「子供の頃から何度か日本に来たことがあったんですが、大好きな日本のゲームやアニメに囲まれて、すごく嬉しくて楽しくて。だからいつか日本に住んでみたいと思っていたんです」
スティーブン オーバーハイム ジュニアは2013年からデジタル・フロンティアで3DCGアニメーターとして活躍している。大好きな日本のコンテンツを追いかけ、独学で日本語を学び、CG制作者を目指し18歳で来日。そして“好き”と“夢”を手に入れた。
「仕事を始めた頃の一番のモチベーションは大きなタイトルに参加したいということでしたが、いまは作品のクオリティーを自分なりに上げたい、いいものをつくりたいと思うようになりました」

 

■ 日本の作品が好きだった

現在デジタル・フロンティアに所属し、3DCGのアニメーターとして、映像、遊技機、ゲームなどさまざまな作品に参加しています。自分はグアムに生まれハワイで育ちました。父がアメリカ人で、母が日本人です。ずっと日本のゲームや映像作品が好きで興味がありました。特に日本のゲームが大好きで、NINTENDO64の「ゼルダの伝説 時のオカリナ」や「ファイナルファンタジー」シリーズは印象深い作品です。日本語はゲームで覚えました。日本製のゲームだから日本のほうが発売が早いので、すぐにプレイしたくてよく親戚に送ってもらっていたんですが、説明書が日本語なので読めないんですね。それでゲームをするために日本語を勉強しました。漢字も一生懸命調べて、全部独学です。家でも母と会話する程度で、4人兄弟なんですけどだれも日本語を話せません。ゲームのためにゲームで日本語を学んだといった感じです。
日本のアニメもよく見ていました。親戚にしょっちゅう録画をお願いしたりして。好きだったのはガイナックスのアニメーションです。「エヴァンゲリオン」「天元突破グレンラガン」や「FLCL(フリクリ)」など、動きが派手なところがすごく気に入って、どうやって描いているんだろう?って思ってました。アニメーションにも興味があり、絵が得意というわけではないんですが、パラパラマンガをよく自分でも描いていましたので。
とにかくゲームが好きだったので、小学生の頃から将来はゲームづくりに関わりたいと思っていました。それは中学、高校生時代も変わりませんでした。家のパソコンを4、5歳頃から触っていたので、独学でフラッシュを勉強しゲームをつくったりもしていました。そのうちにCGにも興味を持つようになりました。一番のきっかけは、「ファイナルファンタジーⅦアドベントチルドレン」(05)でした。アクションシーンに感動して、CGはゲームにも重要な要素ですし、CG制作を、できれば日本でやりたいと考えるようになりました。

 

■ 18歳で来日

高校卒業後の進路を考えたときに、CG制作者を目指しカリフォルニアに行くか、ずっと憧れていた日本に行くかで悩んだんですが、一番の決め手は食べ物でした。ハワイは食生活が日本に似ていてみんな白米を食べるんですが、アメリカ本土に行くとあまり白米が出ないんです。そんなの無理だって(笑)。
2年で技術を学んで二十歳にはもうプロとして仕事をしたいと考えていたので、大学ではなく専門学校を志望しました。それで日本の専門学校を何校か見て回り体験入学にも参加し、日本工学院専門学校クリエイターズカレッジCGクリエイター科(現CG映像科)に決めました。毎年留学生を受け入れている実績もあり、サポートも手厚かったし、何よりCGを学ぶための設備が充実していました。
それで来日し祖母の家に下宿して、2011年4月から日本工学院で学び始めました。日本工学院での毎日はすごく刺激的でした。ソフトのメニューやマニュアルは英語なのでみんなより有利でしたし、けっこう負けず嫌いなので、チュートリアルをたくさん探って、同級生の中でだれよりもできるようになるぞ!と意気込んでました。自作でパソコンをつくり、時間の限りCGソフトを触っていました。
日本工学院でやる気のある友だちと出会えたこともとても大きかったです。絶対に2年で技術を身につけてプロとして働くんだという目標をしっかり持った仲間と一緒に放課後も残って互いに教え合いながら作品づくりに励んでいました。卒業作品のフルCGショートアニメーションは優秀作品賞を取り手応えも感じられました。刺激し合える仲間と出会えたし、やる気さえあればいくらでもCGが学べる環境と設備が用意されていた。日本工学院を選んで本当によかったと思いました。
日本に来てからは作品も見放題、やり放題で本当に幸せでした。この会社こんな作品もつくってるんだ、こういう作品をつくりたいと、リサーチをしながら楽しんでいました。就職活動は1年生が終わる頃から始めました。自作の3DCGアニメーションをDVDにしていろんなところに送り、説明会があるときはタブレットを持っていって実際に見せたり。英語もできますよってアピールしてましたけど、最初はみんな信じてくれませんでした(笑)。

© 2015 noprops・黒田研二/『青鬼 ver.2.0』製作委員会

映画「青鬼 ver.2.0」
怪物が現われると噂される屋敷「ジェイルハウス」に集まった4人の若者。閉じ込められた彼らを奇怪な青い化け物“青鬼”が襲う……。2014年に公開され大ヒットしたフリーホラーゲーム映画『青鬼』待望の第2弾。前作同様、デジタル・フロンティアが制作を手がけた。

 

■ 本当に好きなんです

デジタル・フロンティアは第一志望でした。ゲームをはじめ、映画やアニメなどいろいろ手がけているし、作品のクオリティーも高かったからです。現在入社3年目です。時間に追われ、大変なときもありますけど、やりがいはすごくあります。最初に参加した作品が、ゲーム「龍が如く維新!」でした。イベントで流れる映像のキャラクターたちの動きとアニマティクスを担当しました。好きなシリーズだったのですごく嬉しかったです。
最近見た作品で感動したのは「ジュラシック・ワールド」。クライマックスの2体の恐竜が出てくる場面はすごくて、自分でも「ジュラシック・ワールド」のアニメーションを再現したりしています。一番意識していることは、キャラクターのニュアンスをきちんと出すこと。いつも見てくれる人のことを考え、こうしたらもっと楽しんだり喜んでくれるかな?と思いながらつくってます。自分が本当に好きでずっと作品をやったり見てきたから受け手の気持ちがすごくわかるんです。もちろんいまもゲームはやってます。つくって、発売して、買って、やって、クリアして、エンドロールのクレジットで自分の名前を確認して(笑)。すごく楽しい。本当に好きなんですよね。
アニメーションをつくる際に自分でキャラクターの演技をしてビデオ撮影することがあるんですけど、自分がキャラクターの演技をしっかりできないとキャラクターもきちんと演技できないんですよ。だから演技の勉強もしています。アメリカで活動したいという思いも少しはありますが、10年ぐらいは日本でやってそれから考えようと思っています。日本のほうが自分の好きな作品に参加できる気がしますし、絶対的に経験値を高く積めると思います。海外でCGをやってる友だちもいるんですが、日本は労働時間が長いぶんすごくスキルが伸びるんです。アメリカはスキルを磨くところではなく、スキルを提供するところだと感じています。将来的には、CGが好きで一生懸命学んできた経験を活かし、CGを教えることができたらとも思っています。

© 2015 noprops・黒田研二/『青鬼 ver.2.0』製作委員会
© 2015 noprops・黒田研二/『青鬼 ver.2.0』製作委員会

映画「青鬼 ver.2.0」Blu-ray&DVD
2015年11月20日発売予定。
発売元:『青鬼 ver.2.0』製作委員会 販売元:TCエンタテインメント

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