電子分野におけるスポーツとして、eSportsは世界中で人気が出てきています。一般人のファンはもちろんですが、多くの企業も新時代のマーケットとして積極的に提携し、市場規模は広がってきています。ここでは、ネットやゲームの普及によってeSportsが広まっている一方で、日本でいまだ人気が爆発していない理由を解説します。
eSportsってそもそもどんなもの?
electronic-sports、略してeSportsは新時代のスポーツとして注目されています。用意された会場でプレイヤー同士がビデオゲームの腕前などを競い合い、観客を楽しませます。大規模な大会になるとスポンサーから支援を受けたプロゲーマーと呼ばれるプレイヤーが登場し、賞金をかけて争います。
eSportsで採用されるゲームはバリエーションもいろいろですが、「スタークラフト」のように敵を撃破して目的を達成するタイプが人気です。
また、戦略性が高く知能戦が期待できる「リーグ・オブ・レジェンド」のような作品もゲームファンからの関心は高いといえるでしょう。リーグ・オブ・レジェンドはマルチプレイヤー方式がとられ、複数のプレイヤーがチームを組みながら、操作技術だけでなく知能でも相手チームを上回るためにぶつかります。(※1)
※1【MOBILE CENTER】eSportsとは
一般ゲーマーよりもはるかに高度なプロゲーマーたちの戦いは、ゲームの可能性をユーザーたちにプレゼンすることにより、販促効果もあります。そのため、多くの企業がeSportsに参入し、市場規模は年々拡大してきています。
eSports先進国ではプロゲーマーとして生計を立てている人がいる
eSportsを「ゲームの大会」と言うと、一般的な日本人は「コアなゲームファンが集う趣味のイベント」と思い込んでしまいがちです。しかし、eSports先進国であるアメリカでは、日本人の先入観を超えた規模と認知度があります。
動員数は数万人レベルで、会場の盛り上がりも尋常ではありません。スタープレイヤーは羨望の眼差しで見られ、CM契約なども膨大です。すでにアメリカでは国家がeSportsをスポーツの一部として認めており、プレイヤーたちはスポーツ選手用のビザを取得して、プロとして生計を立てています。アメリカはスポーツとエンターテイメントの大国と呼ばれていますが、両方の要素を満たしているeSportsの需要も高騰しているのです。
アメリカ以外の国々でもeSportsの人気は急上昇しています。経済や社会の発展がめざましい韓国や中国でもeSportsのスケールは拡大しており、日本以上に認知が浸透しています。
プロゲーマーと呼ばれる人たちはどれくらい稼いでいるの?
スポンサーと契約して、eSportsに臨むプレイヤーたちは「プロゲーマー」と呼ばれています。プロゲーマーの主な収入源はスポンサーから支払われる給料であり、トップゲーマーともなれば基本的な給料だけで一般人の平均収入を大幅に上回ります。それに加えて、CM出演やイベントへの招待、メディア露出などの単発的なギャラが加算され、人気に応じて年収はうなぎのぼりになっていくシステムだといえるでしょう。年収1億円を超えるプロゲーマーもいます。(※2)
※2【eNNgamers】プロゲーマーの収入源
忘れてはいけないのは、大会賞金もプロゲーマーの収入になる点です。最大級の大会になると優勝賞金は1億円単位にもなり、一流プロゲーマーは他分野の一流アスリートにも劣らない生活を送っています。一方で、給料だけで年収400万円程度のゲーマーもいれば、他の仕事と兼業しなければ暮らせないレベルの駆け出しプレイヤーも少なくありません。
日本ではeSportsはどのような扱いをされている?
日本でもゲームの大会が全くないわけではありません。開催されればゲームファンを中心にある程度の盛り上がりは見せます。しかし、アメリカや韓国などのスケールに比べれば、まだまだ日本のゲームはスポーツ化が進んでおらず、認知度が低いといえるでしょう。
日本では従来から「スポーツ」という言葉の定義が「身体を使った運動」に限定されており、ゲームを「スポーツ」と認識する感覚がありません。ゲームを「ただの遊び」とする日本的な価値観は、プロスポーツとしてゲーム大会を開催する上での弊害となっています。
また、優秀なゲーマーが国外に出て行ってしまうのもeSportsが日本で発展しない要因でしょう。
世界的に有名な日本人ゲーマーもいますが、いずれもレベルの高い試合と賞金を求めて海外のチームと契約しています。国内では人気プレイヤーの数が不足しているので、eSportsの知名度が今ひとつ上がらないのです。
今後日本でもeSportsは普及していくのか?
日本でeSportsが普及しない理由の中でも、厄介なのが法律との兼ね合いです。
日本では多額の賞金をかけた娯楽の大会を催すと「カジノ」「ギャンブル」とみなされ、「賭博罪」や「風営法違反」にあたります。(※3)
※3【4game.net】日本で高額賞金のe-Sports大会を開催するには?刑法賭博罪・景表法・風営法による規制が解説されたセッションをレポート
ゲームはあくまでも娯楽と考える風潮が強い日本ではeSportsが乗り越える法的なハードルが高く、急速にeSportsが浸透するのは難しいでしょう。
それでも日本でeSportsが人気になる可能性が全くないわけではありません。eSportsの世界では日本製のゲームもたくさん登場していますし、日本人トッププレイヤーも人気です。徐々に日本のメディアでもプロゲーマーの存在が取り上げられるようになってきました。
eSportsのスポーツ的価値と市場的価値がもっと広く理解されれば、近い将来、日本国内でも大規模なeSportsの大会が本格的に開催される日もやってくることでしょう。
(CREATIVE VILLAGE編集部)