どの業界でも30代は「働き盛りの世代」だと言えます。家族を養っている方も多く、職場において昇進を続ける出世株も存在するのではないでしょうか。一方でさらなるキャリアアップを目指すのであれば、職を変える転換期にもなり得るタイミングと言えるでしょう。

ただし、若さと勢いで乗り切れる20代と異なり、30代の転職活動においては充分な根拠と勝算が求められます。本記事では、転職を検討している30代の方に向けて、転職活動の実情を紹介したうえで、どのように転職活動を進めるべきかについて解説します。

市場は若手重視!転職成功者の平均年齢は31.7歳

転職成功者の平均年齢グラフ

パーソルキャリア株式会社が運営する転職サービス「doda(デューダ)」は、2008年〜2021年の期間にサービスを利用したビジネスパーソン約28万人の転職年齢を調査し、2022年2月28日に結果を公表しました。

dodaの調査によると、2021年の転職成功者の平均年齢は31.7歳(男性の平均は32.5歳、女性の平均は29.9歳)となっており、2020年よりも平均年齢が0.3歳低下していることを認識しておきましょう。この背景には、コロナ禍において「即戦力」としての人材を中心に採用してきた企業が、若手のポテンシャル採用を再開していることがあげられます。
転職成功者の年代別割合グラフ

なお、職種によって年齢層に違いがあり、スキルや経験が必要な職種(「専門職系」「企画・管理系」「クリエイティブ系」など)に関しては、30代の転職成功率が高いことを覚えておきましょう。これらの職種では、35歳以上で約4割(30~34歳を含めると6割以上)を占めており、20代の割合が低くなっています。

30代の転職は実績重視であり、「即戦力」となる人材を求める業界では、スキルや経験、マネジメント能力をアピールすることで転職活動をスムーズに進められるでしょう。

30代転職は、資格をどう業務に活用できるかが重要

E-ラーニング中の画像

資格の有無よりも資格を踏まえた実績を重視

30代の転職者は、面接の際に「持っている資格を踏まえた実績、実践的なスキル(統率力や問題解決力、マーケティング能力など)」や「どのように資格を活かし、事業に貢献できるのか」という点をアピールする必要があります。

業務独占資格を保有しているのであれば別ですが、単なる民間資格を保有しているだけでは、他の候補者との差別化はできません。資格が有利になるのは、これまでの職務経歴において活かされてきた場合のみです。

30代の転職は実績や活躍の根拠がより重要に

転職に向けた準備として資格の勉強をする方がいらっしゃいますが、採用につながるとは限りません。30代の転職にとって重要なのは、勝算と根拠、戦略性です。

たとえば、プロジェクトを成功に導いて実績を作れば、利益を向上させられる能力をアピールできるようになります。また、転職エージェントへの登録もおすすめです。自分の能力に関して的確なコーチングを受け、エージェントのコネクションを通じて企業を紹介してもらいましょう。

企業が30代の転職者に求めるスキルと人間力

履歴書のイメージ

30代になると勤続年数を重ね、中堅社員やベテランなどといわれることも増える世代です。主任や係長、というようにグループをまとめるポストに就く人や、中には課長や部長などへ昇進する人も見られます。 そのため、企業は30代転職者に対して、これまで築き上げてきたものを期待しています。 しかし、転職を希望する側が、企業が求める「30代の社員像やスキル」を把握せずに転職活動を行っていると、転職を成功させるのは難しいでしょう。

30代の転職に求められる「マネジメント経験」と「即戦力性」

マネジメント経験と即戦力性

先に触れたように転職希望者に対しては、企業としても「これまでどのような業務に携わり、どのような功績をあげてきたか」といった点を重視します。在籍する企業で培われた人望なども探りつつ、その人の人間性も細やかにチェックしていきます。 企業は過去の「マネジメント経験」を最重要視し、「即戦力」として働ける人材か客観的に判断することが一番の肝ととらえましょう。

マネジメント経験

「マネジメント経験」とは、企業側が30代会社員に求める社員像のひとつです。要は、グループや部署内でまとめる立場を経験した人材を求めています。

管理職や主任、グループリーダーなど役職はさまざまありますが、目の前の業務に対して自分でどうすべきかを考え、部下に的確に指示できるスキルや、部下を育成するためにどうすべきかを検討し、部下に目標や意識を持たせてから行動させることがマネジメントです。 また、部下だけでなく、プロジェクトなどのグループメンバーの指導管理を行うこともあります。

会社の規模や業務内容などにも左右されるため、具体的な記述が難しい場合もありますが、職務経歴書などには、マネジメント経験として同僚や部下との立ち位置やプロジェクト経験などを記載していくと伝わりやすくなるでしょう。

しかし、中には上司やグループ統括者がいる状態でマネジメント経験が乏しい場合もあるはすです。その場合は自己マネジメントでも構いませんので、プロジェクト成功のために自分がとった行動や業務内容などを記載していきましょう。

即戦力性

新卒社員に対しては、就活中にはインターン教育を施し、内定式後にOJT教育や新入社員研修を重ね、入社式後には企業にすぐなじめるよう事前教育を行います。しかし、中途入社の場合は「社員教育がすでに完了した状態」の人材を受け入れるわけですから、転職希望者に対しては、すぐに企業の戦力として働ける力を求めます。

企業も保守的な考え方よりも、進歩したものの考え方とスピード性がなければ淘汰される時代です。転職希望者に対しては常に先を見据え、スピード感を持って企業のために動ける人材を求めています。いわゆる「セルフスターター型」の人材で、新天地で仕事を覚えながら若い世代を指導し育成できる人材が優遇されやすい傾向にあります。

即戦力として働ける人材かどうかアピールすることは難しいかもしれませんが、職務経歴書の中でどのような仕事をしてきたかなど、業務経験を詳しくまとめると伝わりやすくなります。

30代転職で年収は上がる?下がる?

年収アップのイメージ

厚生労働省が発表した令和3年上半期の「転職入職者の賃金変動状況」をみると、前職の賃金に比べ「増加」した割合は 34.2%、「減少」した割合は 36.6%、「変わらない」の割合は28.2%。全体的には転職入職によって賃金が減少している割合のほうが多い。
転職入職者の賃金変動状況

引用:厚生労働省が発表した令和3年上半期の「転職入職者の賃金変動状況」

しかし、30~34 歳は増加が41.9%、減少は32.5%であり、転職入職によって賃金が増加傾向にあることが分かります。35~39歳に関しても増加が38.0%で、減少は27.5%。この結果から30代の転職で年収がアップするケースのほうが多いようです。もちろん、それぞれのアップ・ダウンの金額は異なりますが、「30代の転職はやめたほうがいい」というのは、根拠がある話とは言い切れないでしょう。きちんと自身の価値を示せれば、30代の転職でも年収アップを果たすことは可能です。

転職サイト・エージェント活用など戦略的な転職プランを

転職サイト・エージェント活用など戦略的な転職プランを

【転職 30代のまとめ】

  • 30代の転職は実績重視、即戦力となれるかが勝負
  • 転職の成否は20代よりも準備や戦略性が必要に
  • 30代の転職は前半・後半かかわらず年収増加傾向に

昨今、終身雇用制度が崩壊し、より良い職場を目指して転職することが当たり前になりつつあります。なお、20代なら未経験であっても「育成枠」での採用もありますが、30代以降は実績や能力を見込んだ「即戦力」としての採用が中心になるため、綿密な対策をし、戦略的に転職プランを練らなければなりません。

転職を成功させるためには、転職サイトや転職エージェントを活用して情報収集を行いながら、企業側のニーズを正確に把握する必要があります。資格取得だけではなく、仕事の実績やマネジメント能力の習得も重要であると認識しておきましょう。