SNSアプリ、ショッピングアプリ、Webアプリなど、現在では多くの人とって身の回りの日常がアプリケーションで埋め尽くされています。日常生活において役立つアプリの数々もすべて、アプリケーションエンジニアという技術者の手によって作られています。
では身近で使用するアプリはどのようにして開発されているのでしょうか。アプリケーションエンジニアがどんな仕事をしているのか、その労働環境、年収、必要なプログラミングスキルについても興味深いところです。「プログラミングの知識はないけど、アプリ開発には興味ある」という未経験者の方も含めて、アプリケーションエンジニアという職業を掘下げて紹介します。
アプリケーションエンジニアとは?
アプリケーションエンジニアとは、ITシステムに含まれるアプリケーションを作るエンジニアです。ITソフトや企業の業務をシステム化・効率化します。一口にアプリケーションと言っても、Web上で利用できるWebアプリケーション、スマホにインストールするアプリケーションなど、その種類はさまざまです。まずはアプリケーションエンジニアが開発に携わるアプリケーションの種類を3つ紹介します。
その1:業務系アプリ開発
クライアントが抱えている経営課題を解決するために業務効率化を果たすアプリケーションの設計・開発をします。ITソフトのパッケージ製品や企業内の業務システムなどの設計、プログラミング、動作テストなどがメインです。銀行ATMなどの社会的なインフラに関わることもあります。
その2:Webアプリ開発
ブラウザで利用できるWebアプリを開発します。アプリケーションはPCやスマホにインストールするだけではなく、Web上で利用することも可能です。身近なところでは、TwitterやFacebookなどのSNS、Gmail・Yahoo!メールはインストールせずにブラウザで利用できます。これがWebアプリです。実際には、ポータルサイトやショッピングサイトなどを手掛けることが大半になります。
その3:スマホアプリ開発
スマホ用のアプリケーションを開発します。LINEが発表した「インターネットの利用環境の定点調査」によると、日常的なインターネット利用環境は「スマホのみ」が52%で最多でした。また、スマホ上ではブラウザよりもアプリの閲覧時間のほうが長く、多くの人がスマホアプリを利用しています。今後はさらにその傾向が強まることが予想されるでしょう。
アプリケーションエンジニアの仕事内容
情報システム開発プロジェクトにおいて、システム設計からプログラムの開発、開発したシステムの動作テストといった一連の作業を担当します。開発したアプリケーションの運用・保守も、アプリケーションエンジニアの仕事です。ソフトウェアやハードウェア、ネットワーク、データベースなど、システム開発に関わる幅広い知識が必要になります。
役職によっては、クライアントと直接やりとりする場合もあります。技術力や知識に加え、クライアントの要望を引き出すコミュニケーション能力が求められます。
アプリケーションエンジニアの気になる年収
一口にアプリケーションと言っても、SNSアプリ、ショッピングアプリ、Webアプリなど種類はさまざまだが、それらの需要は今度も伸長傾向にあるでしょう。したがって、アプリケーションエンジニアの需要も増えていくことが予想され、待遇面においても他の職よりも期待できる面があります。特に人々の生活に欠かせないスマホアプリ開発に関連する職種は高収入が期待できそうです。
特に年収が高いのはiOSエンジニアという調査結果も
スマホアプリ開発事業などを展開する init株式会社が公開した「ITエンジニア年収実態調査2021」によると、Webエンジニア(フロントエンド、バックエンド)、iOSエンジニア、AndroidエンジニアをITエンジニアと一括りにしてアンケートを行った結果、iOSエンジニアがもっとも高年収を得ていることが分かりました。
出典:【iOSアカデミア】ITエンジニア年収実態調査2021
出典:【iOSアカデミア】ITエンジニア年収実態調査2021
WebエンジニアとiOSエンジニアの年収を比較すると、Webエンジニアの54%、iOSエンジニアの64%が年収450万円以上であり、iOSエンジニアの年収が高い傾向にあります。また、年収650万円以上のレンジでの比較では、Webエンジニア21.5%、iOSエンジニアが33%でした。
iOSエンジニアの年収が高い理由として、日本は諸外国に比べて「iPhone」のシェアが非常に高く、需要があることが挙げられます。もちろん、iOSエンジニアだけでなくAndroidエンジニアなどアプリケーションエンジニア全体の需要も増加傾向にあるだけに、有益な技術提供ができれば高収入も夢ではない職種だと言えるでしょう。
アプリケーションエンジニアに必須のスキル・言語
開発に必要な言語は、プロジェクトによって異なります。業務系アプリ開発ではJava、C、C#が多く利用されています。Webアプリ開発では、バックエンドではJavaやCのほか、RubyやPHPも多く使われています。フロントエンドの部分はHTML、CSS、JavaScriptで開発されています。幅広くニーズがあるのが、Java、JavaScript、Ruby、Python、Goだと言えます。AWSは多くの企業でよく使われているので、一通り設定から構築までできるようになった方が良いでしょう。
また、サーバーやMySQLなどのデータベースの知識も必要です。スマホアプリ開発では、iPhone用アプリであればSwift、Android用アプリであればJavaやKotlinが使われます。Xamarinという開発環境を利用すればC#、Cordovaを利用すればHTML5/CSS3/JavaScriptでそれぞれのスマホアプリを開発できます。
また、アプリケーション開発はグループで行うことが多いので、作業者としてはもちろん、プロジェクトマネジメント、プロジェクトリーダーの経験も積んでおいた方が良いでしょう。アジャイル開発が主流になりつつあるので、そういった開発方法に慣れておくことをおすすめします。OSにインストールして使うネイティブアプリ、OSにかかわらずどちらでも動くハイブリッドアプリの両用が開発できると重宝されるでしょう。
アプリケーションエンジニアに資格は必要?
アプリケーションエンジニアになるために、資格は必須ではありません。しかし、資格を取得すれば技術の証明になりますし、資格の勉強を通してスキルアップを目指すこともできます。
システムアーキテクト試験
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する国家試験です。コンピュータに関する基本的な知識、システム要件定義・システム設計をはじめとするシステム開発の各工程に関する知識、システム開発を行う際に必要な技術的知識、マネジメントに関する知識など、幅広い分野の知識が問われます。
難易度は非常に高く、合格率は例年10%台(平成28年度 13.9%)と取得は容易ではありませんが、合格すれば知識の証明になります。
参考資料:https://www.jitec.ipa.go.jp/1_11seido/sa.html
Android技術者認定試験
一般社団法人 IT職業能力支援機構 Android技術者認定試験制度委員会が実施するAndroid技術者としてのスキルを認定する資格です。
「アプリケーション技術者認定試験」と「プラットフォーム技術者認定試験」の2種類の試験、そして「ベーシック」と「プロフェッショナル」の2つのレベルが用意されています。
この試験は日本だけではなく世界160ヵ国で配信されており、世界で通用する資格です。
アプリケーションエンジニアに類似・関連する職種
システムエンジニア(SE)
システムエンジニア(SE)はアプリケーションエンジニアよりも広い範囲を指します。システムエンジニアは、情報システム全体を広く担当する職種です。システムエンジニアが構築するのは、主に情報システムであり、要件定義、基本設計、リリース前のテストなどが主な作業領域となります。一方、アプリケーションエンジニアが構築するのは、スマホアプリやWebアプリです。SNSアプリ、ショッピングアプリ、ショッピングWebサイト、企業サイトなどがメインとなります。
クライアントのヒアリングを行い、システムを設計するのが主な仕事で、基本的にコーディングはしません。
コーディングを行うこともあるアプリケーションエンジニアとは、その点で異なります。
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フィールドアプリケーションエンジニア(FAE)
フィールドアプリケーションエンジニア(FAE)は、アプリケーションの専門的な知識を活かし、営業をサポートします。クライアントと直接やりとりするため、技術的な知識に加えコミュニケーション能力も必要です。希少性が高い、すなわち市場価値が高い職業で、高額な年収が期待できます。主に半導体・電子部品メーカーの技術営業職を指します。
アプリケーションエンジニアの転職環境
IT業界は慢性的な人手不足で、アプリケーションエンジニアも不足しているのが現状です。特にアプリ市場は拡大し需要が高まっているため、未経験者を採用する企業も増えています。経験者だけでは人員が確保できず、未経験からの転職を受け入れている企業も少なくありません。
またプログラミング言語の知識や技術力に加え、より良いシステムをつくり出すためのアイデアや改善を提案する力やプロジェクトマネジメントスキルがあれば年収アップも可能です。現在の職場の待遇に不満があるのなら、転職を考えてもいいかもしれません。
アプリケーションエンジニアのキャリアパス
アプリケーションエンジニアとしてキャリアを積んだ後、想定されるいくつかのキャリアパスがあります。
PM(プロジェクトマネージャー)
PMはプロジェクト全体を管理・指揮します。具体的には、開発計画の立案や開発中の進捗(しんちょく)管理、開発後の評価・レビューなどです。クライアントと予算や納期などを打ち合わせ、SEとプログラマーなどのチームを監督します。ITエンジニアとしての経験・スキルだけでなく、コミュニケーション能力や経営者目線でのマネジメント能力が求められます。
ITコンサルタント
業務を効率化したり、システムの課題を解決したりする方法を提案するのがITコンサルタントの仕事です。
企業経営を支援するITシステムを企画・立案します。
ITの知識だけではなく、課題を解決するための分析力、コンサルタントとしての経営の知識、プロジェクトをまとめるマネジメント能力が必須の職種です。
経営者として独立
企業に雇用される立場にとどまるのではなく、新しいプロダクトを開発するなどして会社を立ち上げることも可能です。
IT業界では、技術者が起業する例が少なくありません。IT系ベンチャー企業のほとんどが、何かしらのアプリ開発に関わっているといっても過言ではないのです。
そういう意味では、とても夢のある職業だと思います。
上記のように転身するのではなく、アプリケーション開発のスペシャリストとして技術を磨き続ける道もあります。
アプリケーションエンジニアのやりがい
決して楽な仕事ではありませんが、アプリケーションが完成したときには何物にも代えがたい喜びがあります。アプリケーションを実際に運用して業務が改善されたり、リリースしたアプリケーションが人気になったりすれば、その喜びはさらに大きくなります。プロジェクトはチーム単位で組まれるので、メンバー全員が喜びを共有できるでしょう。また、スキルが評価と直結する職業であり、努力次第で年収や地位が向上するのも魅力です。
スキルの高いアプリケーションエンジニアの将来性は明るい
【アプリケーションエンジニア 年収 言語のまとめ】
- アプリケーションエンジニアはITシステムに含まれるアプリケーションを作るエンジニア
- スマホアプリ開発など需要増の職種は特に高年収が期待できる
- スキルを磨けばさまざまな領域にチャレンジできるなどキャリアアップも
アプリケーションエンジニアには業務系アプリ開発、Webアプリ開発、スマホアプリ開発などの職種があります。この記事で紹介したそれぞれの違いを踏まえ、希望する分野のスキルを磨いていきましょう。アプリケーションエンジニアとして働くイメージが湧いた人は、自身の志向する方向性でキャリアプランを練ってみることをおすすめします。
幅広い専門知識が必要な職種ですが、多くの企業が人材を求めています。高いスキルを身につければ、高い年収を得ることは可能です。IT投資は盛んなため、長期的なニーズも見込めます。スキルさえあれば安定して働くこともできるでしょう。
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