自社の成長のため、グローバルに活躍できるプロフェッショナルな人材を求める企業が増えています。グローバルな活躍を目指すクリエイターやエンジニアも増加していますが、希望通り活躍するためには、英語でのコミュニケーション力と、面接やプレゼンテーションで自らのスキルやアイディアをアピールする表現力が不可欠です。
近日クリーク・アンド・リバー社(C&R社)で、ウェビナーやデモレッスンを開催するロバート・ヴィンセント氏に、日本人に合った英語の上達方法や日頃の指導内容について伺いました。
Profile
異文化同士を結びつける仕事が楽しい
――アメリカではNPOの役員を務めていらっしゃったそうですね。どのようなお仕事だったのですか。
ボリビアで農業や水道に関わるプロジェクトを進めていました。
私はペルーに5年間住んでいたことがあり、スペイン語ができるので、ボリビアとアメリカの事務所を結ぶ通訳や翻訳、アメリカでの資金調達、交渉などに関わりました。
異なる文化を結びつけ、コミュニケーションを進める仕事をとても気に入っていました。
――そして2017年から日本で英語指導のお仕事を開始します。何がきっかけだったのでしょうか。
妻が日本人で、結婚して日本に住むことになりました。私たちはアメリカで出会ったのですが、私のNPOの仕事はリモートで行うこともできたので、日本への移住はあまり迷うことはありませんでした。
しかし、しばらくこの生活を続けてみると、リモートだけでは全ての仕事を完結できず、自費で渡米しなければならない機会が増えてしまいました。そのため、日本でできる仕事をすることにしたのです。
その頃まだ日本語はほとんど話せなかったので、日本語を使う仕事は難しく、英語を教える仕事をすることにしました。異なる文化同士のコミュニケーションに関わることは大好きですから、私にとてもよく合った仕事だと思っています。
――今のお仕事の楽しさはどんなところにありますか。
生徒の多くはさまざまな業界で働き、世界のさまざまな地域で活躍する人もいます。彼らの経験や挑戦を聞くことは、私にとっても楽しい経験です。
また、皆さん忙しい中でとても熱心に取り組んでくれます。生徒さんの英語やコミュニケーションの上達過程に参加できることがとても光栄だと感じます。
語彙や文法以外に、話すスピードや強弱、間を取ることが大切
――日本人の英語や英語学習の姿勢に、何か特徴はありますか。
先ほども言いましたが、本当に皆さん熱心です。私が生徒さんによく提案するのは、自信をもって話すこと、間を取ったり話すペースや音量を変えることなどです。
――間を取ることが必要なのですね。どうしてですか。
間を取ることで、話しながら聞き手とコミュニケーションを取ることができます。
オバマの演説を聞いたことはあるでしょうか。彼は、ポーズを取りながらゆっくり話し、観客の拍手や感嘆の声を引き出します。聞き手には、話し手の言ったことを考える時間が必要なのです。重要なことを伝えた直後なら、その時間は特に大切。
英語で話すときは、ずっと話し続けるのではなく、意識して黙る時間をつくることも大切にしてください。
――話すペースや音量は、具体的にどうするとよいでしょうか。
話すペースについては、ゆっくりと話すことをこころがけるとよいでしょう。
早口で話したがる人は多いですね。話すスピードが速いほうが、英語力があると思ってもらえると考えるのかもしれません。緊張して早口になることもあるでしょう。
しかし、発音の問題を抱える人も多く、発音の点からいっても、ゆっくり話す方がよい発音になり伝わりやすくなります。
音量は、ずっと同じではなく話す内容に合わせて変えるとよいですよ。特に伝えたいところは大きめの声にするなど、生徒さんには強弱をつけることを勧めています。
――私たちは、外国語を話すとなると語彙や文法のことを気にしがちですが、スピードや間の取り方も大切なのですね。思考方法の面では、どんな指導をしていますか。
私のレッスンでは、いつも「シンプルに考えて伝える」ことを提案しています。
話す内容や伝え方だけでなく、自分のアイディア、考え方そのものをシンプルにできるとよいと思います。
英語でうまく伝えられないときは、自分の考えが複雑すぎてわかりにくい場合もあります。プレゼンテーションの準備などでは、まず何をいちばん伝えたいのかよく考えて、自分のアイディアを整理してシンプルにしておくことが大切です。
反復練習を多用し、改善点を絞る
――教授方法ではどんな工夫をされていますか。
プレゼンテーションの練習では、レッスンの中で5〜6回反復練習をするようにします。指導者の前で何度も話して、問題点を改善することが上達につながるからです。プレゼンテーションの本番が近づいているのに、なかなかうまく発音できない単語があるようなときは、言い換えの表現を提案することもあります。
自分の上達度を測る指針も用意します。たとえば、すべて日本語で話したときを100%としたら、今日のレッスンでは自分の言いたいことを何%伝えられたか。20%であれば、次は30%、40%と、目標を少しずつ上げていきます。
私から生徒さんに、改善するとよいところを2〜3点に絞って、練習するように伝えることも心がけています。
――プレゼンテーションのレッスンはよく実施しているのですか。
はい。実際にプレゼンテーションをする機会がないとしても、プレゼンテーションの練習は会議や日常会話でも役立ちます。言葉だけではなく、間の取り方や話すスピード、そして第1に、第2に、と言うときに指を出して示すようなサインポーズの練習にもなります。
TED Talks で優れたプレゼンテーションを視聴することは、聞き取りの練習となるとともに、話し方や表情、動作の訓練にもなります。
「結果」のアピールが不足する日本人
――採用などの面接に向けたレッスンやレジュメ(履歴書)の指導もされているそうですね。面接やレジュメで注意すべきところはどんなことでしょうか。
面接での受け答えに関して、生徒さんによく伝えているのは、すぐに話さなくてもよいということです。「いい質問ですね」とか「今考えています」とか、何か簡単なことを言って、時間をつくり考えをまとめてから答えると、落ち着いてよい答え方ができます。面接でもサインポーズを使えると役立ちます。
プレゼンテーションや会議での発言と同じように、レジュメに関しても最も大切なポイントを絞って伝える意識が大切です。
レジュメというからには、全部書く必要はないのです。日本人は結果よりも何をしたかという活動内容を書きたがる傾向にあると思います。アメリカの考え方では、結果を見せる方が効果的です。たとえば私なら、「面接コースの受講生の80%は外資系企業に採用」「生徒の10%はTOEICスコア900点以上」など。売り上げが10%アップしたなど、所属組織がどんなベネフィットを得られたのかを伝えることが有効です。
相手の文化と価値観に合わせつつも、自分の価値観も提示していく
――異文化コミュニケーションにおいてロバートさんが重要だと思うことを教えてください。
まずは自分の文化に固執しないで、新しい異文化に合わせるようにするとよいと思います。
たとえば、アメリカでレッスン中に誰も発言をしなかったら、生徒のやる気がない、このレッスンに興味がないと考えます。しかし、日本では興味もやる気もあっても、シャイなために発言ができないことがあります。アメリカの考えでレッスンを進めてしまったら、うまくいかないでしょう。
でも異文化コミュニケーションの面白いところは、違う考えや価値観が接することでよりよいものが生まれることです。ですからずっと合わせるだけではなく、慣れてきたら自分の文化や価値観をその社会で提示するのもよいと思います。
バランスは難しいですが、合わせることも自分の価値観を出すことも、両方大切です。
私はヒエラルキーが好きではありません。ですから、日本のレッスンでは上下関係などなく、皆フラットな立場でレッスンを受けてほしいと思い、そのようにしています。よい影響が与えられているかどうかはわかりませんけれど。
――最後に、英語学習者やグローバルな活躍を目指す人にメッセージをお願いします。
英語を勉強している方の多くは、英語を学習の対象と考えます。しかし言葉は道具です。
仕事や日常生活で何か調べ物をする時、日本語だけでなく英語も使って調べてみてはどうでしょう。活用できる情報は格段に多くなります。
特に、技術系の情報は英語でなら最新のものに出会えますし、翻訳者のフィルターを通さないより中立な情報に接することができます。日本語と英語での情報の違いを比べるのも面白いと思います。
英語を学習するだけでなく、ふだんから道具としてどんどん使ってみてください。
――ありがとうございました。
インタビュー・テキスト:あんどう ちよ/企画・編集:澤田 萌里(CREATIVE VILLAGE編集部)
ロバート・ヴィンセント氏が登壇する無料ウェビナーが開催されます!
面接やプレゼンテーション指導で受講者から高い評価を受けるロバート・ヴィンセント氏が、ZOOMで英語プレゼンテーションのウェビナー・デモレッスンを行います。ぜひ合わせてチェックしてみてください。
2022/8/25(木) 19:00~20:00
英語で自信を持ってプレゼンテーション〜説得力のあるプレゼンテーションをしましょう!
ウェビナーの詳細はこちら
2022/8/30(火) 19:00~21:00
英語で自信を持ってプレゼンテーション〜説得力のあるプレゼンテーションをしましょう!【デモレッスン】
レッスンの詳細はこちら