自分の提供できるサービスを時間制のチケットにして売買できるTimeTicket(タイムチケット)。スキマ時間を気軽に有効活用できるとSNSや各メディアでも多数取り上げられ、会員数が75,000人を突破した話題のサービスです。
開発者の山本大策さんは、以前からWebサービスの企画やデザイン、プログラミング・運営に至るまで全てを手がけ、現在はグローバルウェイラボの室長としてチームを率いています。
今回は山本さんの起業ヒストリーからTimeTicket開発裏話まで、新たなサービスを成功させる秘訣を伺いました。
1978年広島生まれ。法政大学社会学部卒業。
みずほ情報総研株式会社、フィードパス株式会社、株式会社リクルートメディアコミュニケーションズを経て、株式会社レレレを設立。
会社設立後は、コーヒー1杯を飲む時間を一緒に過ごしたい人と出会えるサービス「CoffeeMeeting」、個人が気軽に空き時間を売買できるサービス「TimeTicket」を開発。これらのサービスを利用して出会った人たちは累計10万人以上。
2016年10月にレレレの全事業を株式会社グローバルウェイに譲渡。現在は、新規事業開発部署グローバルウェイラボの室長として新規プロダクト開発・運営に携わっている。
仕事と並行して始めた個人エンジニア活動が人生を変えるキッカケに
元々学生時代は社会学部で完全に文系だったので、Webデザインや開発などについての知識はほとんどゼロでした。けれど当時は就職氷河期時代で、その中でも唯一というくらい採用枠が広かったSEに興味を持ち、銀行系のシステム開発会社に入社したんです。
SEとして入ったものの、もちろん一切プログラミングなどはできなかったのでゼロからのスタート。約5年ほど働いて経験を積んだ後、Webエンジニアとしてベンチャー企業に転職しました。自由度が高く、自ら企画した機能を入れられるのがおもしろかったですね。ちょうどその頃はブログがやっと出てきた時代で、会社内でブログを書いて情報共有する仕組みを作ったりしていました。
また、並行して趣味で個人サイトを立ち上げて、そこでは音楽のアーティスト名を入れたりするとそのアーティストのYouTube映像や関連ブログを検索できるということをしたんです。
このサイトで「MASHUP AWARDS」という開発コンテストの賞をいただき、主催者の方たちとつながりができたことがキッカケでリクルートの関連会社へ転職。今までのキャリアを活かしながら、エンジニア以外での仕事にも携わりました。
MASHUP AWARDSの運営にも関わるようになり、事務局長を務めていた時期もありました。審査する立場になって、改めて普段の仕事以外で本当に自分が作りたいものを作れる場所っていうのはすごく重要だなと思ってたんですね。このコンテストをキッカケに出会う人も仕事の幅も拡がり、自分自身もまた仕事以外で何かモノづくりをしたいなという気持ちを強くしていました。
見せかたひとつで反応激変、予想外の手応えを得た「コーヒーミーティング」
そして、久しぶりに個人で作ったのが「コーヒーミーティング」という無料のマッチングサービスです。当時、仕事自体はもちろん楽しいけど外の組織の人達と交流する機会が少なく、気軽に情報交換できる場が欲しいなと思っていました。
ツイッターで仲良くなった人と会うことはたまにあったものの、ツイッターは会うためのツールじゃない。なので、僕と同じように気軽に情報交換できる場所がネット上にもあったらいいのにと思ってる人はたくさんいるだろうと踏み、最初は「オープンミーティング」というタイトルでプロトタイプを作ったんです。で、いろんな人に見せたら「よくわからないですね、誰も使わないですよこんなの」とボロクソ言われて(笑)。
そしてある人に「これって会うのは30分とか1時間ですよね。じゃあできることってお茶するくらいじゃないんですか」というフィードバックをもらって。なるほど、じゃあお茶するサイトに変えようということで「コーヒーミーティング」と名前を変えてアイコンも作って、30分気軽に誰かとお茶するサービスですよという風に変えたら、みんなの反応がガラッと変わったんですよ。裏側はなんにも変えてないのに見せ方を変えただけで全然反応が違って、これおもしろいねと言われるようになった。
じゃあ早速表に出してみようということで事前登録サイトを作り、メアド登録したらコーヒーミーティングをリリースしたときにお知らせしますよと告知しました。100人くらい集まればいいかなと思ってところに500人くらい集まって。これはすごくニーズあるなと確認できた上でリリースしました。
リリース後はSNSで拡散されて、1週間で2,000人くらいの方が登録、マッチングは100件くらいしたんですよ。おもしろいっていう反応もいただいたし、ユーザーの中に投資家の方がいたので僕自身会ってみたいとお会いしたら「このサービスはおもしろいから会社作ってやってみたら」と言われたので起業したんです。最初から自分で積極的に起業しようと思って始めたわけじゃなくて、あくまで趣味の延長線上で続けていたらそうなった。自分が楽しいと思うことにフォーカスしていてよかったなと実感しましたね。
さらに派生した「タイムチケット」も大人気に
僕自身コーヒーミーティングで200人くらいの方とお会いしてるんですが、すごくおもしろい方が多いんですね。本業以外にもデザインにすごく詳しかったり、ボードゲームとか坐禅とかすごく限定的なことが得意だったり。そういう方たちのスキルとか経験って世の中にあまり知られていないから、それらを使って何かお金を生み出せる場があったらおもしろいなということで作ったのが「タイムチケット」でした。
とは言え、いきなりスキルと経験を売りましょうというのは難しいと思ったので、時間を売ろうというプラットフォームで作って。そうしたら最初の1週間で5,000人くらいの人に登録していただき、コーヒーミーティング以上の反響がありました。コーヒーミーティングのときはタイムチケットを出しても難しかったと思うんですが、SNSが浸透してきて、人となりがSNSで確認できるようになったという時代の流れともマッチしたんでしょう。
以前は「いきなり知らない人と1対1で会うのは怖い」というのが普通だったけど、SNS上にも健全な出会いがあると理解してる人もいて、自分が持っていないスキルを持っている人に会って相談するっていうのが自然になってきたと。
そしてこの2つのサービスをメインに運営していたところに現在のグローバルウェイからお誘いをいただき、色んな組み方がありましたが事業を譲渡する形で僕は「グローバルウェイラボ」の室長として、社員として働いています。
タイムチケットは現在会員数7万5,000人、実際に利用している人はひと月に1万人くらいです。基本的には東京を中心とした首都圏の方の利用がメインですが、最近ではスカイプや電話を利用する方も増え、地域は関係なくなってきています。人気がある方は1ヶ月で数十万売り上げることもありますし、大半の方は副業としてやられているのがいいなと思っているんです。
ユーザーの方は25〜35歳がメインなんですけど、皆さん今やってる仕事をずっとやるわけじゃない、自分なりの個性で勝負していく時代になると気付いてるんですよね。
そのファーストステップとしてタイムチケットはアリだなと思ってくださってるのは嬉しいですし、僕自身もお金は稼いでなかったけれど副業で今に至っているようなものなので。タイムチケットがキッカケで起業に至った方もいますし、本業をやりつつ始めていくというのはこれからの時代に重要な考え方だと思います。
人気のチケットは写真・カメラカテゴリや、占い、恋愛相談などもあるし、「それだ感のあるネーミング考えます」とか面白いものもあります。
特に人気なのはSNS用のプロフィール写真の撮影。今まで自撮り写真を婚活サイトに登録していたけど全くいいねがつかず、タイムチケットを利用して撮った写真に変えた途端いいねが増え、パートナーに巡り会えたという方もチラホラいます。
他にも人との出会いのエピソードがたくさんあって、そういった話を聞く度に作ってよかったなと思いますね。今後は数年以内にタイムチケットを100万ユーザーの人が使えるくらいには大きくしていきたいです。
世の中のトレンドをつかまえて、最短距離で発信できる人が活躍する時代へ
今の時代は、自分の考えたことを1人でも仲間とでも、最短距離で形にして世の中に出せる人がどんな業界でも活躍できる流れになってきています。クラウドファンディング然り、大企業の人が考えた企画よりも個人の人が考えた企画のほうがSNS上では応援したくなるんですよね。
個人の企画力がこれほどダイレクトに世の中に提示できる時代って今までなかったですし、僕が起業した頃はサービスリリースまで2ヶ月くらいかかっていたところを、今なら思いついたらすぐライブ中継できますし、いろんな人へのアプローチがしやすい。おもしろい企画だったり共感を集められたりすれば拡散も早いから、アイデアを隠そうとせずみんなを巻き込める人にとってはすごくいい時代だと思います。
そして、自分が使いたいものをつくることも重要ですけど「このサービスだったら100人くらいは使ってくれるかな」というような世の中のトレンドをつかまえて提示していく。基本的にアプリもサービスも出尽くしてる感はあるので、あとはちょっとしたデザイン、設計ひとつで反応がガラッと変わります。キャッチコピーやネーミング、動画でのPRも重要なので、思いついたことをどう打ち出していくかという見せかたにもアイデアを駆使できれば、どんな人にも可能性が拡がっていくんじゃないでしょうか。
(取材・ライティング:上野 真由香/編集:CREATIVE VILLAGE編集部/
撮影:TAKANORI HAYASHI)
グローバルウェイラボ
株式会社グローバルウェイの新規サービス開発チーム。
「個人のはたらく可能性が多様に広がる社会」というビジョンのもと「次の”はたらく”を作る」というミッションを掲げています。
http://www.globalwaylab.com/
TimeTicket[タイムチケット]
「わたしの30分、売りはじめます。」
個人の時間を気軽に売買できるサービス
https://www.timeticket.jp
CoffeeMeeting[コーヒーミーティング]
「近いけど遠いあの人と、お茶してみよう」
コーヒー1杯を飲む時間を一緒に過ごしたい人と出会えるサービス
http://coffeemeeting.jp