上記に比べると、普段それほど注目されることのない職種ですが、ゲームが仕様通りに動くためにはデバッガーの存在が欠かせません。
本コラムではそんな縁の下の力持ち、デバッガーの仕事について詳しく解説します。第一回目は、品質管理業務の仕事内容や気になる年収についてです。
デバッガーになるには?仕事内容と必要なスキル
ゲームをプレイしていたら突然画面が停止してしまったり、普段は進むことができない地面の中に埋まってしまってビックリした!という経験は誰しもあるのではないでしょうか。
このような不具合のことをバグと言い、ゲームが仕様通りに動くかどうか検証してバグを発見・報告し、正しい挙動になるようバグを取り除いて製品の品質を高めていく作業のことを「デバッグ」と言います。
バグを取り除くのはエンジニアが担当しますが、専任でバグを見つける作業をする人のことを「デバッガーと呼びます(テスターと呼ぶ会社もあります)」。
今回からゲーム開発の現場で縁の下の力持ち的な存在のデバッガーについて解説していきます。
ゲーム業界の登竜門にもなっているデバッガーの世界を知りたい方は、ぜひご一読ください。
- 品質管理業務とは
- デバッガーの仕事内容
- デバッガーのニーズと将来性
- デバッガーとして働く
- デバッガーの年収
- デバッガーに向いている人
- デバッガーに必要なスキル
- デバッガーに必要な資格
- 未経験からゲームの開発職を目指す
- まとめ
品質管理業務とは
デバッガーは企業の品質管理部門に所属し、お客様が望む品質の製品やサービスを提供するための品質管理業務を担当します。品質(クオリティ)だけでなく、価格(コスト)や納期(デリバリー)も価値に見合うものにしなければなりません。そのため、デバッガーだけでなく、製品開発のプロジェクトに関わる全ての職種で行っていくのが理想です。
デバッガーの仕事内容
ゲーム開発の現場におけるデバッガーの主な仕事内容は、ソフトウェアをテストプレイ(検証)してバグ(不具合)を洗い出すことです。デバッガーが報告したバグがプログラマーによって修正されたら、再度、正しく修正されたかどうかを確認します。この繰り返しによって、ソフトウェアやサービスの品質を高めていきます。
ゲームの開発が始まると、各職種の担当者が企画者の意図通りにシナリオやグラフィック、サウンドの素材をパート毎に作成していきます。プログラマーは出来上がったいくつもの素材を統合し、まずはアルファ版としてゲームを動かせる状態まで作成します。 この状態ではまだゲームとして完成していません。
アルファ版と仕様書を受取ったら、デバッガーは動作に問題がないか、仕様書と違っている個所はないかを確認していきます。仕様書に書かれていない項目は開発者に質問し、バグや問題点を報告します。 報告されたバグをプログラマーが修正しながらベータ版を作成します。同じようにベータ版をテストしてバグを潰し、難易度について調整しながら、最終的にマスター版を完成させてリリースを目指します。
さらに、ゲーム発売後もデバッガーの作業は続きます。現在はネットワークを通じてゲームをアップデートすることができます。開発中には発見することができなかったバグを直すための修正パッチを作成したり、ゲームが長く遊べるように追加コンテンツをリリースしたりする際は、開発に携わったデバッガーの経験や声が活きるため、デバッガーの存在はゲーム開発に欠かせない仕事です。
デバッガーのニーズと将来性
ゲーム業界の急速な発展に伴い、デバッガーの需要は着実に増加しています。この傾向は今後も続くと予想され、デバッガーは将来性のある職業として注目を集めています。需要増加の主な要因としては、ゲームコンテンツの複雑化、開発スケジュールの短縮、プラットフォームの多様化、そしてeスポーツ市場の成長が挙げられます。
ゲームの規模拡大とコンテンツの肥大化により、デバッグ作業の重要性が増しています。同時に、タイトな開発スケジュールの中で効率的なデバッグ作業が不可欠となっています。さらに、スマートフォン、PC、コンソールなど、様々なプラットフォームに対応するゲーム開発が増加しており、検証すべき項目も増加しています。加えて、eスポーツ市場の拡大に伴い、関連するゲーム開発も活発化しており、デバッガーの需要を押し上げています。
デバッガーとしてのキャリアには、様々な発展の可能性があります。デバッグ経験を活かしてプログラミングスキルを磨き、ゲームプログラマーへとキャリアアップすることができます。また、ゲーム開発の全体像を理解することで、システムエンジニアとしての道も開けます。経験を積むことで、デバッグチームを統括するデバッグリーダーの役割に就くこともできるでしょう。
将来性を高めるためには、いくつかの重要なスキルが求められます。地道な作業を継続する根気強さ、バグの原因を特定し効率的に問題を解決する論理的思考力、開発チームと円滑に情報共有を行うコミュニケーション能力が不可欠です。さらに、AIなどの最新技術に対応できる柔軟性も将来的に重要となるでしょう。
デバッガーの需要は、アプリケーション開発の増加に比例して拡大すると予測されています。ただし、将来的にはデバッグツールの進化により、人員の効率化が進む可能性もあります。そのため、常にスキルアップを心がけ、付加価値を高めていくことが重要です。デバッガーとしてのキャリアを築くには、技術の進化に合わせて自己研鑽を続け、ゲーム開発プロセス全体への理解を深めていくことが求められます。
デバッガーとして働く
ゲーム開発の現場において、デバッガーは縁の下の力持ち的な存在です。表舞台に立つことは少ないものの、その役割はゲームの品質向上に欠かせません。バグの発見は地道で根気のいる作業ですが、その一つ一つの発見が、ゲーム全体の品質を大きく向上させる可能性を秘めています。
デバッガーの仕事は単なるバグ探しにとどまりません。開発チームと密接に連携しながら、発見したバグの修正プロセスに関与し、時にはゲームバランスの調整や改善提案を行うこともあります。この過程で、ゲーム開発の全体像を把握し、プレイヤー視点からの改善点を提案できる貴重な存在となります。
特に、近年のゲーム開発では、プレイヤーの体験を重視する傾向が強まっています。デバッガーは、プレイヤーの立場に立ってゲームを検証することで、ユーザビリティの向上やゲーム体験の最適化に大きく貢献します。この役割は、ゲームの成功に直結する重要な要素となっています。
さらに、デバッガーの仕事は、ゲームのリリース後も続きます。ライブサービス型のゲームが増加する中、継続的なアップデートやバグ修正、新コンテンツの追加において、デバッガーの経験と知識は不可欠です。これにより、ゲームの長期的な成功と、プレイヤーの満足度向上に寄与しています。
デバッガーの努力が実を結び、最終的にプレイヤーから高い評価を得られたときの達成感は、他の職種では味わえないものがあります。自分たちの地道な作業が、多くのプレイヤーに楽しみや感動を提供するゲームの完成に繋がるという実感は、この仕事ならではのやりがいです。
また、デバッガーとしての経験は、ゲーム業界内での幅広いキャリアパスにも繋がります。品質管理の専門家としてのスキルを磨くことで、QAマネージャーやプロジェクトマネージャーへのキャリアアップの可能性も開けます。さらに、ゲームデザインやプログラミングなど、他の分野へのキャリアチェンジの足がかりにもなり得ます。
このように、デバッガーは表面上は地味な仕事に見えるかもしれませんが、ゲーム開発の成功に不可欠な役割を担っています。プレイヤーの満足度向上に直接貢献し、ゲーム業界全体の品質向上に寄与する、やりがいと将来性に満ちた職業といえるでしょう。
デバッガー・QAエンジニア(正社員)転職・中途採用・求人情報
デバッガーの年収
デバッガーの年収は、雇用形態や経験によって大きく異なります。アルバイトや契約社員の場合、年収は約200万~350万円程度が一般的な相場となっています1。正社員として雇用された場合、20代で200~300万円、30代で300~500万円程度となることが多いです。
経験を積み、高度なデバッグスキルを習得することで、年収は上昇する傾向にあります。特に複雑なバグの発見や再現が難しいバグの再現手順を確定させる能力は高く評価されます。デバッガーのスペシャリストとして認められれば、年収500万円以上を目指すことも可能です。
さらに、デバッグリーダーやQAマネージャーなどの管理職に昇進することで、年収は更に増加する可能性があります。40代になると、実力次第で年収600~700万円に達する事例も報告されています。
ただし、これらの数字は平均的な範囲であり、個人のスキル、経験、勤務する企業、プロジェクトの規模などによって大きく変動する可能性があることに注意が必要です。
デバッガーに向いている人
ゲームにかける情熱のある人がデバッガーに向いています。ゲームを愛し、プレイヤーから賞賛されるゲームの開発に携わりたいと常々考えている人にぴったりの仕事です。他にも新しい事を習得することが好き、同じことを繰り返しても飽きない、発想力・想像力が豊か、好奇心が旺盛な方も向いているでしょう。
デバッガーに必要なスキル
発見したバグの報告が主な業務になります。出来事を正確な言葉で表すことができるスキルが必要です。 また、プランナーやプログラマーといった開発者と議論を交わせるレベルのデバッガーはとても貴重です。開発の現場では、「本当にこの難易度が適切なのか?」「難しすぎて誰もクリアできなかったらどうしよう」「簡単すぎてすぐに飽きてしまわれないだろうか」といった様々な悩みが発生するシーンが多くあります。しかし、その時適切な意見を伝えられるデバッガーには、開発者との信頼関係が生まれます。そのためにもコミュニケーション能力を磨いておく必要があります。
デバッガーに必要な資格
デバッガーになるために、必要な資格は特にありません。ただし、パソコンでの仕事が多く、ゲームの仕様書がワードやエクセルで書かれていることからオフィス系のアプリケーションを扱えるスキルは必要です。短時間に正確な報告が求められる現場では、タイピング技能が高いことで評価を得られる会社もあります。 また、バグの報告には専門のトラッキングシステムを用いる会社が多く、RedmineやBacklogなどプロジェクト管理ツールの知識があると有利です。
未経験からゲームの開発職を目指す
ゲーム開発の現場で働きたいという希望があっても、経験やスキル、知識が乏しいと就業は難しくなります。だからといって何も動かなければ夢を掴むことはできません。最初のとっかかりとしてデバッガーになってゲーム業界で働くことで業界の知識や経験を深めたり、コネクションを作ることで新たに進む道を切り拓くことも可能です。
どうしてもゲーム開発がしたいという熱意があればぜひデバッガーとして最初の一歩を踏み出してみてください。
まとめ
リリース直前になるとデバッガーの仕事は多忙を極めます。しかし、リリースされた製品が評価されたり、セールス的に成功したりすれば、大きな達成感を得ることができます。開発に携われば、ゲームのエンディングで流れるスタッフロールに自分の名前が表示されるという密やかな夢も叶えることができます。 評価の高いデバッガーになるには、地道にバグを見つける執念と根気、それに高いコミュニケーション能力も必要とされます。自分の報告によって、ゲームの品質がどんどん良くなっていくのを間近で見られる機会はなかなかありません。ゲーム好きな方にとっては魅力のある職種の一つです。デバッガーのスペシャリストを目指してみましょう!