子どもを育てながら働き続けるクリエイターはどんな出産、産後、復帰を経験してきたか。
さまざまな職種のクリエイターによる「子どもとしごと」の関係をリレーインタビュー!
木元 菜々子さん
クリーク・アンド・リバー社映像セクション所属。入社後フジテレビの情報番組「とくダネ」を7年間担当。2015年に産休から復帰してからは、BSフジ「ジャパコン・ワンダーランド」でアシスタント・プロデューサー職に就く。
ハードな現場から本社への配置転換
学生時代にテレビ局の報道番組でアルバイトをした後、クリーク・アンド・リバー社の映像セクションに新卒で入社し、以来フジテレビの情報番組「とくダネ!」のアシスタント・ディレクターを5年、ディレクターを2年務めていた木元さん。朝の帯番組のディレクターと聞くだけでハードな職場を想像するが、2014年9月に男の子を出産、翌4月認証保育園0歳児クラスにお子さんを入園させ、仕事に復帰した。
1週間に1日はまるまる徹夜をするような生活で、悲しい事故や事件に向き合う仕事は、体はもちろん精神的にもハードな毎日だったという。そんな働き方だったので、何かあったら迷惑をかけてしまうと思い、2月頃に妊娠が分かった段階ですぐに上司に相談をしたところ、タイミングよく番組改変期の3月に番組から離れ、産休に入る8月までは本社の採用担当部署に配置換えをしてくれたという。
「制作専門職はずっとこの業務内容と決まっていたのに、上司の計らいで産休に入るまで本社の仕事に切り替えてもらえたんです。社内では、同じ職種で妊娠、出産をした女性がまだ誰もいなかったので、色々と相談にのってもらい配慮してくれた上司と会社に本当に感謝しています。」
妊娠5カ月目から始めた保育園探し
妊娠が分かると出産直前の7月までは本社で勤務をし、8月から産休に入り出産、そして翌4月に仕事復帰をと考えていた。そこで妊娠中は安定期に入った5カ月頃から保育園探しを始めていたという。少し早いような気もするが、保活の激戦区と言われる世田谷に住んでいた木元さんは、もともと自分たちの子どもが認可保育園(※1)に入ることは至難の業だと思っていたという。
「うちは一人目だけど、兄弟がいる家庭では俗にいう兄弟ポイントというものがついています。それ以外にもいろいろな家庭の事情でさらにポイントのある方もいると思うし……。そうなると、うちみたいな夫婦外勤の共働きで、お互いの両親が遠方という人ってすごくたくさんいると思ったんです。だからそんなわが家が希望する認可保育園に入れるとは最初から思っていませんでした。もちろん申し込みはするけれど、割と早く気持ちを切り替えて、妊娠中から認証保育園(※2)を中心に見学を始めました。私は絶対認可という考えではなく、家から近くてサービス内容も充実し、保育時間が私たち夫婦のライフスタイルに合っていれば、認証はナシという考えはなかったですね。」
「保育園情報は事前にネットなどで調べたり、土曜日や妊婦定期健診の日程に合わせて見学をさせてもらったり。仕事柄リサーチは慣れていたので(笑)。」と認証保育園選びについて語ってくれた。
結局認可保育園の入園承諾通知はもらえたものの、第一希望ではない、家と駅から遠い園の内定しか出なかったので、家から近く設備が充実していて、見学の際に気に入っていた認証保育園を選んだという。
復帰後の仕事と子育てスタイル
「復帰の際、上司には週末休みで平日は17時くらいに退社できて、その範囲で私ができる仕事があればありがたいですという感じで要望を伝えました。」という木元さん。4月にお子さんを保育園に入園させて職場に戻ると、いままでの情報番組ではなく、新しい職場であるBSフジのアニメ、ゲーム情報番組「ジャパコン★ワンダーランド」を上司に打診され、仕事を再開させた。
「この番組は隔週放送で、制作時間にもゆとりがあることが今の私に合っています。それにもともとアニメやゲームは好きなジャンルでもあるので、自分の好きなことに仕事として携われ、とても充実しています。」
一方の子育ては、お子さんの朝の送りはご主人、迎えは17時前後に仕事を切り上げて、一度帰宅し食事の下ごしらえを終えた木元さんが18時過ぎに行く。その後夕飯までをお子さんとふたりで済ませたら、20時頃に帰宅するご主人が、お子さんをお風呂に入れるのが日課だという。
「それ以外、夫婦で家事育児の役割分担を明確には決めてないけれど、余裕のある方が気づいたときにやるというやり方で、わが家はうまく回っていると思います。」という。
出産して1年半、復帰して1年が経ってみて
「妊娠前は、出産してこんなふうにまた仕事に復帰できるか不安があったのですが、思っていた以上に会社にも現場にも良くしてもらっていて、本当にありがたい思いです。」
楽しくて刺激ある現場にいられること自体が、今の生活でのストレス発散にもなっているという。
「子どももどんどん成長していて、眠くなったら自分で「ねんね」といって横になったり、夜中何回か起きてもさほど大泣きすることもなくまた眠りについてくれたりして、あまり手を煩わされず、母としては楽をさせてもらっているなと感じます。私自身、子どもはもちろん大好きですけど、「子どもべったり」な生活は性格的にもできないと思うし、子どもにとっても世界が広がらないので、友だちとの関わりやいろいろなことを経験させてくれる保育園に入れたことは、今のわが家の生活にとってとても重要なことでした。」
「今はこの毎日をきちんと送っていけるよう、子どもだけじゃなく、自分自身の健康管理も大切だと思っています。私が倒れたらダメだと。それは子どもを持ってから考えが変わってきたことかもしれません。」
産休、復帰を控えた方へのメッセージ
「保育園は本当にありがたいところなので、できることなら認可、認証などにとらわれ過ぎずに自分が満足できる保育園を探すことが大事だと思います。お子さん、ご家庭に合う園を見つけ出せるといいですね。」と木元さん。
そしてテレビ業界で働く、これから産休や育休を控えた方がやっておいたほうがいいこととして、
「テレビ業界というところは、経験値は積まれていってもこれと言った明確な資格はなく、強いて言うなら「根性あります!」ということくらいしか言えないんですよね(笑)。だからまずは、ジャンルを問わず「リサーチ」ができるということが大切だと思います。それができるとどんな現場でも仕事がしやすくなるので仕事の幅が広がります。あと、これからの人は『Final Cut Pro(ファイナルカット)』、『Premiere Pro(プレミア)』などの編集ソフトを使いこなせるといいと思います。出社しなくても作業ができると何かと便利なので。私も時間があったら今後覚えたいと思っています。」という。
子育てをしながら新しい職場で働くという、この1年すべてが新しいことだらけだった木元さん。これから自分の理想とする仕事のスタイルをお聞きすると、
「働き方は今の勤務形態のまま、今後はもうちょっと内容に深く関わっていきたいなと思います。1年間ここで仕事をする中でいろいろやりたいことも出てきました。編集のこともそうですが、「それらができるようになれば、また新しい仕事が増えていくので。」と復帰後たった1年で子育てスタイルを作りあげ、自身のキャリアアップやその先をちゃんと見据えているところに「根性」だけではない、前向きなバイタリティが感じられた。
一日のスケジュール
6:30 | お子さんと一緒に起床 | |
7:00 | 朝食(洗い物、洗濯を夫婦で分担) | |
8:30 | 木元さん出発 | |
9:15 | 木元さん仕事開始 | |
9:30 | 登園(ご主人の送り) | |
17:00 | 木元さん退社→夕飯下ごしらえ | |
18:00 | お迎え→帰宅→夕飯 | |
20:00 | ご主人帰宅→お子さんとお風呂 | |
21:00 | 寝かしつけ | |
1:00 | 就寝 |
ホッと一息
Twitterで育児のつぶやきを書いたり、夜中の授乳中に覗いて同じ状況の方と繋がったりしているとホッと和みます。あと、ほぼ日手帳が1日1ページというつくりになっているので、育児メモを書いて、それをマスキングテープで飾ったりしてリラックスしています。
(※1)国の基準で作られた保育園。入園の際は自治体に申し込みをする。
(※2)認可保育園では保育ニーズの多様性に応えられない部分があるため、都が独自の基準を設定して運営を民間に委託した保育システム。入園は各施設へ直接申し込む。
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