インターネットの急速な普及もあり、パソコンやスマートフォンで、好きなタイミングで好きな動画を自由に視聴できる世の中になりました。
しかし、映像界隈の進化は留まることを知りません。これまではユーザーは視聴するだけという一方向のコミュニケーションが大半でしたが、近年ではタッチポイントを通して双方向のコミュニケーションを実現できる動画も登場しています。それが「インタラクティブ動画」です。
インタラクティブ動画は「動画に触れられる」という革新性が魅力であり、最近では「次世代のマーケティング手法」として注目されています。しかしながら「仕組み」や「マーケティングにおける活用方法」といった詳細については、まだ把握できていない方も多いのではないでしょうか。そんな映像・動画クリエイターとして駆け出しの方に向けて、インタラクティブ動画の仕組みや活用方法について解説します。
知っておきたいインタラクティブ動画の基本
近年、話題のインタラクティブ動画とは、動画コンテンツ内にタッチポイント(クリップまたはタップが可能なボタン)を設置し、そのアクションによって商品の購入やさらなる追加情報の視聴につなげられるなど、双方向のコミュニケーションを実現する手法です。
例えば、以下のような動画です。
具体的には、通常の「mp4」などの動画素材に、「html5」などからなるアクショナブルな要素を重ね合わせて制作します。動画とコードが二次元で組み合わさることで動画にインタラクティブな(相互に作用する/双方向の)機能が追加され、動画上でストーリー分岐などのアクションが取れるようになる仕組みです。
従来の「見るだけ」の動画から、ユーザー「参加型」に進化した点が大きな特徴だと言えるでしょう。
誕生した背景には「スマートフォンの普及率の向上」「動画配信プラットフォームや、映像・動画クリエイター(YouTuber含む)の増加」「より楽しい動画のニーズが高まったこと」などが挙げられます。
インタラクティブ動画では、タッチポイントにより、以下の機能の実装が可能です。
【インタラクティブ動画で実装できる機能】
- 視聴者の気分や好みによってコンテンツを選択できる
- 視聴者の選択によって作品のストーリーが分岐する
- 視聴者が知りたい情報が動画上にポップアップする
従来の動画において、映像にたいする視聴者の態度は受動的でした。そのため飽きて途中で見るのをストップしてしまったり、最後までじっくり視聴してくれたとしても、購買などのアクションを起こさないままサイトから立ち去ったりするケースが多い傾向にありました。
一方のインタラクティブ動画では、自発的なアクションを促す仕掛けが設置されているため、視聴者により印象に残る体験をしてもらえます。そのため、視聴完了率やコンバージョン率、ブランドの認知度、エンゲージメントの向上につながりやすいと言えます。
また、能動的なアクションを楽しんだ視聴者がSNSなどで「この動画が面白いから、チェックして」などと拡散することによる宣伝効果も考えられるでしょう。そのほか、視聴者が知りたい情報の詳細ページや、商品・サービスの販売ページにダイレクトに誘導できること、視聴者の動き(クリック数など)をデータとして取得できることも大きな魅力です。
インタラクティブ動画の主な活用シーンとは
インタラクティブ動画は、「特定の業界や商材」に特化しているわけではない点も非常に興味深い要素です。幅広い業界・商材に適した手段であり、制作の目的や手法によってBtoC(企業と個人間取引)/BtoB(企業間取引)のどちらにも対応できます。
たとえばBtoCの場合、アイテムを身につけたモデルが動画の中に登場し、そのアイテムをタッチすることでECページにランディングするタイプが一般的です。
一方BtoBであれば、クイズ形式でその会社の展開しているビジネスのことが分かる動画になっており、タッチポイントでクイズへの回答を促すことで認知度につながる仕組みなどもよくある手法だと言えます。BtoBを対象とした「使い方、チュートリアル」「ブランディング、認知度アップ」を目的として制作されるケースがあることも覚えておきましょう。
インタラクティブ動画が注目されている背景には、視聴者側から高い共感が得られやすい点が挙げられます。
たとえば、「食材の選択肢」をタップすることにより、ストーリーが分岐し、作りたい料理のレシピを視聴者が選択できるインタラクティブ動画は人気を博しています。ほかにも化粧品・コスメの広告でストーリーが分岐するインタラクティブ動画が使われることも増えてきました。通常のwebサイトやランディングページより視聴者のニーズとのマッチングが得られやすく、パフォーマンスが高い傾向にあるのです。
また少子高齢化の影響で各企業において人手不足が深刻化する中、自社の採用方針・文化に沿った内容のインタラクティブ動画を制作し、人材採用に活用している企業も存在します。インタラクティブ動画では、感覚的に企業風土を動画で楽しみながら伝えられる点が大きな魅力です。優秀な人材の確保や、定着率の向上(離職率の低下)を実現するために検討する企業が増え始めています。
また、行政、医療(治療内容の説明)などの領域においても、インタラクティブ動画の活用が可能です。今後は、官民問わず「情報を伝えるツール」の1つとして、欠かせない存在になることが期待されています。
効率的なマーケティングにつながる次世代の動画
コロナ禍により、外出を自粛し、自宅でインターネットを利用する時間が長くなったこともあり、多くの企業がインターネット上で広告・宣伝目的の動画の配信を以前よりも積極的に行うようになりました。しかし、コストをかけて動画を制作しても、効果が出なければ意味がありません。
インタラクティブ動画においても、「とにかくタッチポイントを設置して、双方向性のある動画を制作すれば良い」というものではなく、作り方にも注意や工夫が必要です。たとえば、「タップできる箇所を目立たせる」「アニメーションを付けて、気付きやすくする」など、緻密な設計が不可欠だと言えます。効果的なマーケティングを行うためには、「視聴者が心地よく視聴・タップできる動画になっているか」「知りたい情報・誘導したいページに無駄なく辿り着ける設計になっているか」という点に留意しながら、制作する必要があるでしょう。
インタラクティブ動画では「どのタッチポイントを何回クリック・タップしているのか」「動画からの離脱が、ブラウザを閉じたネガティブなものなのか、商品ページに遷移できているポジティブなものか」「ブラウザを閉じる時間やタイミング」などの解析が可能です。商品・サービスの販売ページ・資料請求ページなどへの導線配置や、マーケティング施策の費用対効果の計測に役立ち、効率的なマーケティングにつながります。
たとえば、「商品紹介のチャプターに至る前に、視聴者が離脱している」という事実が判明した場合は、商品紹介のチャプターにジャンプできるように「スキップボタン」を追加しましょう。インタラクティブ動画には「手法が斬新であり、双方向でのコミュニケーションが可能で楽しい」という「視聴者側にとっての魅力」だけではなく、「制作者側・企業側にとってのメリット」もあることを認識し、積極的に活用することが大切です。
今後、インタラクティブ動画はより当たり前の施策になる
【「インタラクティブ動画」についてのまとめ】
- インタラクティブ動画は、双方向のコミュニケーションを実現する
- BtoC、BtoBを問わず、幅広い動画ジャンルでの活用が可能
- 次世代のマーケティング手法として期待されている
従来の動画におけるコミュニケーションは「制作者側から視聴者側へ」という一方向のものでしたが、インタラクティブ動画の登場により、タッチポイントを通して双方向のコミュニケーション(「好みに合ったコンテンツを選択できる」「ストーリーが分岐する」「詳細な情報が表示される」など)が可能になりました。
インタラクティブ動画は、BtoCであるかBtoBであるかを問わず、幅広いジャンル(商品・サービスの販売、ブランディング、人材採用、教育、行政、医療など)に対応でき、次世代のマーケティング・広報・情報伝達の手段として注目されています。今後、インタラクティブ動画を活用することは、官民問わず、より当たり前の施策になっていくでしょう。
なお、インタラクティブ動画には「手法が斬新で、双方向的なコミュニケーションが可能で面白い」という視聴者側にとっての魅力だけではなく、制作者側・企業側にとってのメリットもあります。商品・サービスの販売ページなどへの導線配置や、マーケティングにおける費用対効果の計測にも役立つので、ぜひご活用ください。