フリーランスクリエイターのお話しをお届けする「新時代のキャリア指南」第二弾は独特の画風と毒の効いたギャグが特徴のWeb漫画家・やしろあずきさん。
あるきっかけでファンから届くようになった、大小様々な「カラーコーン」の画像や日常を描いたWeb漫画をTwitterで目にした方も多いのではないでしょうか?
今や「カラーコーンの人」と言われているやしろさんですが、実は元・ゲームプランナー。逆境を跳ね返すことで生まれた、やしろあずきさんのクリエイター人生についてお話を伺いました。
Web漫画家。
厨二病、社畜、家族ネタなどを題材にした作品で活躍。
株式会社wwwaap執行役員、株式会社グランツアセット執行役員等も務める。
また、誕生日をきっかけに自宅に大量の三角コーンが届くようになったことから、「三角コーンの人」としても知られている。
社会人のコンプレックスからWeb漫画を始める
――今はWeb漫画家「やしろあずき」のイメージですが、キャリアのスタートはゲームプランナーだそうですね。
ゲーマーだったので、ゲームに関わる仕事に就けたらいいなと思っていたんです。そんな中、東京工科大学在学中の2011年、CEDECのペラコン(※)に応募した『途中下車推理 ~次の降りるのはお前だ!~』でベスト・アマ賞を受賞したことで、ゲーム会社数社から声をかけていただきました。
就活をしていなかったので良い機会だと思い、声をかけていただいたゲーム会社の中の1社に入社しました。実はこのコンテストで受賞した企画書、締切り前の約20分間で書いた企画書だったんですよ。コンテストの参加も友人に勧められて決めましたし、本当に幸運だったと思います。
※ゲーム開発者会議「CEDEC」で実施される、A4一枚の企画書を募集するコンテスト(参照:https://cedec.cesa.or.jp/2011/event/challenge/peracon/result.htm)
――ゲーム会社ではどのような仕事をされていましたか。
主にゲームプランナーとして4年ほど働いていました。スマートフォン用ゲームのフィールドのレベルデザイン、武器のラフデザインやシナリオ制作など、数字データに関わる仕事以外は幅広く担当しました。ゲーム会社でのキャリアの後半はゲームディレクターの業務も担当しました。
――そこからWeb漫画家へ転身された理由は何だったのでしょうか。
ひとことで言ってしまうと「会社員」が自分に合う働き方じゃなかった…。加えてゲームプランナーの仕事は各職種とコミュニケーションを取る必要があるのでより「チームプレイ」が求められる職種です。でも、僕はひとりで面白いものを考えて、それをそのまま世に出していく「個人プレイ」が向いているのではないか、と考えるようになったんです。それで、会社に勤めながら漫画を描くようになりました。
――なぜ「個人プレイ」、つまりフリーランスが向いていると考えたのでしょうか。
企画を自分の意図したように進められない、自分のスケジュールで動けない点に悩みがあったことが大きな理由ですね。「面白いゲームを作りたい!」という思いに共感してゲーム会社に4年間働いていたので、会社の環境はWeb漫画家に転身した大きな理由ではないと思っています。
――「竹やん」の漫画は10万以上リツイートされ、Web漫画家としてひとつのブレイクポイントでしたよね。
スタバで見た小学生達の話 pic.twitter.com/KtbbNAYLDN
— やしろあずき (@yashi09) 2015年2月7日
ゲームプランナーとして勤務しながらWeb漫画を投稿していた頃の作品ですね。この反響から仕事の依頼が増えるようになりました。「Web漫画家としてやっていけるのかも」と思えたのは、この漫画のおかげです。竹やんには本当に、クリエイター人生を救われています(笑)。
――ゲームプランナーの仕事と並行で漫画を投稿し始めた頃からWeb漫画家に転身することを考えていたのでしょうか。
考えていませんでしたが、当時から積極的に「多くの人に見てもらうための工夫」を大きく3つ、取り入れていました。1つ目はユーザーの反応が良い時間を狙っての投稿。2つ目はTwitterのトレンドキーワードを取り入れた漫画づくり。最後は「この絵はやしろあずきだな」と覚えてもらえるような特徴的な画風です。漫画の画風については画が上手いWeb漫画家はたくさんいるので、画の上手さを追求しても1人のクリエイターとして認知されづらいと考えての工夫でした。
Web漫画家は今、チャンスがある職業
――独立の判断基準は何だったのでしょうか。
独立の判断基準は「年収」でした。Web漫画家としての仕事依頼が増えていくに従って「Web漫画家・やしろあずきの年収がゲームプランナー・やしろあずきの年収を超えたら独立しよう」と決めていたんです。本業であったゲームプランナーの年収を超えたのは、SNSのWeb漫画投稿を始めてから約1年かかったと思います。
――副業が本業の収入を超えるには、実績に合わせて原稿料の交渉が必要だと思いますが、交渉はどのように行ったのでしょうか。
100人規模のファンイベントを開催した時、当時連載していたWeb漫画メディアの編集部に電話をして値段交渉をしたことがあります。それまでは1作3,000円だったのですが、会場にいるファンにも協力してもらって「8,000円にして欲しい」と交渉したら原稿料が上がりました(笑)。
PR漫画の場合は4コマで1本100万~200万のものもあります。実績を積んできたら前回どのくらいの効果があったかの数字を見せると効果的ですね。予算を握っている方は数字を見るので、交渉の時も数字を意識するとしっかりと交渉できると思います。
ゲームプランナーとWeb漫画家の仕事に共通していること
――やしろさんの漫画は日常で出会った面白いできごとや家族をネタにすることが多いですよね。
ゲームプランナー時代、先輩から言われていた「日常を仕事のネタにしろ」というアドバイスが今も漫画のネタを探す時の根本になっているんです。
Web漫画家の傾向かもしれませんが、外に出かける時は周りの人の声を聞いたり、面白いことがありそうだったら見に行ってみたりしますね。
たとえば、街なかで傘を振り回している人がいたらとりあえず近づきます。絡まれでもしたら絶対面白いですから(あくまでも、やしろさんの一例です)。それくらい、普段からネタを探しています。
――ゲームプランナー時代の経験が活きていますね。
もう1つ、Web漫画家に通じる経験があります。「打ち合わせの仕方」です。
ゲームプランナーは打ち合わせで企画のブラッシュアップをして建設的な話に持ち込み、制作まで進めることが仕事の一部。Web漫画の打ち合わせのときも、ゲームプランナー時代の経験を活かして打ち合わせをすると仕事の話が弾んで編集さんも喜んでくれます。
まとめ:ゲームプランナーからWeb漫画家への転身で活きたスキル
- 「日常を仕事のネタにする」クリエイティブへの貪欲さ
- 企画のブラッシュアップで培ったコミュニケーションスキル(編集者との良好な関係づくりに繋がる)
次世代クリエイター「Web漫画家」になるチャンス
――「Web漫画家」になるために必要なことは何でしょうか。
発信し続けることですね。投稿した漫画が中々話題にならず諦めてしまう方が多いようですが、僕の漫画も最初から話題になったわけではありません。
万が一、話題にならなかったとしてもクリエイターとしてのキャリアは続きます。漫画の話題性は気にしないで、自分の表現したい作品を発信し続けてほしいですね。
――「発信し続ける」というハードルを越えれば、Web漫画家になるチャンスはあると。
チャンスはあると思います。Twitterに投稿した漫画が運良く話題になれば、書籍化の話が来ることもありますから。Web上に漫画が連載できる場所も増えてきているので、みなさんが感じている「発信し続ける」ハードルの高さとは反対に、プロになるハードルは下がってきていると思います。
加えてWeb漫画業界の魅力をお話しすると、できあがったばかりの業界なので「皆で助け合っていこう」というあたたかい雰囲気があって、作家同士の仲もすごく良い。同ジャンルの作家でも、連載できる場所が数多くあるので蹴落とし合いがないからです。
――やしろさんには「カラーコーン」という代名詞がありますが、自己プロデュース力もWeb漫画家に必要でしょうか。
僕の代名詞「カラーコーン」は「アマゾンのほしい物リストに入れておいたらきっとファンが送ってくるんだろうな…」と予想していたら、予想以上にカラーコーンが送られてきたことから始まっています。
僕と三角コーンの「はじまり」のお話https://t.co/c3CMhaajmK pic.twitter.com/avlEXaTkWe
— やしろあずき (@yashi09) 2019年1月20日
でも、実はフリーランスのWeb漫画家として「○○の人」と認知されることは強みになります。例えば、皆さんが街なかでカラーコーンを見たとき、僕を思い出してくれるんじゃないでしょうか。もう、ちょっとした洗脳です(笑)。
自己プロデュース力のある人が活動の幅を上手く広げているのは確かで、個々の時代になってきているなと感じています。
まとめ:次世代クリエイター「Web漫画家」が心がけること
- 話題にならなくてもいい!自分の表現したい作品を発信し続ける
- 自己プロデュースで「○○の人」と認知してもらうことがファン獲得の第一歩
「心の底から表現したいものをつくる!」キャリアの選択肢
――今後のキャリアに悩んでいるクリエイターにひとことお願いします
自分が心の底から表現したいものを見つけたらまず、行動に移すこと、ですね。
今は会社に勤めながらキャリアの幅を広げられる時代。僕もゲームプランナーだった頃は残業して帰ってから漫画を描く生活を「辛い…!」と感じたこともありました。でも、それを乗り越えてクリエイター・やしろあずきの選択を信じ続けたからこそ、今があります。
クリエイターであれば「心の底から表現したいアイディア」があるはず。そのアイディアを発信し続けることで、キャリアを好転させることができるのではないでしょうか。
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取材・ライティング:安田俊亮/撮影:SYN.PRODUCT/取材場所:やしろあずきさんのご自宅/編集:大沢愛(CREATIVE VILLAGE編集部)
書籍・ブログ紹介
『やしろあず記 ボクのソシャゲ開発日記』
書籍情報
Twitterフォロワー40万人超えのインフルエンサー、やしろあずきの実体験を交えた(?)大人気短編漫画集。ブラックユーモアたっぷりに(それでいてリアルに)描かれたソーシャルゲーム開発の裏側を刮目せよ…!!
作品紹介ページ:https://www.amazon.co.jp/dp/B07G13X8GG
web漫画家やしろあずきの日常
ブログ情報
ライブドアブログOF THE YEAR 2018の最優秀グランプリ受賞。2019年3月には月間PV数1,800万、月収250万円超!(http://staff.livedoor.blog/archives/51950221.html)
やしろさんの日常がおなじみの漫画として投稿されています。
ブログページ:http://yashiroazuki.blog.jp/
CREATIVE VILLAGE編集部よりプレゼント企画
インタビューへ応じてくださった、やしろあずきさんの代名詞「カラーコーン」(高さ約20cm)をやしろさんのサイン&キャリアに悩めるクリエイターへのコメント入りで2名さまにプレゼント!
以下をよくご確認のうえ、奮ってご応募ください!
僕にキャリア相談をしてくる人はフリーランス志望が多いです。
僕自身がゲーム会社の会社員を経験したからこそ、フリーランスのクリエイターを目指す人には一度、会社員を経験することを割とオススメします。
フリーになった時、同じぐらいの実力があっても社会常識をある程度身に着けている人と全くそうでない人だったら選ばれる可能性が高いのは前者の人ですよね。
僕もゲーム業界で割と地獄を見ましたが、漫画家としてやっていく中で「経験しておいてよかった」と思うことが結構あります。ただ勿論入る業界は自分がフリーでやっていきたいと思っている業界に近い職種のほうがいいですよ。独立後のコネクションも手に入るし。
どこでもいいと思って特に興味もない会社に入る事だけはやめましょう。人生楽しんでください。
応募方法
(1)クリーク・アンド・リバー社の公式Twitterをフォロー
(2)以下のツイートをリツイート(引用リツイートは対象外となります)
https://twitter.com/creekcrv/status/1141182268561432577
●応募締切:募集は締切りました。たくさんのご応募、ありがとうございました!
プレゼントの当選および発送について
・キャンペーンには、お一人様1アカウント(鍵付き除く)でのみ参加可能です。
・商品のお届け先は日本国内に限らせていただきます。
・ご入力いただきました個人情報は当社が取得し、プレゼントの送付、お問い合わせ対応、本人確認のためだけに利用いたします。
・当選された方には、編集部よりTwitterのダイレクトメッセージ(DM)にて当選連絡をさせていただきます。
・プレゼントの当選通知は、当選者にのみお送りさせていただきます。
・プレゼントの発送は、2019年7月中旬を予定しています。
注意事項
※本キャンペーンは、Twitterが後援、支持、または運営するものではなく、本キャンペーンにTwitter社は関係ありません。
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