12/25(土)より公開する映画『アブラクサスの祭』のプロデューサー押田 興将さんに、これまでの生い立ちやクリエイターへのアドバイスなど、お話しを伺いました。
なれなそうで、なれそうなもの
幼い頃は栃木の山奥で育ち、小学校2年生の頃の夢は『神様になること』でした(笑)
とにかく“大きいもの”を作るのが好きで、ある年の夏休みの宿題では“巨大凧”を作りました。せっかく作ったんだからということで、凧に友人を縛りつけて10人くらいでひっぱって、飛ばしてみようってことになったんですよ。
もちろん飛ぶわけもなく、凧ごと友人をズルズル引きずっちゃったなんてこともありました(笑)
中学校は、3年間のうちの半分くらいしか行ってなかったですね。高校も推薦で落ちたので、同じ高校をもう一度受けて合格したものの、3日しか行かなくて。母親に「3日坊主」と言われてカチンときたので、4日目まで通って辞めました(笑)
その後はバイクを乗りまわす日々を送っていましたが、17歳のころに大きな事故を起こしてしまって、バイクが大破しました。僕は天才的にコケるのがうまかったんで無傷でしたけど(笑)
でも、この日を境にバイクはやめると宣言しました。その後もいろんな経験をしてきたんですが、あるとき、「自分の人生このままでいいのか?」と、将来を考えるときがあったんです。小さいときになりたかったものを思い出しながら、今の自分が“なれなそうで、なれそうなもの”を真剣に考えたました。
そして、頭に浮かんだのが、『映画監督』だったんです。
「映画監督になろう!」と決めたそのとき、テレビをつけたら、ちょうどスティーヴン・スピルバーグ監督のドキュメント番組をやってたんです。監督の「才能あるスタッフを募集している」というコメントを聞き、すぐさま、監督宛に「タダでいいから僕をつかってください!」といった内容の手紙を書きました。
当時エアメールの書き方も全然わからなかったので、宛先に「USA スピルバーグ様」とだけ書き、いざ投函。ご察しの通り、3日後に宛先不明で戻ってきてしまいました(笑)
結局、映画監督になるために、友人に薦められた映画の専門学校へ行きました。
卒業制作にとりかかり始めた3年生の頃に、今村昌平監督の片腕でもあるゼミの教授について、空いた時間にドキュメントを撮る手伝いをしたのがきっかけで、卒業後も15年ほど今村昌平監督のもとで、現場をともにしました。
弟子として仕事をしながら、自分でも作品は撮ってました。ときにはタイトルのCGを作ったり映像の編集をすることもありましたね。
その中で最も印象に残っているのは、ドキュメント1本を7年もかけて撮ったことです。
今、振り返ってみると、僕が長く続けられたものは『映画』だけです。
好きな映画
初めて観た映画は、『宇宙からのメッセージ 』。ものすごく感動した映画は、『エレファント・マン』『翔んだカップル』『台風クラブ』です。
あと僕は「ビリキチ」です!ビリヤードが大好きで、30歳になってはじめたのですが、夫婦ではまってしまいマイキューも持ってます。
最後の一日にすること
仕事ではいろんな方をたくさん撮影しているのに、唯一自分の子供を撮っていないんです。
産まれた時も仕事が忙しくて3ヶ月会えなかったので、最後の日は一日中子供を撮って、完パケまでもっていきたいです。
ポケットにこっそりバリカンをしのばせて・・・
お坊さんなのに、12月25日のクリスマスにロードショー!映画『アブラクサスの祭』で、主役を演じるのはミュージシャンとして人気のスネオヘアーさん。
スネオヘアーさんとの出会いは、前作の映画『恋するマドリ』で音楽を担当してもらったのがきっかけでした。
ここだけの話、出演オファーをするとき「スネオヘアーさんが坊主頭にするのをダメだといわれたら、僕の頭を坊主にして説得するしかない!」と思い、ポケットにこっそりバリカンをしのばせていました(笑)でも、そんな必要は全くなく、快諾してもらえましたので、ひと安心でした(笑)
主演であるスネオヘアーさんに断られてたら、どうなってたんだろう・・・と思うくらいイメージにぴったりで、キャストに本当に恵まれたなぁと思っています。
今回の映画がよくなるためには、“時間”をかけることだと思いました。
限られた予算の中でとにかく“時間”にお金をかけました。
“時間”をつくるために、自分でできることは自分でやらなければならず、それが一番大変でしたね。
作った“時間”をたくさん費やしたのは芝居決めのところです。
芝居の構成を綿密に決めて、芝居にあったカメラワークをすることによって、役者は芝居に集中できる。そう思って、役者とスタッフのディスカッションの時間を最大限につくりました。 それから、映画の中で繰り返し出てくる「ノイズ」の扱い方についてはかなり悩みましたね。実は、今でもどっちがよかったのか分からないシーンがあります。
奴隷の状態を楽しめる才能
とにかく「創作するのが好きである」というのが大前提。
特にこの業界ではたくさんのクリエイターがいるから、本当に好きじゃないと続けられない。 厳しいことを言うと、好きじゃないんだったら、途中で辞めるくらいだったら、最初からやらないでほしいです。
映画製作は雑用が多いんですよね。“奴隷”というと言いすぎかもしれませんが映画製作の現場は本当に過酷なので、自分で楽しいところを見つけていって、それを実践していくと、知らぬまに自分の力になっていきます。
“見えない部分”も映画製作には重要な要素だということを忘れないでほしいです。『辞めない』才能や『奴隷の状態を楽しめる』才能っていうのも大事ですね。
それから、“素材”が面白ければ、ジャンルは関係ないと思います。映画製作はとにかく技術があるかどうかが一番だと思います。経験を積んでいくと表現する幅がどんどん広がっていきます。
映画をたくさん見て、たくさん作る、それが技術につながる近道だと思います。
12/25(土)よりテアトル新宿ほか 全国順次ロードショー
10/9(土)より福島県先行ロードショー
監督・脚本:加藤直輝
原作:
玄侑宗久『アブラクサスの祭』(新潮文庫刊)
エンディングテーマ:「ハレルヤ」(曲レナード・コーエン)
歌=スネオヘアー+ともさかりえ
出演者:
スネオヘアー、ともさかりえ、本上まなみ
小林薫、村井良大、ほっしゃん。
かつて元ミュージシャンだった禅僧・浄念は、音楽への狂おしい思いからノイズが聞こえるようになり、ウツ病患者として入院した過去を持つ。
禅僧になっても自分の「役割」を考え続けているが、なかなか思うように答えはでない。
そんなある日、とある講演会で大失敗して落ち込んだ浄念は、自分の中で音楽への想いがたち切れていなかったことに気付く。この町でライブをやりたいと、強く思いはじめる浄念。住職の玄宗は良き理解者だが、地元ライブには困惑顔。妻の多恵も大反対。
そんななか、ある事件をきっかけにショックを受けた浄念は自分をコントロールできなくなるが―果たして浄念は答えを見出すことができるのか?本作品にちりばめられているのは「自分」をまるごと受け入れる“禅”的ヒント。
悩める浄念の生き方に心ゆさぶられる、まっすぐな映画が誕生しました。
正式招待決定!サンダンス映画祭2011
「ワールドシネマ・ドラマティック・コンペティション部門」
この映画際は、クエンティン・タランティーノやジム・ジャームッシュ、ロバート・ロドリゲスなどの映画監督や、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』や 『SAW』が発掘された映画祭です。
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