2019年4月に施行される働き方改革。副業の敷居はさらに下がり、フリーランスクリエイターの増加が予想されています。

国内フリーランス人口は2018年時点で既に総労働人口の約6分の1にあたる1,000万人(経済規模は約20兆円)。※出典フリーランス白書2018

加えて、労働人口の減少による人生100年時代構想からセカンドキャリアとして誰もがフリーランスで働く可能性があります。

そこでCREATIVE VILLAGEはフリーランスクリエイターのお話しを「新時代のキャリア指南」として読者の皆さまにお伝えすることにしました。

第一弾はゲーム業界のフリーライター、マフィア梶田さん。

マフィア梶田(まふぃあ・かじた)
フリーライターとして主に日本最大級の総合ゲーム情報サイト「4Gamer.net」にて記事を執筆しているほか、「杉田智和のアニゲラ!ディドゥーーン!!」「Fate/Grand Order カルデア放送局」など、様々な番組・イベントにてMCを務める。また、声優や俳優としても活動しており、庵野秀明監督や大林宣彦監督よりオファーを受けて映画「シン・ゴジラ」や「海辺の映画館-キネマの玉手箱-」に出演するなど、業界の垣根を越えて幅広く活躍中。

『ヒットマン2』PR大使や『シン・ゴジラ』カヨコ・アン・パタースン(演:石原さとみさん)のSP役として梶田さんを知ったCREATIVE VILLAGE編集部は彼のキャリアを追う中で、フリーライターとしての「サバイバル精神」をぜひ読者のクリエイターに届けたい!という心意気で企画を立案。

梶田さんに語っていただいたフリーランスクリエイターとして「生き残る」ことの過酷さ、魅力についてお届けします。

常に“自由”であり、自らの判断のみを信じて突き進む

――梶田さんは、キャリアの最初から「フリーライター」を選ばれています。どのような魅力を感じてこの職業を選ばれたのでしょうか?

常に“自由”であり、自らの判断のみを信じて突き進む。何かに縛られることを嫌う自分には、必然的にフリーランスという生き方しか選択肢が無かったんです。

幼い頃から息苦しい現実を忘れさせてくれるゲームや小説が心の支えで、勉強はまったくできませんでしたが、父親の蔵書を読み漁っていたおかげで意識せずとも人並み以上の文章力が身に付いていました。

不器用な子供で、学校生活という小さな社会にも適合できず、道を踏み外す瀬戸際でフリーライターという仕事の存在を知った時、「もう自分にはこれしかない」と思ったんです。

――ライター業もジャンルが様々にありますが、梶田さんは特にゲーム業界を選ばれました。

退屈な現実を、束の間でも刺激的に彩ってくれるゲームは自分にとって生きる理由そのものでした。そんなゲームをプレイし、魅力を言語化するだけで生きられる人生があるのであれば、そんなに幸せなことはありません。

――ゲーム愛と、仕事愛がまさに一致していますね。

ゲームに限らず、アニメや漫画、映画、小説など、自分にとっては“趣味”の一言で片付く存在ではなく、生命活動と同等にあるモノなんです。そういったエンタメと、それらに携わる人々が何よりも尊いと考えている「オタク至上主義者」であり、そんな自分に誇りを持っています。

無邪気な憧れが、怒りに変わる

――逆に、ゲームライターの厳しさはありますか。

物書きである以上、困難な取材や締切がつきまとうのは当然ですよね。ライターを目指す人間であれば承知のうえで飛び込んでいる荒波なので、今更どうこう言う必要もないかと思います。

そんな中で、あえて挙げるのであれば賃金の問題でしょうか。自分がまだ「バンタンゲームアカデミー」の専門学校生だった頃から、講師や先輩方にライター業界の賃金は安いという苦労話を聞かされていました。
過酷な環境で「それでも好きだから続ける」という人々に支えられている世界だったんです。自分はそんな講師や先輩方を素直にカッコイイと思いましたし、尊敬していました。

ただ、次第に現実を目にするようになり、無邪気な憧れは怒りに変わっていきました。仕事をいくつも掛け持ち、血を吐いて倒れた先輩や、「食っていけないから」と次々に辞めていく同期のライター達。

なぜ、こんなにも業界への愛情と確かなスキルを持った人々が使い潰され、好きな仕事を諦めなければいけないのか。そもそもなぜ、ゲームライターの世界は賃金が安いのか……。

――私もゲームライターをやっていますが、報酬の低さは常に問題になります。

そんなある時、もしかしたらゲームライターの賃金が安いのは「そういうもんだ」という認識が業界全体に広まっているためではないかと思ったんです。

クライアントもライターも「この金額で当たり前」という思考で、“交渉”の過程をすっ飛ばしているのではないかと。

フリーランスという生き方は自由である一方、とても孤独です。後ろ盾はなく、すべての行動に責任を持たねばなりません。自分はそこで、クライアントと対等に“交渉できるライター”になろうと決心しました。

自分の価値を見極め、プロデュースする

――どのように交渉をしたのでしょうか。

もちろん、駆け出しから金額を釣り上げたりはしませんでしたよ。そもそも、自分に限らず日本人というのは慎み深く、お金の話が苦手だと思います。下積みはしっかり、大切なのは“信頼”と“実績”です。

好きな仕事をずっと続けていきたければ、ある程度のキャリアを積んだ段階で業界における「自分の価値」を客観的に見なければいけません。とはいえ、お金の話というのはストレスです。それが正当な要求でも、罪悪感のようなものを感じてしまう。

そこで自分は、「マフィア梶田にはこんな実績がある。だから、これくらいの報酬が妥当だ」と、思考の中にプロデューサーを作り出しました。自己暗示に近いですね、交渉に関しては徹底的にドライであることを義務化したんです。

具体的には、仕事の御依頼をいただいたら、必ず真っ先にギャランティーの確認から入ります。最初の連絡で先方から提示が無かったり、金額が見合わない場合は、自分から返信時に相場を伝えるようにしています。
さらには内容から厄ネタ(※)の臭いがしないか、炎上リスクは無いかなど事前調査もできる範囲で行いますね。
※不吉または迷惑な案件・人物の意(参照:ニコニコ大百科「厄い」

――最初にお金の話をしておけば、あとで不安になることもないですね。

大事なのは、プロとして徹底することです。なので自分は、決して無報酬で働くことはありません。どんなに細かい仕事でも、例えばこういったインタビューでも稼働するのであれば必ず報酬をいただくようにしています。

もちろん、ボランティアやチャリティーとなれば話は別ですけどね。それらも自分が信頼できる相手からの依頼に限りますが。

――自分の価値をしっかり見極めることで、ステップアップのきっかけになるということですね。

すべてはバランス感覚です。天狗になりすぎても、卑屈になりすぎてもいけない。その時々で客観的に、自分の価値がどれくらいなのか見極めて交渉を行う。そうやって初めて、フリーランスは“ビジネス”として成り立つんです。

――交渉はスムーズに進んだのでしょうか。

狭い業界です。自己プロデュースを徹底していれば、不思議と人材としての価値というものは浸透していくんですね。デビューしてから10年以上、自分の相場は上がり続けていますが、交渉でトラブルになったことはまったくありません。

ブレイクポイントは「熱烈なラブレター」

――今度はライティングについてお聞きします。梶田さんのブレイクポイントとして度々4Gamerで書かれた「ラブプラス」のレビュー記事について語られていますが、その時に心がけていたことは何かありますか。

心がけはデビュー当初から変わっていません。ゲームというものは、人を楽しませるために生まれたポジティブなコンテンツなんです。

その魅力を伝える記事も、ポジティブでなければいけません。クリエイターに敬意を払い、作品の欠点のみをあげつらうのではなく、ひとつでも多くの魅力を言語化してユーザーへお伝えするのがゲームライターの仕事であると考えています。

――「ラブプラス」の記事を読んでいると、本当に好きなのが伝わってきます。

あの作品については、テストプレイの段階でブームを確信していました。自分自身が最初のファンとして、「熱烈なラブレター」を書き殴ったような感覚ですね。完全にトランス状態だったので、今見返すと滅茶苦茶恥ずかしいですよ。文章も粗削りですし、ラブレターですから(笑)。

仕事の依頼は美女からの誘惑

――ゲームライターをしていると、ブレイクポイントが来ないままフェードアウトしてしまう人もいると思います。そうならないように気を付けることはありますか。

とにかく多くの人脈、多くの信頼関係を作り上げることが大切です。そうすれば必ず、自分のスタイルを理解し、応援してくれる編集者や媒体と出会えるはずです。

例えば「ラブプラス」の記事なんて、見方によっては滅茶苦茶な内容なのに4Gamerは「マフィア梶田のスタイルだから」と駆け出しのライターを尊重してそのまま掲載してくれました。おかげで記事を書けば書くほど“強み”を磨いていくことができましたし、深く感謝しています。

――梶田さんのように大きな実績を作っていくと、仕事を依頼する側(クライアント)も実績を知っていますから、「あのときのあの感じで」みたいな依頼もあると思います。そうなるとスムーズですよね。

コンテンツ毎に取り組み方は違うので、同じことがやれるかどうかは別として。求められている役割が明確なので、話は早いです。
一方で、完全新規のクライアントから来る仕事も楽しんでやっていますよ。「たぶん俺のこと、よく知らずに頼んできているな……」というような案件だと、むしろ先方の期待以上の結果を出してやろうとモチベーションが上がります。実際その通り、良い仕事ができた時の快感はたまらないですよ。

――だから、フリーライターという枠から少しずつ仕事の幅が広がっていったんですね。

条件やスケジュールが噛み合う限りは、「できない」と言わないのが自分のポリシーです。仕事として求められれば何でもやりますし、専門外のことでもお金をいただく以上はプロとしての自覚を持って臨むようにしています。プレッシャーを感じることもありますが、フリーランスという生き方は刺激に満ちていて飽きないですね。

――ライターに留まらず活躍されている理由がわかってきました。

フリーランスで仕事の依頼をいただける嬉しさというのは、美女から言い寄られる感覚に近いんじゃないでしょうか。選ばれたことが誇らしく、愛おしい。なんだってしてあげたくなる。やり遂げた時の達成感も大きいですし、病み付きになっちゃいますよね。

どんな経験も、ライターに通ずる

――では最後に、梶田さんから見て“生き残れるゲームライター”とはどのような方でしょうか。

それは、自分のような若輩者が言及すべきことではないと思います。むしろこちらから、20年~30年のキャリアを持つ先輩方にお聞きしたいです。

ただ確実に言えることは、フリーランスとして生き残りたいのであれば自分の“価値”を必ず守ってください。そうすることで己の利益のみでなく、後に続くフリーランス達の地位向上と“価値”を守ることにも繋がると思います。

――お金の話は本当に身にしみます。

フリーランスの強みは“自由”。当然ながら副業禁止なんて取り決めはありませんから、好きな仕事を続けるために別の顔を持つのもアリだと思います。できそうなことは、なんでもやる。自分の可能性を狭めることなく、どんな経験もライターに通ずると考えましょう。

それこそ「マフィア梶田」としては色々とやりすぎてアイデンティティ・クライシスに陥ったこともありましたが、結局はライターとしての自分に収束するということに気付いてからは楽になりました。

こんなやり方が今後20年、30年も続くのかどうか分かりませんが……命ある限り、業界から求められる存在であり続けたいと考えております。

インタビュー・テキスト:安田俊亮/撮影:TAKASHI KISHINAMI/取材場所提供:JELLY JELLY CAFE池袋二号店/企画:大沢愛(CREATIVE VILLAGE編集部)


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CREATIVE VILLAGE編集部よりプレゼント企画

インタビューへ応じてくださった、マフィア梶田さんが『ポプテピピック』作者の大川ぶくぶさんとタッグを組み、電撃G’sマガジン.comで連載中の『GOHOマフィア!梶田くん』

2019年1月26日に発売された記念すべき単行本第1巻をマフィア梶田さんの直筆サイン入りで抽選で5名さまにプレゼント致します!
以下をよくご確認のうえ、奮ってご応募ください!

『GOHOマフィア!梶田くん1』
漫画:大川ぶくぶ/材料:マフィア梶田/カバーイラスト:羽海野チカ
株式会社KADOKAWA/電撃コミックスEX
【マフィア梶田さんからコメント】

クソ真面目なインタビューからクソみたいな漫画。エポックすぎたのか巷では“淫祠邪教の書”とまで呼ばれている本作ですが、刺さる人には異常に刺さる内容となっています。
なぜゲームライターが漫画になっているのか、読めば分かる。分からないかもしれない。というかコレに応募してくるような物好きはもう買っているんじゃないですかね……。

応募方法

(1)クリーク・アンド・リバー社の公式Twitterをフォロー
(2)以下のツイートをリツイート(引用リツイートは対象外となります)
https://twitter.com/creekcrv/status/1092981856805351427
●応募締切:2019年2月13日(水)23時59分まで


募集は終了しました。たくさんのご応募、ありがとうございました!

プレゼントの当選および発送について

・キャンペーンには、お一人様1アカウント(鍵付き除く)でのみ参加可能です。
・商品のお届け先は日本国内に限らせていただきます。
・ご入力いただきました個人情報は当社が取得し、プレゼントの送付、お問い合わせ対応、本人確認のためだけに利用いたします。
・当選された方には、編集部よりTwitterのダイレクトメッセージ(DM)にて当選連絡をさせていただきます。
・プレゼントの当選通知は、当選者にのみお送りさせていただきます。
・プレゼントの発送は、2019年4月上旬ごろを予定しています。

注意事項

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