注目企業の中の人によるコラム
Pivotal Labs Tokyoの伊藤さんによる2回目のコラムは、ユーザーインタビューについてです。
ユーザーを知るためにとても有効な手段の一つですが、デザインとは別のスキルを求められます。
よくある失敗例と、伊藤さんが経験からつかんだ成功のコツを寄稿してくれました。
今後、ユーザーインタビューをする機会のある方は是非参考にしてみてください。

こんにちは。Pivotal Labsのプロダクトデザイナーの伊藤えりかです。

Pivotal Labsは、クライアントのチームと一緒に開発をすることを通して、アジャイルチームの育成をサポートするコンサルティング会社です。2015年に東京オフィスが開設されてから、ラクスルなどのスタートアップからYahoo! JapanやANAといった大企業まで様々な規模、業種の組織へ向けたリーン・アジャイル開発の支援を行なっています。

前回の記事では、Pivotal Labsのアジャイルチームにおけるデザイナーの役割は「ユーザーに寄り添うこと」だと紹介しました。チームの中で、デザイナーがユーザー視点に立って意思決定に関わることで、プロダクトからユーザー視点が抜け落ちないようにすることができると考えます。

本当のユーザー視点とは、「ユーザーの住む世界を理解し、具体的に困っていること、イライラすること、または嬉しいことやその理由を想像できる状態」です。ユーザーのことを考えているだけでは想像の域を超えないため、定期的なユーザーインタビューが必要です。時間の経過と共に実態からずれていってしまうことが多々あるからです。

とはいっても、インタビューはUIデザインとは別物のスキルが必要なので、なかなか難しいですよね。そこで本記事では、私たちが数々のインタビューの中で経験した「あるあるな失敗」を通して、より良いインタビューをするためのコツを3つご紹介したいと思います。

インタビューでよくある3つの失敗

インタビューやリサーチの方法は様々ありますが、ユーザーを深く理解するためには、一対一で話を聞くデプスインタビューがオススメです。私たちは、月に10人前後にユーザーインタビューを行っており、そんな中で私自身が何度もやってしまった失敗を通して、改善方法をご紹介します。

1. いきなりギアを全開にしてしまう

「せっかくユーザーと話せるのだから、しっかり深掘りしなければ!!」と意気込むあまり、インタビュー開始直後から突っ込んだ質問をしてしまう、、というのはありがちな失敗です。開始直後から「このプロダクトのどこが使いにくいですか?」などと聞いてしまっていませんか?ユーザーが身構えてしまわないように、ゆるやかに主題に入っていくことが必要です。

TIP 1: 簡単な質問から始める

限られた時間だからこそ、インタビューの導入は余裕を持って簡単な質問から始め、じわじわとペースを上げるようにしましょう。冒頭では、プロダクトに関して「あまり深く考えないでも答えられる事」を、出来るだけ雑談に近いような形で聞くのがポイントです。

例をいくつか挙げてみます。

  • ECプロダクトの場合:「最近買いたい物ってありますか?」や「最近どんなものを買いましたか?」など
  • 乗り換え案内系プロダクト場合:「ここまでスムーズに来れましたか?」や「ここまでどんな経路で来ましたか?」など
  • 業務系のプロダクトの場合:「昨日はどんな1日でしたか?」や「いつも何時から何時までお仕事してるんですか?」など

このように、直近の出来事や普段の様子から質問を始めるとユーザーの緊張もほぐれやすくなり、次の質問に繋げやすくなります。

2. プロダクトの説明をしてしまう

インタビュー中、色々な話ができた!と思っても、よくよくメモなどを振り返ると「あれ?思ったよりも内容が無いな、、」ということ、ありませんか?私自身、インタビューを始めたばかりの頃は、ユーザーよりも自分のほうがたくさん話してしまっていた、というケースがよくありました。気がつくとプロダクトの説明をしてしまっていた、、ということはないでしょうか。インタビューでは、全体の8割くらいをユーザーが話している状態が理想的です。

TIP 2: 質問には質問で返す

プロダクトの説明を始めてしまうきっかけは、インタビュー中にユーザーから受ける質問ということが多々あります。そこで、ユーザーに「これってどういう意味ですか?」や「どうやって使うんですか?」と聞かれたときは、説明したい気持ちをグッと堪えて、「○○さんは、どういうことだと思いますか?」といように質問をそのまま返してみましょう。そうすることで、自分が話してしまうことを避けられますし、ユーザーの質問の意図やプロダクトへの感想を深掘りすることもできるようになります。

3. 誘導尋問のようになってしまう

「インタビューで期待している結果を得たい!」と思うあまり、無意識のうちに誘導的な質問をしていた、、というのも良くあるケースです。ユーザーが「はい / いいえ」で答えられる質問は、誘導的な質問となっているケースがほとんどです。

具体的な例をいくつか挙げてみます。
このアプリは使いやすいですか?
以前のデザインより今のデザインの方が良いですか?
このアプリはよく使いますか?

このような質問からは、本当に使いやすいのか?や、どういった理由で使いやすいのか?が分からないので、プロダクトの改善に繋げられません。そうすると、もっといい解決策があるのに、今あるもので満足してしまったりします。

TIP 3: 話題を広げる質問をする

なぜ?やどうして?といった言葉で始まる質問にすると、ユーザーの言葉を引き出しやすくなります。また、最近の出来事に絞って話を聞くのも、具体的なエピソードを引き出せるので多くの学びを得ることができます。

先述の誘導質問は、下記のように言い換えることができます。
1&2 このアプリを一通り触ってみて、どうでしたか?
3. 最後にこのアプリを使ったのはいつですか?

そこからさらに「それはどうしてですか?」や「その後はどうしましたか?」と質問を繰り返すと、どんどんと深堀ができるようになります。相手の好きなように相手の言葉で話して良い、といった雰囲気を作りましょう。正にユーザーの声ですね!

まとめ

このように、インタビューを通して「ユーザー視点」に立つことができると、より良いデザインがつくれるようになります。ご紹介したTipsを導入することで、より深くユーザーの話を引き出すことができます。さらにデザイナーが、その学びをメンバーと共有することで、チーム全体がユーザーを理解した上でそれぞれの観点からプロダクトをより良くすることができるようになります。

また、時間の経過と共にユーザーの実態からどんどん離れていってしまうことが多々あるというお話をしました。ユーザー視点に立つことはもちろんですが、ユーザー視点を持ち続けることが最も大切です。私の経験ですが、ユーザーリサーチを繰り返すことでデザインの根拠がはっきりするので、チームとのコミュニケーションもデザイン作業自体もやりやすくなったと感じています。今回ご紹介した Tips を参考に、継続的にインタビューをしてチームみんなでより良いプロダクトを作っていきましょう!

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