専門学校卒業後、数社のゲーム開発現場でエフェクト制作の経験を経てクリーク・アンド・リバー社へ入社。現在はエフェクトの第一線で活躍しつつプロジェクトのディレクション業務も行うVFX STUDIOのアートディレクター福嶋さんに、ゲームエフェクトデザイナーのキャリアについてお聞きしました。
業界の今後や自分のキャリアについての思いが一致した
――クリーク・アンド・リバー社にはどのような経緯で入社しましたか?
まずクリーク・アンド・リバー社で行っているエフェクトツールのイベントをきっかけにVFX STUDIOの責任者からお話をされたのが、会社を詳しく知る初めての機会でした。
その際に、現状のエフェクト制作の現場ではクライアントのニーズに応えることができるクリエイターがかなり不足しており、クリーク・アンド・リバー社はそのニーズに応える為に無料のアカデミーを運営していること、クリエイターを増やす事で業界を良くしようとしているという考えを聞き意気投合しました。
そしてクリーク・アンド・リバー社では、自分のやりたいこと、働く形を実現出来るということを丁寧に説明していただいたことで、普段から考えていた自ら現場の第一線にいながら、自分が今まで得たスキルや経験を若手に教えていきたいという想いが実現できそうだと思い、転職を決意しました。
――育成するという考えがクリーク・アンド・リバー社と合致していますが、そこに至った経緯を教えてください
まず、専門的にゲーム向けのエフェクトを学べる学校というものは、これまでほとんど無い状態でした。。この状況は今現在もあまり変わっていないと思います。
今でこそ共通のゲームエンジン、エフェクトツールが多くありますが、ちょっと前まではゲームエンジンは各社独自のものが多く、それに紐づくエフェクトツールというものは各社で違っていましたので、新しい会社に行く度にゼロからツールを覚えていました。もちろんネットで検索してもノウハウなどが見つかることはほとんどありません。
自分の場合も当初、現場で少し先輩に教えてもらった後は手探りで学んでいるような状態だったのを覚えています。
その後、色々な会社に派遣されて行くうちに気づいたのが、業界内でエフェクトデザイナーは圧倒的に少なく、逆に需要は高まっているということでした。
前述の通りエフェクトを学ぶ土壌は非常に薄いということもあり、中々エフェクトデザイナーが増えない現状を見直してこれまで自分が貯め込んだものを使って自分のチームを育ててみたいという思いが強くなりました。
はじめの質問の答えと若干被りますが、私が持っていた前述の想いとクリーク・アンド・リバー社の担当者さんの想いが合致しVFX STUDIOを立ち上げ、さらにアカデミーで若手を育成することになりました。
常に進化する環境の中でチャレンジ
――技術の発展により、10年前と比べて想像したものを作りやすい環境が整ってきている実感はありますか?
10年前にはできなかったようなことの多くが、今ではできるようになり、自分の想像とのギャップが小さくなっている実感はあります。
以前は何をするにもプログラマーとの連携が必須でしたが、現在ではツール側での役割吸収が非常に便利になってきました。
これまでプログラマーしか出来なかったようなことがアーティスト側でも出来るようになったので、連携は必須ではなくなりとても便利になりました。しかし逆にアーティストの学ぶことも相対的に多くなりましたので、以前より大変な部分も増えています。
ただ、ツールの進化でクリエイティブな箇所に、より集中的に取り組みやすくなったとは思います。
――作品を作っていく中で、エフェクトの難しさや面白さは何ですか?
私はゲームにおいてエフェクトは必ずしも必要ではないという考えがあって、ちょっと誤解されやすい表現ですが、これはゲームのロジックや遊びに派手なエフェクトが必ずしも必須であってはならないという事と、ユーザーがゲームを楽しむという事を阻害する存在ではあってほしくはないという考え方に基づいています。
エフェクトの難しいところはそういった必要性と存在感のバランスで、こういった部分はできるだけプランナー、プログラマーの方々と協議して作成しています。
その難しい部分をクリアした上でユーザーの「気持ち良い」「痛い」を下支えし、ゲームの面白さを最大限に引き立てる部分や、純粋なビジュアルとして「綺麗」や逆に「不気味」等、感情を想起させることでユーザー体験の満足度を向上させることができるところはエフェクトの最大の魅力だと思っています。
また、シェーダーによる見た目の変化の表現やライティング、さらにUIのような表現を任されたり、場合によっては背景丸ごとをエフェクトで表現するようにお願いされたりと、範囲が他のセクションに跨りつつとても広いので様々な表現をチャレンジできるのもとてもやりがいがあります。
若手の育成と自分自身のスキルアップ両方を目指したい
――5年後にどんな自分になり、どう活躍していきたいですか?
今、若手の方々も5年後にはだいぶ成長していると思いますが、更に成長した方たちと共に学んで、負けずに一緒に仕事をしていたいと思っています。学ぶことをやめるとすぐに置いて行かれてしまう業界なので、常に走って行きたいです。
新しいものにも挑戦して行き「この人だから頼める」「このスタジオに頼みたい」と言っていただける、クライアントに応え続けることができる存在でいたいです。
また最近はゲーム内だけではなく、現実のイベントなどでもユーザーのアクションに対して反応を返すようなインタラクティブなコンテンツも増えていて、例えばVR、MRやプロジェクションマッピングを取り入れたアトラクション等が多くなり、実際にそういったお仕事も受けるようになりました。
そういったコンテンツが増えると反応に対する記号としてのリアルタイムエフェクトの需要がより高まってきますので、この先は画面の中だけではなく、現実の環境に対してのエフェクトというものにも挑戦していきたいです。
このトレンドがさらに高まっていけば、リアルタイムエフェクトを求めるクライアントも増えていくと思うので、もっと能力を高めて5年後にはさらに広い分野でも活躍していたいですね。
――どんな人と一緒に働きたいですか?
自分の価値を高めるために、常にトレンドや新しいことにアンテナを張って自分のモノにするとか、改善点を常に探して解決策を得るために動くというのはある程度当たり前になっています。でも基本的なものとして「伸びたいからこうしたい/こうする」という意思がある人がいるといいですね。
表現力、技術、効率、評価、いずれにおいても伸びたいという部分に関して行動出来る人は一緒に働いていてとても刺激を受けます。
――最後に何かひとことお願いします
AAAクラスのIPのお仕事をコンスタントにいただけるようになったり、アカデミーの方も入社して一線で仕事ができるようになったりと、VFX STUDIOも順調に成長してきており、数年後がとても楽しみな状況です。
一緒にチームを大きくしていきたい、色々なプロジェクトを経験して成長したいというスタンスの人は一緒にお仕事できればと思います。
またVFXのアカデミーもエフェクトを学んで業界に就職したいという熱い想いを持っている方をキャッチアップできる体制が整っているので、興味のある方は是非応募してみて下さい。私はアカデミーの講師はやっていませんが、時々様子を見に行っていますので見かけたら声をかけてくれると嬉しいです。
――ありがとうございました