2020年に20周年を迎える『デジモンアドベンチャーシリーズ』。

最新作『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』で監督を務めたのは「ペルソナ4ザ・ゴールデン」「ペルソナ3」「双星の陰陽師」「キノの旅」 などを手掛ける田口智久さん。本作が初監督作品です。

「無限大の夢のあとの、やるせない世の中」に生きる若手クリエイターに向けて、田口監督のキャリアについてお伺いしました。

田口智久(たぐち・ともひさ)
アニメーション監督。演出家。代表作に「ペルソナ4ザ・ゴールデン」、「双星の陰陽師」、「キノの旅-the Beautiful World- the Animated Series」など。

アニメーション業界に入ったら、仕事を「投げ出さない」意識を。


――アニメーション業界を目指したきっかけについて教えてください。

学生時代は実写映画のクリエイターになりたくて、自主制作の映画を撮っていました。しかし、実写の映像制作をしている企業が当時は少なかったんです。

結局大学4年生の2月まで就職先が決まらず、大学の就職支援課でAICの演出助手の求人を目にして「実写でなくても映像に携われるなら…」と面接を受けたことがアニメーション業界に入ったきっかけでした。

――その後にアニメーションの魅力に開眼していくわけですね。

そうですね。最初は『そらのおとしもの』(2009)などで制作進行を担当していました。アニメーション業界の「進行管理」の仕事は主に3つあります。

  • 仕上げ工程の進捗と品質管理
  • 制作クリエイターの折衝
  • 原画の集配

この中でも「進捗管理」が最も大変でした…。

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例えば、アニメーターさんから指示どおりのカットが納品されないこともありました。

一方、撮影現場では監督から「一体、いつカットが仕上がってくるのか」と聞かれて双方の間で対応に困ったことが多々ありました。

クリエイターに指示どおりのカットを期限内に納品してもらえるようなコミュニケーション・折衝能力が問われるポジションだと思います。

進行管理時代に最も記憶に残っていることは、自転車でカットの回収をしていたことです。
理由があって当時、車が運転できなかったので、車の運転に比べてかなり体力が必要でしたが、不思議なことに「嫌な記憶」ではないんですよ。

この経験から自転車でいろいろな場所に出かけることが増えて、ラーメン屋めぐりが趣味になっていきましたから(笑)。

――物事をプラスにとらえる思考は、アニメーション業界のクリエイターには必要ですか?

必要だと思います。そして、まずは仕事を「投げ出さないこと」ですね。

仕事を投げ出してしまうと、そこで仕事に対する熱意が枯渇してしまいます。そして最終的には「自分の夢を諦める」決断につながってしまうと思うんです。

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――アニメーション業界で活躍できるクリエイターとはどのような人なのでしょうか?

アニメが好きなだけではなく「“仕事”が好き」と思える人が、向いていると思います。能力を持っていながらも疲労から自分の夢を諦めてリタイアしてしまうクリエイターもいますから。

「アニメーション」より「仕事」を好きになる


――進行管理・演出のポジションに必要なスキルは、何だと思われますか?

僕は不出来な制作進行だったので、当時を知っている方に怒られそうですが、これからアニメーション業界を目指す方の参考に少しでもなるなら…(笑)。

制作進行は人と人とのコミュニケーションをどれだけ円滑に取れるかが重要だと思います。

クリエイターと仲良く仕事をするのではなく、仕事として各クリエイターの進捗を追いかけ、ちゃんとカットを納品してもらうまで踏み込むことが重要です。

――演出はいかがでしょうか?

シナリオをアニメーションへ最適化していく仕事なので、自己流で成立する可能性がある仕事です。

しかし、キャラクターの心情からビジュアルや画の並びを決められるような強いビジョンがないと、脚本がもっていたメッセージを反映しきれない作品になってしまいます。

そのようなことを防ぐためには表現方法を常に追求して自分のスタイルにする必要がありますね。

ちなみに、僕は演出を担当していた時期が一番楽しかったです。

進行管理・演出、そして・・・監督へのキャリアアップ

――そして今回の作品では監督を担当されました。どのような経緯で抜擢されたのでしょうか?

『デジモンアドベンチャー tri.』を手がけている最中にプロデューサーの木下陽介さん(東映アニメーション)に声をかけていただきました。アニメ『デジモンアドベンチャー』シリーズは僕の学生時代からテレビで放映していました。本作は『デジモンアドベンチャー』20周年。さらに初監督の大任なので、声をかけていただいた当初は大きなプレッシャーがありました。

――プレッシャーがあるなか、監督作品として注力したポイントを教えてください

本作『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』はオリジナル作品と地続きであり『デジモンアドベンチャー』の歴史を作ることだと考えていたので、新しいストーリーを作るのではなく、いままで続いてきたストーリーを意識して着地させたことがポイントです。

具体的にはアニメ『デジモンアドベンチャー』シリーズは主人公の太一たちが小学生時代からスタートして、本作では大学生になっているので、彼らが成長過程を想像しながら作る必要がありました。

――監督に必要な要素は何だと思いましたか?

監督は自分が描く作品の理想、つまり「わがまま」を多くのスタッフに納得してもらわなくてはいけません。

制作に関する疑問がスタッフから投げかけられた場合、即座に反応し、コミュニケーションをとる必要があります。

加えて、昨今のアニメ業界は本数も多いですし、ひとりが何本も掛け持ちしながらやっている状況の中で、監督の作品イメージを汲んで仕事ができる人たちは、稀だと思っています。

たとえ、自分のイメージと異なるカットが上がってきたとしても作品の最終責任者として指揮を取れるくらいの責任感も必要です。

監督に抜擢されてわかった”仲間”の大切さ

――『デジモンアドベンチャー』は太一をはじめとした“選ばれし子どもたち”と”デジモン”のチームワークの物語ですよね。本作で最も協力してもらった、スタッフがいらっしゃれば教えてください。

みなさんに本当に助けてもらったと思います。その中でも今回アニメーションのキャラクターデザインと総作画監督をやっていただいた立川聖治さんには特に協力していただいたと思っています。

総作画監督は立川さんしかいないのですが、プロジェクトが動いた当初「全1500カットを見るのは無理ではないか」と話していました。ほとんどのカットにキャラクターが出ているのでキャラキターの心情に演技が合っているかなど、チェックするポイントも多く、大変な業務です。

僕も「最大でも3分の1の500カットを見てもらえたら…」と考えていました。

しかし、立川さんは僕の期待した2倍の1000カットに目を通してくださったんです。

――同業を目指す方の教科書的な場面はどこでしょうか?

アニメーションなので「作画がすごい…!」と感動してアニメーション業界を目指す人も多いと思います。

しかし、作画以外にもアニメを構成している要素はあります。今回は、背景やキャラクターの色味もずいぶんと心情やシチュエーションに応じて変えているので、心情・シュチュエーションによって変化するキャラクターの様子に注目してほしいですね。

――最後にアニメーション業界を目指す”選ばれしクリエイターたち”へメッセージをお願いします。

これは持論なのですが、成功した誰かに憧れてばかりではなく成功した自分のビジョンを思い浮かべてアニメーション業界のクリエイターを目指すと、理想と現実の齟齬がなく、クリエイターとして成長できると思います。

加えて世界規模でアニメーション業界をみると、日本のアニメーション技術を取り入れた海外のアニメーション作品のレベルが上がってきていることを感じます。

だからこそ、愚直に努力することで日本国内だけではなく、世界のアニメーション業界をけん引するような次世代クリエイターが出てきてくれたら嬉しいですね。

インタビュー・テキスト:鴇田祟/撮影:SYN.PRODUCT/編集:大沢 愛(CREATIVE VILLAGE編集部)

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(c) 本郷あきよし・東映アニメーション

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『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』作品情報

“選ばれし子ども”が“大人”になる時、迫られる大きな選択。
太一とアグモンたちが出会い、デジタルワールドを冒険した夏から10年以上が経過した2010年。世界中の“選ばれし子どもたち”は次第にその存在を認知され、現実世界にデジモンがいる風景も珍しくなくなっていた。太一は大学生となり、ヤマトたちもそれぞれ歩むべき道を見定め、自身の進路を進み始めていた…

変えられぬ宿命を前に、太一とアグモンの”絆”が導き出す、自分たちだけの答えとは?

公開日

2020年2月21日(金)

配給

東映

スタッフ

原案:本郷あきよし 監督:田口智久 脚本:大和屋 暁
スーパーバイザー:関 弘美 キャラクターデザイン:中鶴勝祥 デジモンキャラクターデザイン:渡辺けんじ
アニメーションキャラクターデザイン:立川聖治・熊谷哲矢・西野理恵・関崎高明 音楽:富貴晴美
総作画監督:立川聖治 プロップデザイン:吉田大洋 美術監督:岩瀬栄治 美術設定:大平 司 色彩設計:合田沙織
撮影監督:川田哲矢 編集:坪根健太郎 音響監督:飯田里樹 音響効果:古谷友二 録音:松田 悟 アニメーションプロデューサー:漆山 淳
オープニング曲:和田光司 挿入歌:宮﨑 歩 エンディング曲:AiM
アニメーション制作:ゆめ太カンパニー 配給・宣伝:東映 製作:東映アニメーション