動画制作やYouTubeなどのLIVE配信を行っている方やこれから取り組む予定の方であれば、「ビットレート」という言葉をご存知でしょう。ビットレートは、YouTubeのLIVE配信や動画制作の際に必要な知識であり、設定をきちんとすることで高品質のLIVE配信や動画配信が可能になります。しかし、ビットレートの調整など、動画制作における適切なビットレートを設定することは簡単なことではありません。
では映像・動画クリエイターとしてまだ日が浅い方の場合、ビットレートに関してはどんな知識が必要なのでしょうか。ビットレートの基本知識や推奨値、注意点などを解説します。
動画制作におけるビットレートの重要性
制作した動画の内容がいかに素晴らしくても、画質が悪いだけでユーザーに見てもらえないケースも珍しくありません。映像・動画クリエイターとして、動画配信における画質の仕組みを理解するうえでは、まずビットレートを押さえることが基本となります。
そもそも動画におけるビットレートとは?
ビットレートとは、動画1秒あたりに含まれるデータ量を指します。
英語では「bits per second」であり、「bps(ビーピーエス)」という単位で表記されます。つまり、1秒に何bitの情報を含んでいるのかを示す値ということです。よくbpsの前に「k」と表記されますが、「k」は「1,000」を意味する単位。たとえば、500kbpsと表記されたら、「1秒間に500,000ビット」という解釈になります。
なおbitで示される数値が大きければ、データ量が大きくなります。動画を視聴する際に「ダウンロードまで時間がかかる」といった経験がある方も多いはずですが、その場合はデータ量が大きいことが要因として挙げられます。
なぜデータ量が大きくなりがちかと言うと、動画の画質や映像表現にこだわるからです。高ビットレートの動画は高画質であり、より豊かな映像表現を可能とします。
ビットレートは大きく2種類に分類
ビットレートは大きく映像と音声の2種類です。映像ビットレートと音声ビットレートを合算した値が、動画ファイルの総ビットレートとして表現されます。
映像ビットレート
映像ビットレートは動画内の映像に関連するビットレートであり、音声ビットレートよりも数値が大きくなる傾向にあります。映像ビットレートは500kbps〜700kbpsが一般的です。音声ビットレートが96kbps〜128kbps程度であることからも、映像ビットレートのデータ量の大きさが分かるでしょう。
音声ビットレート
音声ビットレートは動画ファイルにおける音楽や挿入音などに関するビットレートです。サンプルレートとビット深度で算出されます。サンプルレートとは、1秒間に音声サンプルデータを再生する回数です。ビット深度は1音声サンプルあたりのデータ量を意味します。
映像ビットレートと音声ビットレートが組み合わさって1本の動画になります。そのため「画質とは別に音声に関してもビットレートが存在する」ということをまずは認識しておきましょう。
YouTubeのLIVE配信時におけるビットレートの注意点
近年、YouTubeのLIVE配信を行うクリエイターが増加傾向にあります。また、YouTube以外の媒体でも、動画のLIVE配信はユーザーとの接点を作るうえで重要な機会となっています。では、YouTubeなどのLIVE配信を行ううえで、ビットレートに関してはどんなことに注意すれば良いのでしょうか。
単にビットレートを上げればいいというわけではない
ビットレートは数値が大きければ、それに比例してキレイな映像でのLIVE配信が可能になります。しかし、単にビットレートを上げて高品質な設定にすればいいというものではありません。理由はむやみにビットレートを高く設定するとデータ量も大きくなるため、スムーズなLIVE配信にならない恐れがあるからです。また、配信が途切れたりプツプツしたり、切断されたりなどの不具合が生じます。
特にYouTubeのLIVE配信はビットレートの上限が決められていないため、映像・動画クリエイターであっても、ビットレートの設定に迷うことが考えられます。YouTubeのLIVE配信においても最適なビットレートの数値を把握しておくことが大切です。
YouTubeのLIVE配信に適するビットレートは?
YouTubeのLIVE配信の際に適した数値としては、下記の条件のもと検討する必要があります。
【YouTubeのLIVE配信の際にビットレートを調整する条件】
- アップロードの速さ
- 回線が混雑する時間帯
- 配信時に使用する端末のスペック
1つずつ見ていきましょう。
まずはアップロードの速さを把握する
LIVE配信ではアップロードの速さ、いわゆる上りの速度が重要です。LIVE配信はエンコーダーを通じて変換したデータがLIVE配信用のサーバーにアップロードされます。そして、アップロードされたデータを視聴者が再生する仕組みです。そのため、アップロードの速度が遅いと、スムーズなLIVE配信につながりません。上りの速度の確認方法は、回線速度を計測するサイトで簡単にチェックできます。「Fast.com」などの計測サイトを活用してみてください。
回線が混雑する時間帯に合わせて調整する
「アップロードスピード」や「上り速度」などの項目に速度を把握できたら、次に回線速度を超えないように設定しましょう。例えば、アップロードスピードが100Mbpsならば90Mbpsなどに設定します。ただし計測すると分かりますが、回線速度は常に一定ではありません。
たとえばお昼休みの時間帯や20時以降などはインターネットの利用者が多くなり、回線速度が遅くなる傾向にあります。回線のプロバイダによって混雑を避けるために、速度制限をする場合もあるでしょう。こうした回線速度の変化を把握したうえで、LIVE配信の時間を考えてみてください。
配信時に使用する端末のスペックを考慮して調整する
回線速度以外に目を向ける必要があるのが、端末のスペックです。エンコードの処理には端末のスペックが関係しており、能力が低い端末を使うと通信速度にも影響が出ます。具体的にはCPU( Central Processing Unit)といって、パソコンの脳みそに該当するパーツの性能が低いと、データの大きさに処理能力が追いつかず、通信速度が遅くなる可能性があるという訳です。
上記を踏まえたうえで、YouTubeで推奨されているビットレートは「4,500kbps〜9,000kbps」であることも覚えておくとよいでしょう。これは他の媒体と比較すると高めの数値になります。経験のある方もいると思いますが、YouTubeのLIVE配信で高画質が多いのは、ビットレートの推奨値によるものです。
ビットレートへの理解は避けては通れないポイント
動画クリエイターにとってLIVE配信や撮影・編集は花形の仕事と言えます。しかしながら実際に編集業務を行うと、ビットレートの調整も含めて非常に地味な作業が多いものです。
特にビットレートに関しては、どの数値が最適か、配信時や制作時に試行錯誤が必要になります。LIVE配信時の推奨値もありますが、その範囲内で画質などを検討して最適な数値を見つける必要があります。
また編集した動画の美しさは解像度とフレームレートで決まりますが、最終的にはビットレートの設定が関わってきます。解像度は動画の画素数、フレームレートは動画の滑らかさを表現しており、両者の数値が高くてもビットレートが低ければ高画質な動画になりません。高品質な動画にするには解像度やフレームレートなどの設定に応じたビットレートを検討する必要があるのです。
最適なビットレートを見つけるには、編集やLIVE配信の経験を積んで精通することが大事になります。地味な作業も多くビットレートに精通することは根気が必要ですが、知識を身に付けることで顧客からも信頼されるクリエイターになれるはずです。
ビットレートの数値には精通しておいた方が良い
【「ビットレート」についてのまとめ】
- 動画の画質の仕組みを理解するうえでビットレートが重要
- YouTube などのLIVE配信における推奨値の把握は基本
- ビットレートの調整は地味だが動画制作において重要な業務
ビットレートとは、1秒あたりの動画のデータ量なだけに、YouTubeにアップロードする動画やLIVE配信時にも影響のある数値です。そのため、動画の画質の仕組みを理解するうえで、ビットレートの詳細に関する把握は不可欠だと言えるでしょう。また、YouTubeでのLIVE配信では4,500kbps〜9,000kbpsが推奨値となります。ただし、回線速度の計測や混雑時間帯の把握、使用する端末のスペックなどを考慮して、ビットレートを決定することがポイントです。
ビットレートに関しては、解像度とフレームレートによって設定します。細かな調整が必要な場合もあり、調整作業は試行錯誤を要することから地味な仕事と言えるでしょう。しかしながら、ビットレートに精通することで顧客が満足できる動画の制作につながることもあるはずです。顧客からの信頼獲得のためにも、ビットレートの理解を深めることを意識しましょう。