計に緊張しました。
片瀬 面接の後、なかなか結果の連絡がこなかったんですよね。
私は8割方大丈夫だろうと思っていたのですが長谷川さんがそう仰るので、面接後1週間くらい先方に何度も何度も問合せをしてしまいました(笑)。
そうしたら採用に向けて就業条件を調整してくれていたことが分かり、すぐに長谷川さんにお電話でお伝えしました。
長谷川 そのお電話でやっと「あ…正社員になれるんだ…」とほっとしました。
キーワードは「変化」
――改めて振り返ってみて、正社員化に至った要因は何だったと思いますか?
長谷川 うーん、そうですね…。転職ということは前に違う仕事をしていたじゃないですか。でも、別の会社に入ったら前の仕事とは違うものを求められる。
その違いにいかに対応して自分自身が変化していくかが大事だったのかな、と思います。
特に私が入った職場は常に変化を続けて成長していく環境だったので、「置いていかれないように変化についていこう」「自分自身も新しいものを考えてつくっていこう」ということは意識するようになっていきました。
片瀬 たしかに、長谷川さんとご一緒した9か月間は法改正、コロナウイルスと世の中的にも大きな変化が続き、そんな中での異業種からの転職に社員化ですから、毎月のように本当に色々なことがありました。
でも長谷川さんはその都度自分も柔軟に変化しながら、しなやかに対応されていました。
周囲からの働きかけがきっかけになったことはあるかもしれませんが、
それを受けてどうするか、長谷川さん自身が決めて進んできたからこそ今に繋がったんだと思っています。
個人的に寂しい気持ちはありますが、これからもきっとご活躍されるんだろうなと期待も大きいです!
――長谷川さんの場合は「自分から変わっていったこと」が決め手になったのですね。
長谷川さんの前向きな動きとそれを裏から支える片瀬さん、お話をされている時も息がぴったりで素敵なコンビでした。本日はありがとうございました!
撮影:SYN.PRODUCT/企画・取材・編集ライティング:澤田萌里(CREATIVE VILLAGE編集部)
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