近年、ドローンを飛ばして空撮を行う映像手法はそれほど珍しくなくなりました。黎明期に比べて機体の性能は格段にアップしており、安価に購入できるようになったことで、ドローン活用が一般化しているのが背景だと言えます。いまや「誰でも簡単に飛ばせて空撮も当たり前」。そんな時代に突入しているのです。

しかし2022年はドローンパイロットたちにとって大きな転換期となります。
多発するドローン事故を防いだり、ドローン利用のモラルを守ったりするうえで法整備が行われるからです。特に「機体の登録義務化」「ライセンスの国家資格化」によりどんな変化が起きるのか、気になっている人も多いのではないでしょうか。

ドローンパイロットたちは何をすべきなのか、さらに将来パイロットとして勝ち残るためにはどんなスキルが必要なのかも合わせて解説していきます。

2022年施行のドローンに関する法整備まとめ

飛行するドローン

2022年にドローンの法整備が一気に進むことをご存知でしょうか。何となく見聞きしていたとしても、具体的にどんなアクションが必要なのかまで把握していない方もいるでしょう。まずは確実に押さえておくべき、「機体登録義務化」「操縦ライセンスの国家資格化」について解説します。

6月から機体登録の義務化がスタート

航空法の改正により2022年6月20日から、100g以上のドローン・ラジコン機などの無人航空機は、国土交通省への機体登録が義務化。これにより、改正法施行以降は、登録されていない無人航空機、つまり100g以上のドローンを飛行させることはできなくなります。

機体登録義務化の背景には、ドローンの利用が急増していることはもちろん、安全審査されずに無許可飛行する事案が頻発していることが挙げられます。義務化されることで機体所有者が特定され、事故機やパイロットを調査し原因の究明や、安全確保するうえで必要な対策を法に則って講じられるようになるのです。

12月から国家資格化される

さらに大きな法整備が、12月に施行予定の国土交通省によるドローン操縦ライセンスの国家資格化です。現在、民間資格はあるものの、ドローン操縦に必要な国家資格はありません。そのため、誰でも操縦ができます。しかし、導入以降の近い将来、国家資格がなければドローンを操縦できなくなる未来が待っています。

そもそも国土交通省としては、増加するドローンの事故を問題視していました。そうした背景から、ドローン飛行の安全性を確保するために、6月の機体登録義務化とともに、12月から国家資格化することになったのです。

訓練所への入所などの検討も視野に

未定内容も多いものの、ドローンの登録は車の車庫証明、操縦ライセンスは運転免許証のようなものになると考えられています。そのため、民間資格を取得できる訓練所などは将来的に自動車教習所のような存在となり、指定スクールで講習を受けていれば実技試験などが一部またはすべてが免除される見込みです。早い段階で資格取得に向けて対策しておけば、施行と同時に国家資格を持つドローンパイロットとしてデビューできるかもしれません。

「空撮できる」ことが再び脚光を浴びる時代へ

ドローンを操作する人

ドローン黎明期と比べると、今は安価で高性能なドローンが増え、誰でも気軽に操縦できるようになりました。ドローンの普及にとって良いことですが、一方でスキルを持つパイロットにとっては逆風でもありました。しかし、2022年の法整備によりその流れが変化しつつあります。「空撮できる」ことが再び脚光を浴びる可能性があるのです。

高性能で安価なドローンが付加価値を奪った

2022年現在、黎明期と比べればドローンの価格帯は安くなり、性能も格段にアップしています。誰でも手に入れることができ、思ったよりも簡単に飛ばせることは、ドローン文化・技術の向上に大きく貢献してきたと言えるでしょう。

その一方で「誰でも飛ばせる」ことは、ドローンパイロットの付加価値を低下させる要因にもつながりました。誰でも飛ばせて空撮できるのであれば、わざわざ高額なコストをパイロットにかける必要がありません。極端な話、自分で飛ばせば良いためです。

つまりドローンが高性能で安価になればなるほど、パイロットの持つスキルという付加価値は失われつつあったのです。

空撮スキル・資格を持つ人材が求められる時代に

しかし、2022年の法整備により「ドローンで空撮できる」ことは、再び価値を持つと考えられています。

機体登録義務やライセンスの国家資格化により、ドローンや空撮への参入ハードルが上がるでしょう。たとえば、国土交通省ではレベル4の操縦を行えるスキルをライセンス取得のラインとしています。これは「有人地帯において目視外飛行が可能」なレベルであり、ある程度の熟練パイロット領域のスキルです。

将来的に国家資格がなければドローン操縦できなくなる可能性を考えた場合、「空撮できる」ことは確かな価値になります。その結果、さまざまな業界から空撮スキルとライセンスを持つパイロットが求められる時代が来る――そんな近未来も想像に難くありません。

空撮技術以外にパイロットに求められるディレクション力とは

空撮するドローン

今後ドローンパイロットの需要が高まることは、ほぼ確実だと言えます。では今後、空撮スキルや国家資格を持っていることが当たり前になったとき、どのようなスキルを身に付けていれば、パイロットとして付加価値を提供できるのでしょうか。現場で重宝されクライアントから信頼されるには、空撮技術以外に「ディレクション力」が鍵を握ります。

提案力と対応力が信頼関係を生む

ドローンによる空撮はクライアントだけでなく、ディレクターも具体的にどのような画を撮るべきかはっきりイメージできていないこともあります。ドローンが普及してきたとは言え、まだまだ空撮においてはノウハウが確立されておらず、未開拓な部分もあるため、仕方がない面でもあります。

そこでこれまで以上に現場のドローンパイロットに求められるのは「提案力」です。クライアントやディレクターから大まかなイメージをもらい、現場にて「こんな画はどうでしょう?」と提案するシーンは多々あります。

また、撮影現場は不測の事態が起こるのは当たり前。さまざまなことを想定しながら動き、問題があってもすぐリカバーできる――そんな「対応力」もドローンパイロットには求められます。

2022年以降、パイロットに空撮スキルがあることは当然となりつつあります。だからこそ、差別化のために提案力・対応力を身に着け、クライアントとの信頼関係を築きましょう。

立ち回りや根回しを覚えることも重要に

不測の事態・想定外の出来事という意味では、現地に行ってみて初めて分かることがたくさんあります。たとえば、GPSが使えない場所であったり、鉄塔や電柱があるためイメージしていた画が撮れなかったりといったケースは決して珍しくありません。また、許可申請を取っていたとしても周辺にお住まいの方は撮影が行われることを知らないため、通報されて撮影が中断してしまうケースもよくあることです。

こうした事態をなるべく避けるには、撮影日前に「ロケハンを必ず行うこと」が大切です。そして、地元警察に事前に連絡を入れてドローンの撮影予定を伝えることで、撮影中断という最悪の事態を防げます。空撮技術だけでなく、撮影をスムーズに行うための立ち回りや根回しなどのディレクション力も身に付けましょう。そうすれば、ドローンパイロットとして一目置かれ重用されるようになるはずです。

10年先も一線級で活躍できるパイロットを目指しましょう

ドローンとパイロット
【「ドローン 資格」についてのまとめ】

  • ドローンパイロットならば機体登録と国家資格取得への準備が不可欠
  • 空撮できる人材は、国家資格により付加価値が生まれ必要とされる時代が来る
  • 勝ち残るためには空撮技術だけでなく、撮影全体のディレクション力も必要となる

ドローンは技術開発も進み、性能の高い機体を安価に購入できるようになりました。大衆化されたことでドローンの認知度が上がったことは良いことですが、ドローンパイロットのスキルはそこまで重視されなくなってきたのも事実です。しかし、2022年、法整備によりドローンを取り巻く環境が大きく変化します。機体登録の義務化とライセンスの国家資格化により、一定以上のスキルのない人材は淘汰されるためです。

将来的に資格を持つドローンパイロットはその価値が見直されるでしょう。そして、世界中でドローン需要が高まっている昨今において、国家資格と高い空撮スキルを持つ人材は、確実に重宝されるはずです。5年、10年先を見据えた場合、国家資格を取ることはもちろんですが、スキルのさらなる向上を図ることも重要になります。そして、対応力や立ち回りを含めた撮影全体のディレクション力も、一線級のドローンパイロットとして勝ち残るためには不可欠な能力だと言えるでしょう。

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