「秒速5センチメートル」「星を追う子ども」など映像美のきわだつアニメーション作品で注目を集め、世界各国の映画祭で評価を得ている新海誠監督。2013年に劇場公開された「言の葉の庭」は、靴職人を志す少年と歩き方を忘れた女性の物語で、監督自身最大のヒットを記録しました。その公開後、雑誌「ダ・ヴィンチ」にて映画では描かれなかった人物からの視点やエピソードも交えた小説版の連載がスタート。連載に書き下ろしを加えた単行本の発売を前に、新海監督にお話を伺いました。
とにかくこの作品だけは作り上げようと挑んだ『ほしのこえ』
今のようなアニメーション監督としての仕事に繋がったきっかけは、デジタル系のコンテストに応募したことでした。
もともとはゲーム会社のグラフィックデザイナーとしてオープニングムービーやパッケージデザインなどの制作をしていましたが、仕事をしていくうちに、ゲームのための映像ではなくて“自分で物語を作りたい”という気持ちが高まっていきました。
そこで会社勤めをしながら自主制作でのアニメーション制作を始めたんですが、客観的な評価も知りたくてコンテストへ応募するようになっていったんですね。1998年前後くらいからだったと思います。結果、いくつかの賞をいただくことができ、“もしかしたら、この道でやっていけるのかな”という想いが強まっていきました。そんな気持ちの中で『ほしのこえ』を作り始めました。