外国語で書かれた文章を日本語で的確に表現するのが翻訳家の仕事です。映画の字幕や吹き替えという形で、翻訳の仕事に触れている人も多いのではないでしょうか。
しかし、求人サイトでも翻訳家の募集を見ることは少ないので、翻訳家になる方法や具体的な仕事内容についてイメージしにくいかもしれません。
一口に翻訳といっても、小説・ビジネス文書・映画など対象はさまざまで、扱う言語も英語だけにとどまりません。
今回は、翻訳家の仕事内容を3つのジャンル別にご紹介します。また、翻訳家の働き方や必要なスキル、翻訳家になるための方法も解説しますので、翻訳家に興味がある方はぜひ参考にしてください。
翻訳家の仕事内容と3つのジャンル
翻訳家とは、外国語を日本語に訳す仕事のことです。また、その逆もあり、日本語を外国語に訳すこともあります。代表的なのは英日翻訳(英語を日本語に翻訳する)ですが、そのほかにもフランス語やドイツ語、中国語、アラビア語など、言語の種類はさまざまです。
翻訳家の仕事は、以下の3ジャンルに分けることができます。
(1)文芸翻訳
小説やノンフィクション作品、雑誌などの出版物を翻訳する仕事です。出版翻訳と呼ばれることもあります。翻訳対象の言語や日本語のスキルはもちろん、作品のテーマをしっかりと把握して、ふさわしい表現で翻訳する力が必要です。
(2)実務翻訳
ビジネスで必要とされる、マニュアルや契約書、学術書などの翻訳をする仕事です。産業翻訳と呼ばれることもあります。実務翻訳の場合は、基本的な語学力のほか、業界特有の専門用語を翻訳する力も必要です。そのため、一般的にはIT・医療・金融など、特定のジャンルを専門に担当します。
(3)映像翻訳
映画やドラマ、ドキュメンタリーなどの映像作品の音声を翻訳して、吹替のセリフや字幕を作成する仕事です。台本と映像を参照しながら、翻訳を行います。吹替のセリフを作成する場合は音声として分かりやすい言葉に、字幕を作成する場合はパッと見ただけで分かりやすい言葉に訳す技術が必要です。
会社員?フリーランス?翻訳家の働き方
翻訳家として働くためには、翻訳部署のある会社に就職する方法と、翻訳会社に登録してフリーランスとして働く方法の2パターンがあります。
実務翻訳の場合は企業からの需要が高いため、正社員としての求人も比較的見つけやすいでしょう。特に、外資系企業や貿易会社、特許関連の会社などで募集を行っている場合が多いようです。
翻訳の求人例
もちろん、フリーランスとして働くこともできます。
映像翻訳の場合は制作会社に入社して翻訳を行うこともありますが、フリーランスとして働く場合がほとんどです。また、出版翻訳もフリーランスとして働く方法が一般的でしょう。
このように、翻訳家はフリーランスとして働く場合が多い傾向にあります。そのため、1人で黙々と作業するのが好きな方や、自分でしっかりとスケジュールを管理できる方に向いているといえるでしょう。
翻訳家の年収
翻訳者の全世代での平均年収は450万円ほどとされています。
ただし、翻訳者の収入は働き方や請け負う仕事によって大きく異なります。例えば、映画作品の翻訳は1本40~50万円といわれているので、毎月1本受注できれば年収は500万円弱となります。文芸翻訳は文字単価で依頼を受ける場合が多いですが、実績によって単価は大きく異なります。一文字数円から始まりますが、ハリー・ポッターシリーズの翻訳で知られる松岡佑子氏のように年間数十億稼ぐ方もいます。
JTF(日本翻訳連盟)が翻訳者・通訳者を対象に2017年度に行った調査によると、回答者の年収帯で最も多いのは「200万円〜300万円未満」と「300万円〜400万円未満」のゾーンでした。また、全体の70%以上が年収500万円以下であり、翻訳者として高額報酬を得る難しさがうかがえます。
翻訳家になるには
ここからは、翻訳家になるために必要なスキル・資格・代表的な就業ルートなどをご紹介します。
翻訳家に必要なスキル
翻訳家に必要なスキルは当然ながら外国語を扱う能力です。また、それだけにとどまらず外国語をふさわしい文章に訳す、「日本語力」も重要です。文芸翻訳や映像翻訳の場合は、日本語の表現力が特に求められるでしょう。翻訳家として活躍するためには、外国語だけではなく日本語のスキルも磨く必要があります。
さらに、外国の言語だけではなく文化や歴史、生活習慣なども理解しておくと、よりレベルの高い翻訳ができるようになります。翻訳のスキルを磨くために、海外留学をしたり現地の文化を学んだりするのもおすすめです。
ちなみに、翻訳というと英語のイメージが強いかもしれませんが、近年では中国語や韓国語などアジア圏の言語の需要も高まっています。英語に限らず、自分が興味のある言語のスキルを磨いて翻訳家を目指すのも良いでしょう。
翻訳家に必要な資格
翻訳家として働くために必須な資格はありません。しかし、語学力がなければ翻訳はできませんので、大学・短大の外国語学部や、翻訳の専門学校などで勉強してから翻訳家を目指す方がほとんどです。
資格は必須ではないのですが、自分の語学力を証明するために、英検やTOEICなどの資格を取得している方も多いようです。そのほか、日本翻訳協会が実施している「JTA公認翻訳専門職資格試験」という翻訳の資格もあります。就職時のアピールや自分のスキルの確認のために、資格の取得を目指すのもおすすめです。
翻訳家になるための代表的なルート
翻訳家はフリーランスとして働く場合が多いため、どうすれば翻訳家になれるのかわからない、と思っている方も多いのではないでしょうか。そこで、翻訳のジャンル別に翻訳家になるための代表的なルートをご紹介します。
(1)文芸翻訳
出版社への持ち込み、コンテストへの応募といった方法が一般的です。企業に就職するわけではないため、文芸翻訳家として独り立ちするまでには時間がかかることも多いようです。
(2)実務翻訳
翻訳業務を行っている企業に応募して就職するか、フリーランスとして翻訳会社に登録して、翻訳会社経由で仕事を受注する方法があります。翻訳会社に登録する場合は、申し込み後トライアルを受け、合格すれば仕事を受注できるようになります。
(3)映像翻訳
制作会社に就職するか、プロの翻訳者の下で経験を積んでデビューを目指す方法などがあります。制作会社に就職する場合はアルバイトから始めることも多いでしょう。文芸翻訳同様、すぐにプロとしてデビューするのは難しいようです。
まとめ
翻訳家の仕事内容や働き方、必要なスキルについてご紹介しました。一口に翻訳家といっても、言語の種類はさまざまですし、文芸翻訳・実務翻訳・映像翻訳といったジャンルごとに仕事の内容は大きく異なります。
3つのジャンルの中でも、最も仕事を見つけやすいのは実務翻訳でしょう。社員として募集している企業もありますし、フリーランスとして翻訳会社に登録して、仕事を紹介してもらうことも可能です。ただし、実務翻訳の場合は専門用語なども多数出てきますので、自分が得意な分野を見つけて専門知識を蓄えていくと良いでしょう。
もちろん、フリーランスとして文芸翻訳や映像翻訳を行うことも不可能ではありません。語学力を磨きながら、出版社への持ち込みやコンテストの応募などを積極的に行うと良いでしょう。
また、翻訳の専門学校が就職のサポートをしてくれたり、企業に推薦してくれたりする場合もあります。語学力を高めるだけではなく、仕事をスムーズに見つけるために、翻訳の専門学校に通うのもおすすめです。
グローバル化により、語学力のある人材の需要はますます高まっています。翻訳の仕事に興味がある方は、ぜひ一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。