CG・映像制作会社・有限会社ライスフィールドを設立し「奥さまは魔女- Bewitchedin Tokyo」(TBS)、「絶対彼氏」、「すぽると!」、「M-1グランプリ2006~2008」等の作品に参加する一方、映画監督としても着実にキャリアを積んでいる松田圭太監督の最新作『パーティは銭湯からはじまる』が2012年12月1(土)より公開されます。
本作の見どころや松田監督のこれまでの生い立ち、またクリエイターへのアドバイスなど、お話しを伺いました。
「・・・違う、この業界じゃない。」
物心がついた頃からずっと野球をやっていて、野球のことしか考えていなかったですね。でも大学に進学したあたりから、「これ以上は望めない」という自分なりの限界を感じたんです。
就職するなら「手に職をつけたい」と思っていたときに、ちょうど2000年問題もあり未経験でも今後勢いを増しそうなソフトウエア会社に就職できたんです。そこでは怒涛の日々を過ごしていましたが、やっぱり”ものを作る”という作業自体は好きでした。コンピューターでプログラムを打って、自分が作った通りに動き、ひとつのものを完成させることに喜びは感じていました。
ですが2000年問題が終わった頃、会社の先輩に何気なく「少なくともこれで10年は食っていける」と言われたんです。その言葉がひっかかり、10年後の自分をイメージしてみた時に、「・・・違う、この業界じゃない。」と思ったんです。「本当にこのままでいいのか?」と自問自答をしていたときに、あるCGクリエイターが転職したインタビュー記事を読んだのがきっかけで、「自分も今からでも間に合うかもしれない」と思い、脱サラしてデジタルハリウッドでCGの勉強をはじめました。
というのも本当はマスコミ業界や映画業界に興味はあったのですが、美大や芸大に行っていないとダメなんだろうなぁと思ってどこかで諦めていたんですが、もともとSF映画が好きだったので、ああいったものを作ってみたいと思ったんです。
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今回の映画も所々にゲームの要素を取り入れていますが、昔はゲームが好きで周りがファミコンをやっているのに自分だけはマイコンと呼ばれていたMSXで遊んでいました。すごく単純なのですが自分でゲームが作れるので、それが楽しかったですね。逆に他のゲームではシミュレーション版の野球ゲームしかしていませんでした(笑)
映像業界でCGを駆使したいい映像を作りたい
学校を卒業したものの2~3年はまともなものを食べられないような生活でしたね。だからCG以外にWebの仕事をしたりしていました。そんな頃にフジテレビのCGディレクターがADを募集しているという話があり採用され、現場に行くようになりました。ほとんど”付き人”のような感じだったので、現場はもちろん美術打ち合わせなどまで本当に幅広く経験させてもらいました。その結果、CGデザイナーとして『ロング・ラブレター~漂流教室~』などといった様々な作品に携わることができました。
ずっとフリーランスの状態で仕事をしていたのですが、少しづつ横の繋がりも築けて仕事を請ける機会が増えてきました。「映像業界でCGを駆使したいい映像を作りたい」とう思いも強まり、思い切って自分の会社を立ち上げたんです。
CGの勉強をした後に現場に出て感じましたが、CGというのはTVであれ映画であれ媒体が変わっても需要があるんです。CGはいわば”箱庭”のようなもので、積み重ねた努力や時間さえあれば自分の思い通りになるんです。
ただ撮影現場ではそういうわけにはいかず、特に当時はCGがわかる人が全くいなくて、しかもそれぞれのポジションについているキャリアのある方々に一から説明しないといけなかったのが大変でしたね。でもモニターの前で作業しているだけでなく現場にも足を運んで一貫して映像制作に関わることができたおかげで、昔は未知だった製作の裏側が見えてきて、映画を撮りたいとも思い始めました。
まずは自主映画を撮って出品してみましたが全然ダメでした。だから他の手段はないのかと模索し、視点を変えて、企画書とCGを取り入れた作品の売り込みをはじめてみたんです。そしたらたまたま1社目に営業した芸能事務所でなんとすんなりと受け入れてもらえたんです。更に、そこから3~4年かかりましたが、『エレクトロニックガール』という作品ができあがりました。そのときは脚本から監督まで担当しましたが、脚本はいろんな本を読んで独学で勉強しました。
「パーティは銭湯からはじまる」あらすじ
20代前半に一世を風靡した人気ゲーム「風の伝説」を手がけた元ゲームクリエイター、花島(徳山秀典)。しかし今では父親(斎藤洋介)が経営するしがない銭湯の跡継ぎとして、人生の目標を失ったまま毎日をなんとなく楽しく過ごしていた。今日は2月29日、花島の30回目の誕生日。
そんな記念すべき日にも、流行に敏感なキザ男・風間(須賀貴匡)、筋肉バカの鳥谷(高野八誠)、金持ちの一人息子・月野(佐藤永典)と湯船に浸かって合コンの作戦会議中。「今日をパーフェクトに決めて、30代最高のスタートを切ってやる!」と意気込んで店に繰り出した花島は、望(波瑠)と名乗るお目当ての女性にアタックするが、泥酔してあえなくダウン。しかも望が店長(宮川一朗太)の妻だと分かって、30代最低のスタートを迎えてしまった・・・。
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ところが、意識を失った花島が目覚めると、そこは合コンに向かう前の湯船の中。仲間たちの会話もそのときのまま。状況が飲み込めず焦る花島だが、よくよく考えればもう一度スタートラインに戻ってきたということ。気合を入れ直していざ出陣!・・・したまではよかったが、話の展開を先回りする作戦が裏目に出て、やっぱり思い通りにはいかず敢えなく玉砕・・・と、またまた元の銭湯に戻ってきてしまった。さすがの花島も不安を抱き、なんとかこのループ現象から抜け出そうともがくものの、事態はどんどん悪くなるばかり。怪しいオカマ軍団や街のチンピラやループを操る謎の大ボスの襲撃をかわし、花島は明日をつかむことができるのか?
“明日を夢見る心がある限り、愛を信じる心がある限り、風はやまない!”―自ら開発したゲームの名台詞を胸に、自分を見つめ直して本当のスタートラインに立った花島の戦いが、今始まる・・・!
お気に入りは、吉祥寺にあるハモニカ横丁を魚眼レンズで撮っているシーン
本作ではプロットまでを考え、脚本は作ってもらいました。スケジュールは厳しかったのですが比較的自由にやらせてもらえて、撮影自体は深夜に及ぶことなく5日間で撮り終えました。編集は逆に2ヶ月ほどかかりましたね。編集はFinal Cutを使ってすべて自分でやります。
変身ポーズなどは実は役者さん自らが振り付けをしています。放っておいたらいくらでもやってくれるんです(笑)今までこういった役を演じた事がなかったようで、みんなノリノリで楽しんで演じてくれたのでシーンごとにアドリブが生まれるのが新鮮で面白かったですね。
特にお気に入りのシーンは、吉祥寺にあるハモニカ横丁を魚眼レンズで撮っているシーンで、こじんまりとした通路を一気に撮るといった手法を昔からやりたかったので、念願の夢が叶って嬉しかったです。
また、CGの部分については社員にお願いするのですが、それぞれの得意不得意があるので、自分が監督する作品ではなるべくやりたいことをやらせてあげようと思っています。CGシーンはPhotoshop、Illustrator、3dsmax、After Effectsを使って制作します。
岩井監督の映画は当時の日本映画の中でも異質な感じ
好きな映画と聞かれるとたくさんありすぎて困るのですが、影響を受けた作品はエイリアンシリーズですね。映画も見ましたし、完全版のDVDも持っています。あとは本も買って読んでいるくらいにロバート・ロドリゲス監督が好きで、特に『デスペラード』や『シン・シティ』がお気に入りです。
邦画だと岩井俊二監督の『スワロウテイル』と『花とアリス』が好きです。岩井監督の映画は当時の日本映画の中でも異質な感じがしていましたね。
いい意味でもこだわりすぎないように心がけています
基本的に脚本やコンテは全体の構成を考え理詰めで埋めていきます。コンテ作業では被写体の上手・下手の配置と構図、カメラポジション、レンズサイズ、台詞の書き換えなど、完全に最終のイメージまで作っちゃうので、下準備には余念がないですね。それをやっておかないと僕自身が現場で演出できないと思ってます。
とはいえ現場に入ったら、そのイメージが実現できるかといったら必ずしもそんなことはないので、イメージはあくまでもイメージ、現場は現場の空気を大事にして、いい意味でもこだわりすぎないように心がけています。
しっかりした骨組みができていれば自分の思惑と違う方向にいっても、まとめ方がわかっているので問題ありません。だから、現場ではそれぞれのプロに委ねていこうと思っています。もっと言ってしまうと想像通りに撮れても面白くないんです。想像していなかったサプライズが起きたときにもっといいものが撮れたりするんですよね。
また、現実に近いものを撮れば面白いのではなく、面白いものを撮るためには”現実的”であればいいと思っています。
「やりたい」とか「撮りたい」といった強い思いが大切です
とにかくやってみないことには何も始まらないし、やってみないとわからないことばかりなんです。例えば映画の学校に入ったから映画がとれるとか、逆に映画の学校に行っていないから無理ということではなく「やりたい」とか「撮りたい」といった強い思いが大切です。誰かが手伝ってくれるわけではないので、とにかく自分でやるしかないんです。そして実際にやってみると、自分に何ができて何ができないのかというのが明確になっていくんです。
本気でやれば、本気で返ってくるし、本気でやり続けていれば、いつかそれが誰かの目にとまります。だからチャンスを掴むためにも時間があるときに話をつくったり、いつも常に何かを考え続けていないといい作品は作れないと思います。
<銭湯>からはじまり<銭湯>へ戻る!?話題のタイムスリップ・ラブコメディ!
パーティは銭湯からはじまる
2012年12月1日(土)よりシネ・リーブル池袋にて公開
■キャスト:徳山秀典/須賀貴匡/高野八誠/佐藤永典/波瑠/ 有末麻祐子/倉岡生夏/安藤成子/内田流果/宮川一朗太/斎藤洋介■製作:安西崇/井本直樹/松田圭太/吉見秀樹■監督・編集:松田圭太■脚本:ビーグル大塚■プロデューサー:片山武志/大垣修也/吉見秀樹■配給・宣伝:日本出版販売
■公式サイト
© 2012 「パーティーは銭湯からはじまる」製作委員会