ゲームディレクターからゲームプロデューサーに昇格するなど、キャリアパスを順調に歩んでいるものの、自分がプロデュースした作品が「なかなかヒット作に恵まれない」という方もいるでしょう。「こうすれば必ずヒットする」という方程式を見出せず、数年間にわたりヒットメーカーになれずにくすぶっているというケースは、実はそんなに珍しいことではありません。
ブームの仕掛け人になるためには、これからの流行をキャッチする「先見性」が必要です。「現時点での流行」を後追いしているようでは二番煎じ、三番煎じになってしまいます。ゲームプロデューサーになって3~4年経ったものの、まだヒット作に恵まれていない方に向けて意識すべき視点を紹介します。
ゲームプロデューサーに求められる「客観性」と「俯瞰力」
「ゲームが好きだから、自ら作る仕事をしている」という方が、ゲームプロデューサーの大多数を占めるのではないでしょうか。中には、「『あんなゲームを作りたい』という案をゲームプロデューサーになるまで、ずっと温め続けてきた」という方もいるかもしれません。
そうした「制作に対する情熱」を持つことはもちろん大切です。ただし、ゲームプロデューサーはプロジェクトの総責任者であるということを忘れてはいけません。人員・予算の確保、企画立案、制作進行など、「さまざまな業務を統括する役割が第一である」と意識してあたることをおすすめします。
自分が「面白い」と思う視点を優先するのは危険
ゲームプロデューサーとして業務を遂行する際には、分野別・項目別に細かくスケジュールを把握・管理し複数のタスクを同時に実行するマネジメントスキルや、他職種(プログラマー、イラストレーター、シナリオライターなど)と円滑にコミュニケーションを行うスキル、そして、客観的・俯瞰的に全体を眺めて「主観を排除した判断」を行う能力が問われます。
もちろん、自分が「面白い」と感じることに対して自信を持つことは大切ですが、ゲームプロデューサーがそれだけで客観性を失ってしまうのは危険です。立場上、開発からあがってきたものを俯瞰的に捉え、ジャンル全体の動向や世間のトレンドなども踏まえたうえで、各メンバーに適切に指示を行う必要があります。自身のこだわりだけではヒット作を生もうとする姿勢は改めましょう。
世間の人が「面白い」という感覚により敏感であるべき
制作現場の総監督としての役割を果たすディレクターと異なり、プロデューサーは、ゲームのプロモーション活動も含めて発売までの全プロセスに関わります。そのため、どんなに良いと思える作品を作ったとしても、世間の人が「面白い」と感じてくれたり、より多くの人に認知してもらえたりするプロモーションをしていかなければ、売上につながらないことも考えられます。そうしたリスクを常に予期しながら、常に一歩先の視点でチームの舵取りを行うことが重要です。
「自分の視点」「自分の感じ方」に基づいて突き進んでしまいがちな方は、制作者としてはそれで結果を出せるかもしれません。しかし、ゲームプロデューサーとしての適性があるかと問われると疑問符がついてしまいます。自分はもちろんですが、世間の評価や時代の流れ、トレンドの動向などにアンテナを立てたうえでの判断が求められます。つまり、客観性と俯瞰力が重要な素養と言えるでしょう。
「面白い」のは当然であり、「今の世の中にウケるか」が重要
ゲームを制作においては、「面白いけど、あまり売れていないし、すぐに飽きられてしまった」というケースも珍しくないでしょう。世間のニーズとマッチしていなければ、どんなに精魂込めて制作を行ってもヒットにつながらないこともあります。自己満足で終わってしまうと、利益が出ず、会社の経営にも影響を与えかねません。ビジネスである以上、「どのくらいの売上を期待できるか」という視点を持つことは不可欠です。
世の中の流行を先取りするのが「ウケるゲーム」の条件
ヒットタイトルを生み出すためには、ゲームプロデューサーが「世の中の流行」を敏感に察知していることが大前提となります。独りよがりな感覚は捨てて、「ウケるゲームを実現するために、どうすれば良いか」を見極めたうえで、企画を練りましょう。
歴史を振り返ると、流行(および売上を伸ばすために求められる施策)は、時代とともに移り変わってきました。
黎明期にはゲームセンターにおいて短時間で楽しめる作品が求められ、その後家庭用ゲーム機が普及すると、ある程度のボリュームがある作品に主流が移りました。そして現在は「基本料金が無料であるものの、アイテムなどは有料」という課金型のスマートフォン用ゲームが全盛の時代になりました。そうしたデバイスやゲームの取り巻く環境の変化にも敏感になり、時代を先取りする意識が重要になるでしょう。
ゲームプロデューサーは「1~2年程度先のトレンド」を予測せよ
ゲームプロデューサーにとって先取りする意識が大切な要因としては、競合他社に先を越されないようにする面とリリースする時期が関係しています。ゲームの企画を練ってからリリースされるまでには、おおよそ半年以上のタイムラグがあるので、リリースからしばらくの間、ブームが続くことを狙うのであれば、「1~2年程度先のトレンド」を予測するのが定説と言えるでしょう。
未来のブームを100%正確に予測は誰にもできませんが、アンテナを広く張り、さまざまな情報をキャッチし続けることで、トレンドの移り変わりの予測精度を向上させることは可能です。多様なジャンルのゲームや、ゲーム以外の物事にも関心を持ち、チームメンバーや友人・知人などとの会話の中から流行の移り変わりを把握して、企画に反映させましょう。
幅広いジャンルのゲームへの好奇心が、新しい発想の源
「人気があるゲーム」に注目することは誰にでもできることです。ヒット作を生み出せるゲームプロデューサーは、他の人が気づかない「ブームの種」を見つけられるからこそ価値が高いと言えるでしょう。そのためには、特定のタイトル・ジャンルだけではなく、多種多様なジャンルのゲームに精通することが求められます。
プレイヤーの視点で他のゲームの研究に取り組もう
ゲーム研究にしても話題作品を追いかけて、それをプレイしているだけでは不十分と言えます。担当しているタイトルとまったく異なるジャンルや、非電源系のゲームにも興味・関心の範囲を拡大する必要があります。「チーム内、あるいは、会社内の誰よりもゲームをやり込んでいる」と自負できるくらいになるのが理想です。
これまで触れてこなかったジャンルのゲームについても積極的にプレイしましょう。「世間では、どのくらいの難易度を適切だと考えているのか」を把握して、「多くの人が投げ出さずに最後までプレイできるライン」が見えてくれば、プレイヤーの満足度も図れるでしょう。常に楽しむことと、ゲームプロデューサーとしての観点で研究することを両立させることが大事です。
「先見性」を持ってジャンルを問わず「ブームの種」を探そう
さまざまなジャンルのゲームの動向に加えて、ゲーム以外の分野における世間の流行にも敏感になることを心がけましょう。「ブームの種」はどこに植わっているかは分からないものです。成功しているゲームプロデューサーの共通項は、1~2年後のトレンドを見据えて斬新な企画を練れること。ブームの仕かけ人となってヒット作を世の中に送り出すためには、人々が何を求めているのかを見極める「先見性」が欠かせません。
ゲームプロデューサーにとって大切なのは、さまざまな事象に好奇心を持って、楽しみながら学ぶことです。ご自身の引き出しを広げることを常に意識し、固定観念や常識にとらわれない新しい発想を生み出す糧にしましょう。「役員・経営者を目指したい」あるいは「転職・起業をしたい」とお考えのゲームプロデューサーは、「ヒットタイトルの有無」によってその後のキャリアパスが左右されるからです。
「先見性」を育んで、ヒットタイトルを世の中に送り出そう
【ゲームプロデューサー キャリアパスのまとめ】
- 企画や制作進行には、「客観性」と「俯瞰力」が必要
- 「少し先の世の中でウケるか」という観点が、企画において求められる
- 幅広いジャンルのゲームについて楽しみながら学び、新たな発想を生み出す糧にしよう
ゲームプロデューサーの業務内容は、人員・予算の確保、企画・制作進行、プロモーションなど多岐にわたります。そのため、「木を見て森を見ず」という姿勢ではなく、森とも言えるプロジェクト全体を客観的・俯瞰的に把握することを心がけましょう。また、「現時点での流行」「今、人気があるゲーム」だけを追いかけていても、ゲームプロデューサーとして大成できる可能性は低いと言えます。
成功しているゲームプロデューサーは、1~2年後のトレンドを読んで、ブームを起こす準備をしています。「先見性」がないプロデューサーは、世間が求めているものをキャッチアップできていない恐れがあるので、さまざまな知識を吸収して発想の引き出しを増やしましょう。
多種多様なジャンルのゲームに精通することは、ゲームプロデューサーとしての強みになります。担当しているタイトルと無関係のジャンルや、非電源系のゲームにも興味・関心の範囲を広げてみましょう。ご自身の引き出しを広げることを常に意識し、固定観念にとらわれない新しい発想を生み出す糧にすることをおすすめします。そうすれば、ヒットタイトルを世の中に送り出せる日が来るはずです。