制作デスクは映像制作現場のスタッフをサポートする役割を持ちます。そのタスク内容は「何でも屋」「縁の下の力持ち」と形容されるほど、多岐にわたります。そのため、基本的なデスクワーク能力、PCスキル、コミュニケーション能力、気配りなど、制作デスクにはさまざまな能力が求められるものです。
制作デスクとして活躍する方の中には、「業務をスムーズにこなしたい」「タスクマネジメントが上手くなりたい」という方も多いでしょう。制作デスク・制作進行の役割において重要なマルチタスクの処理の仕方、求められるスキルやスムーズな業務遂行に必要な「逆算力」について解説します。さらに、制作デスクのキャリアが長い方に向けて、AP昇格を目指すうえで養っておきたい「俯瞰力」についても触れていきます。
「制作デスク・制作進行」の役割と基本スタンスとは
制作ジャンルがアニメ・TV・CM・MV・映画などで、その役割が異なるのが「制作デスク・制作進行」の特徴です。まずは各ジャンルにおけるそれぞれの役割の違いを整理するとともに、業務における基本スタンスを整理しましょう。
映像制作における制作デスクの立ち位置
映像制作の仕事はTV番組、CM、SNS動画、イベント映像、映画、アニメなど幅広いシーンで必要とされています。それぞれの現場の種類にもよりますが、映像制作にはさまざまなスキルや役割を持つスタッフが関わっています。
制作デスクはそんな映像制作の現場における制作チームの一員です。制作チームはプロデューサーを筆頭に予算やスケジュール管理を取り仕切り、スタッフはもちろん、クライアントや広告代理店、役者との折衝も行う部門となります。
制作デスクの役割・仕事内容
制作デスクの役割は一口で言うと「縁の下の力持ち」です。プロデューサーやAP・ADといった制作チームのサポートを行い、役者とスタッフ間のスケジュール調整なども行います。さらにはスタジオや楽屋の手配、弁当の準備、クライアントからの電話対応、ADたちの事務処理代行、経理業務、とその業務は多岐にわたります。これら業務だけでなく、時にはスタッフの愚痴聞きや若いADたちの体調管理といった、チームの精神面・肉体面にまで気を配る必要もあります。
つまり、制作デスクは頼まれれば何でもこなす「何でも屋」であり、母親のようにいないと困る「縁の下の力持ち」的な役割を担っているのです。
気配りやサポートを好んで行えるかがポイント
前述のように、制作デスクの業務は多岐にわたります。特にアニメ業界やTV業界の制作デスクは激務になることが多く、業務量が原因となって辞めてしまう方も少なくありません。
業界によっても異なりますが、制作デスクは気配りやサポートを好んで率先して行える人に向いています。また、未経験でも現場で経験を積めることから、将来的に映像制作関連でのキャリアアップを目指したいと、強い志を持っている人に向いている職です。
制作デスクに求められる能力と「逆算力」の重要性
制作デスクの業務は多岐にわたるため、求められるスキルもさまざまです。特に「逆算力」は制作デスクであるならば身につけ磨くべきスキルとなります。各工程にどれだけかかり、どのくらい人が必要なのか(スタッフ・演者両方)を理解し、逆算で行動できるかが問われる仕事です。制作デスクの基本スキルと逆算力について説明します。
必要とされる基本スキル
制作デスクはスケジュール調整や電話対応、場所の確保といったことが主な業務であり、デスクワークがメインとなります。そのため、基本的なパソコン操作や事務スキルは最低限必要です。他にも経理スキルやコミュニケーションスキル、折衝・交渉スキル、スケジュール管理スキルなども必要とされるケースがほとんどと言えます。制作デスクとして特別な資格は必要ありませんが、「何でも屋」として幅広いケースに対応できる柔軟性とさまざまなスキルが求められると覚えておきましょう。
あると便利な秘書・アシスタント経験
制作デスクは制作チームの一員としてスケジュール管理や撮影場所・楽屋等の確保などを任されることが多い傾向にあります。書類作成や経理業務なども行う場合があるでしょう。また、プロデューサーやクライアントといった企画側とディレクターやクリエイターといった制作陣との橋渡しを行うのも制作デスクの役割です。企画の骨子を掴み、意図を理解した上で伝える必要があるため、確かな理解力やコミュニケーション能力も制作デスクでは必要とされます。
そのため、スケジュール管理を始めとした幅広い業務を行いコミュニケーション能力が必要とされる秘書やアシスタント経験があると、制作デスクはやりやすいかもしれません。
スムーズな業務遂行のために「逆算力」を身につけよう
制作デスクの業務は多岐にわたり、さまざまなスキルが求められます。必要なところにサポートをし続けることが必要であり、2つ3つの業務を掛け持ちすることは珍しくありません。マルチタスクの結果、業務過多となりすべてのことが中途半端になる場合もあります。
そうした事態を避け、制作デスクの業務をなるべくスムーズにこなすためには「逆算力」を身につけることが大切です。たとえば、プロジェクトの各工程にはどれだけ時間がかかるのか、どれくらい人員が必要なのか、予算はどれくらいになるかをまず把握します。そこから逆算してどのようなサポートが必要になるかを予想して先に動く、これが逆算思考です。
逆算力が養われれば、プロジェクトのフェーズごとのゴール到達に向け、優先的に着手すべきタスクを整理できるため、業務過多に陥りにくくなります。また、スムーズに業務を行えることでミスも減り、たとえば制作デスクでありがちな連絡漏れといったトラブルも回避しやすくなることでしょう。
制作デスクからAP昇格を目指す!「俯瞰力」を身につけよう
業界にもよりますが、制作デスクはアシスタントプロデューサー(AP)へのキャリアアップが目指すポジションだと言えます。APへの昇格を目指すうえでは、営業的感覚と顧客ビジネスへの理解が重要です。持ち前の逆算力を磨くことはもちろんのこと、全体掌握についてもより理解を深めることがステップアップを狙ううえでの鍵となってきます。
経験を土台にAPへの昇格を目指せる
映像制作現場において、ディレクターやカメラマンなどほとんどの職種は経験者でなければ採用されません。しかし、制作デスクは基本的な事務スキルがあれば映像制作が未経験でも採用される可能性があります。そして、制作デスクの経験をもとに、将来的にはAPを目指すことも可能です。
つまり、制作デスクは未経験でも映像制作の最前線で何でも屋としてさまざまな業務を学ぶことができ、その経験を活かして業界でキャリアアップを図るきっかけになる職業なのです。
AP昇格のポイントは「俯瞰力」
もちろんAPにキャリアアップすることは決して簡単な道のりではありません。しかし、未経験であっても制作デスクとして数年のキャリアを積めば、映像制作現場で必要とされるさまざまなスキルが身につきます。つまり、キャリアアップに必要な最低限の土台は出来上がっていくわけです。
制作デスクとしてのキャリアを重ね、さらにAPを目指すのであれば、「俯瞰力」が重要になります。APに必要とされる能力は営業的、経営的な視点・感覚です。たとえば、「今回のプロジェクトではなぜこの予算になったのか」を制作目線・顧客目線、さらには顧客の業界全体の目線で見る力はAPになるならば必要になります。
キャリアアップを目指すのならば、逆算力を磨くことはもちろん、業務全体を高い視点から分析する俯瞰力もぜひ身につけましょう。
逆算力と俯瞰力を養って何でも屋から映像のスペシャリストへ
【制作デスク タスクマネジメントのまとめ】
- 制作デスクは映像制作における縁の下の力持ちである
- 制作デスクは未経験でもできるからこそ逆算力で差をつける
- APへのキャリアアップを目指し俯瞰力を身につける
制作デスクは制作チームの一員として、映像制作におけるさまざまな業務、関係者をサポートする仕事です。何でもこなす縁の下の力持ちであり、かなりのやりがいあるポジションと言えるでしょう。しかし、業界によってはやることが多すぎて業務過多となりミスが多発してしまう場合もあります。制作デスクとしてスムーズな業務を行うためにはタスクマネジメントを意識し、ゴールを見据えたうえで優先順位をつけて行動できる逆算力を身につけましょう。
また、制作デスクは映像制作職の中でも未経験スタートできる数少ない職域です。さらに経験を積めばAPへのキャリアアップも目指すことができます。APになることはそれほど簡単ではありません。しかし、制作業務だけでなく顧客ビジネスへの理解や営業的感覚を身につけ、プロジェクトを俯瞰して捉える癖をつければ、いずれAPへの道も開けることでしょう。