今回は、株式会社ディー・エヌ・エーの事業に於けるデザイン戦略について、デザイン戦略部の方々に組織体制や、役割、事業会社のデザイン部門で活躍するための条件などについてお話しいただきました。
株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)は、モバイルゲームプラットフォーム『Mobage(モバゲー)』をはじめとし、ECや動画配信、ヘルスケア、オートモーティブ、スポーツなど、数多くの事業を展開しています。
多様な事業における“デザイン”の屋台骨を支えるのが、クリエイティブを担うデザイン戦略部です。100名超のデザイナーやエンジニアが所属する同部署は、どのような体制でDeNAを支えているのか。部長の上田龍門と3名のグループリーダーたちが語ります。
強みの異なる6グループから構成される、デザイン戦略部
上田 デザイン戦略部は、DeNAに於けるデザイン業務を担う事業部です。サービスについてはゲーム以外の領域を担当しており、プロモーションにおいてはゲームも含めた領域のクリエイティブを担当しています。
ゲームプラットフォームのクリエイティブを担うプラットフォームデザイングループ、主に新規事業を担当するUI・UXデザイン第一・第二グループ、ゲームを含めた全社横断のプロモーションやブランディングを行うマーケティングデザイン第一・第二グループ、フロントエンドエンジニアの集団であるデザインエンジニアリンググループの6つのグループで構成されています。
部署で大事にしているのは「事業の課題を解決するためのクリエイティブである」という意識を持つこと。DeNAは事業会社ですので、尖った先進的なクリエイティブを作ることよりも、サービスをより良い方向に動かすためのものづくりが重要だからです。
もちろん、そうしたマインドやスキルを持った人材はどんな事業会社でも重宝されると思いますが、当社のデザイン戦略部では特にその傾向が強いですね。
デザインを、点ではなく面で攻める
榎戸 プラットフォームデザイングループでは、サービス単体ではなく「プラットフォーム全体を最適化していく」という視点を大事にしています。
『Mobage』の利用者には「ゲームはするけれど他のサービスは使わない」とか「ニュースだけを利用している」というような、プラットフォーム内の特定のサービスだけを使っている方も多いです。
クリエイティブの力によって、そうした方々に他のサービスも使っていただけるような仕組みを作っていきたいと思っています。「お客さまの日常に溶けこめるプラットフォームをどう構築するか?」という視点を持ち、デザインの力で課題を解決していくというのが、このグループのミッションです。
高橋寿俊 マーケティングデザイン第一・第二グループは、広告とブランディングを担っています。この領域に携わる難しさは、お客さまの目を一瞬で惹きつけ、行動を促さなければならないことにあります。その目的を達成するために、事業部やクリエイターみんなで議論しあいながら、良いものを作っていくのが仕事の醍醐味です。
DeNA社内で広告制作やブランディング業務を行うメリットは、「事業により近い位置で、企画から結果まで一貫して携われる」という点にあると考えています。例えば、外部の制作会社やデザイン事務所ですと、コミュニケーションの距離感がどうしても出てきてしまうので、相手の意図を理解しきれない部分が出てきたり、自分たちが作った広告の結果がわかりづらい部分があると思います。
僕たちは社内にあるデザインチームだからこそ、限られた時間のなかでも事業部の想いを汲み取り、それを踏まえたアウトプットができる。それが大きな強みだと思っています。
高橋伸弥 デザインエンジニアリンググループは、フロントエンドエンジニアのスキルを持ったメンバーで構成されており、彼らの技術を駆使して、Webサービスを作っています。
企画担当者や分析担当者といったプロジェクト構成メンバーと同じ島に座り、アイデアやアウトプットを出し合いながら仕事をしています。
それによりお互いの意図をより深く理解でき、結果的にプロダクトの完成度にも好影響を与えられていると感じています。
また、グループ内にフロントエンドエンジニアが集まっていることで、スキルアップの方法やキャリアプランを考えるうえでもメリットがあります。なぜなら、同じ職種のメンバーが持つ悩みや技術的な興味関心は共通していることが多いので、メンバー同士での相談や情報共有がしやすくなるからです。
「事業のためのデザイン」というマインド
上田 デザイン戦略部で重視しているのは、デザインありきで物事を考えるのではなく「事業に貢献するためのデザイン」「お客さまに価値を提供するためのデザイン」というマインドです。
単に「私はデザインだけをやれればいい」と考えるのではなく、「何を目的としてデザインすべきなのか」から逆算して、自分の行動に落とし込めるデザイナーは特に活躍していますね。
そういった発想を持っている人は、ミーティングや普段の会話の内容からして違います。他のメンバーとディスカッションしているなかで、「それって、なぜ作るんだっけ?」と、目的を踏まえたうえで意見を出してくる。持っている目線が違うというか。
榎戸 事業マインドを持っているかどうかは、僕も重要視していて、採用面接の際にも必ずチェックしています。もちろん技術力が高いに越したことはありません。でも、技術は後から学ぶこともできるので、一定の基準をクリアしていればいい。マインドの方が、後からは得難いものだと思います。
事業って、必ずしも上手くいくことばかりではありません。苦しい局面に直面することもあります。そうしたとき、何かしら答えが用意されていなければ動けない人は、どうしても活躍できなくて。答えが無い中でも、事業の目的をベースにして自分は何をすべきかを考えられる人が、DeNAでは活躍しているイメージがあります。
高橋伸弥 ウチのグループだと、何かしらスキルの“軸”を持っている人が成果を出せています。例えば、特定分野のデザインスキルが高いとか、数字に強い、サービス志向性が高い、表現力が高いなど、自分の強みを持っている。「自分はこういうことが得意なので、任せてください」と言える人。そのメンバーが、自分の武器を活用して柔軟に動き回ることで、バリューを発揮できるというか。
高橋寿俊 自分の強みや弱みを理解している人は、すごく強いですよね。
上田 良いマインドを持った人ならば、その強みに沿って他の分野も徐々に伸びてくるからね。
“デザイン”を会社の1つの柱に
上田 今後のビジョンとして考えているのは、デザインを会社における大きな1つの柱にしていきたいということです。
DeNAはビジネスやエンジニアリングに強いというイメージは、比較的多くの方に持っていただいていると思います。でも、まだまだデザインに強いというイメージは薄い。その状況を変えていくために、たくさんの実績を積み上げていきたいです。
高橋伸弥 同感ですね。僕は、デザイン戦略部を主体にして、何かサービスが生まれてくる未来が実現できたらいいなと思っていて。その目標を達成するには、職能を極めていくだけではダメで、総合的なビジネススキルなども必要になってきます。素晴らしいデザイナーが集まって、世の中に価値を提供していける組織にしていきたいですね。
榎戸 ヒットサービスを生み出す一役を担っていきたいですね。
高橋寿俊 日本のゲーム市場やスマホアプリの市場って飽和状態なので、今後はマーケティング戦略やアプリの機能だけで差別化を図っていくのは難しいです。だからこそ、クリエイティブの重要性はもっと増してくると考えています。
上田 世の中には数え切れないほどのサービスがあるので、何も考えずにプロダクトを作っていては埋もれてしまいます。「どのような手段でお客さまにアプローチしていくか」をより深く考えなければいけません。
そのとき、エンジニアリングだけではなく、デザインの力で解決できる課題はたくさんあるはずです。だからこそ、デザイン戦略部をもっと強いチームにしていきたいと思っています。
次回はDeNAデザイン本部デザイン戦略部の飯島征士が「Anycaのデザイン戦略」について寄稿させていただく予定です。
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1999年創業。ゲームやエンターテインメント、Eコマース事業を始め、近年ではオートモーティブやヘルスケア事業、野球やバスケットボールといったスポーツビジネスまで幅広く展開する。
“インターネットやAIを活用し、永久ベンチャーとして世の中にデライトを届ける”を長期の経営指針として掲げる。
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