こんにちは!エージェントの仲本です。 Webディレクターのキャリアについて語るウェビナー「Director’s Beer Bash」の企画・運営を担当しています。
2021年2月の第一回開催以来、ありがたいことに大好評をいただき、リピート参加してくださる方も増えてきた「Director’s Beer Bash」。 今回は2021年5月26日に開催された第四弾「女性Webディレクターのキャリア」のイベントレポートをお届けします!
- 1 今回のテーマ:「女性Webディレクターのキャリア」
- 2 ウェビナースタート:登壇者プロフィール
- 3 導入~テーマトークの前に~
- 4 「キャリアモデルがない」けれど、可能性は広い。それがWebディレクターの特徴
- 5 Webディレクターとしての「強み」は「好き」がヒント
- 6 子育て、体調、家庭との両立…女性特有の悩みもディレクションスキルで解決できる?!
- 7 そもそも『女性ならではの悩み』って本当は無いのかも?
- 8 まとめ
今回のテーマ:「女性Webディレクターのキャリア」
第四弾は「女性Webディレクターのキャリア」というテーマでお届けしました。
私は普段、Web業界特化の転職エージェントとして、多くのWebクリエイターの方とキャリア相談や転職アドバイスのお話をしています。変化の激しいWeb業界で、特に「Webディレクター」という職種・肩書で働かれる方々は、「Webディレクターとはこうやってなるもの」「Webディレクターはこのようにキャリアアップする」というような、所謂『お決まりのレール』というものが存在しません。
中でも女性は、出産や育児といったライフイベントとの両立に悩まれる方が非常に多いです。業界内にまだまだモデルケースとなるような先輩女性ディレクターが少ないこともあって、漠然とした将来への不安を抱えて、相談にいらっしゃる方が大勢いらっしゃいます。
また、過去のDirector’s Beer Bashでも女性視聴者の方から「女性のキャリア」に関する質問をいただくことが多く…。「これは女性ディレクターに語ってほしい!」 そう思い、この第四弾を企画しました。
ウェビナースタート:登壇者プロフィール
当日はYoutubeLiveを使った配信でしたが、定員を超える40名以上の方にご参加いただきました!
まずは登壇者の自己紹介からスタート。 今回は女性Webデザイナーの先輩として、3名の方にご登壇いただき、これまでの経歴についてライフチャートを用いてご紹介いただきました。
水野 怜美(みずの れみ)氏
フリーランス
1987年愛知県名古屋市生まれ。ニックネームは「ちゃんれみ」。新卒で名古屋のWeb制作会社にデザイナー兼ディレクターとして入社し、制作全般を7年経験。カナダで1年フリーランスを経たのち、2016年に転職と同時に上京・Webディレクター専業に転身。Web事業部のマネージャーを務め、2021年2月にフリーランスとして独立。現在はコワーキング事業「いいオフィス」とフリーのプロジェクトマネージャーとしてさまざまなプロジェクトに参画している。
野澤 美子(のざわ よしこ)氏
株式会社コンセント
Web制作プロダクションを経て、2008年から株式会社コンセントに所属。ウェブサイトの運用からディレクターとしてのキャリアが始まり、サイト・アプリのリニューアルや立ち上げを複数経験。企業のデジタルチームの業務支援にも従事している。社内で立ち上げたビールブランド『SLOW SLOW BEER(そろそろビール)』のメンバーでもあり2歳児とともに活動中。
湊 さおり(みなと さおり)氏
株式会社スタジオディテイルズ
武蔵野美術大学 情報デザイン学科 コミュニケーションデザインコース修了。ウェブ・映像制作プロダクションを経て、2020年から株式会社スタジオディテイルズにディレクターとして所属。デジタルを中心としたプロジェクトの企画立案・ディレクションに携わる。
導入~テーマトークの前に~
登壇者によるテーマトークの前に、登壇者の野澤さんが所属する、株式会社コンセントの女性Webディレクター15名にヒアリングしたアンケート結果を共有してくれました!
「キャリア・働き方について悩んだことがあるか?」という問いに対して、9割の方が「ある」と回答。そのうち約7割の方が「女性であることが関係している」という回答。
また、コメントとしてはこんな声も… 「キャリアモデルがいない」
「子どもを望むとキャリアアップに攻めの姿勢が取れない」
「相談できる先が男性ばかり(本当に理解してもらえているか不安)」
やはりみなさん、同じようなことで悩んでいるんですね…。 野澤さん、コンセントの皆さん、アンケートのご協力ありがとうございました!
「キャリアモデルがない」けれど、可能性は広い。それがWebディレクターの特徴
アンケートの共有を経て、いよいよテーマトークのスタート。 登壇者が気になったアンケートの中身を掘り下げつつ、お互いの意見交換が進みました。
ちゃんれみさんがまず気になったのは「キャリアモデルがいない」「60歳になった時のWebディレクターのイメージがわかない」という声。
ちゃんれみさん 「女性に限らず、どのWebディレクターさんも感じている悩みだと思います。そもそも『Webディレクター』という職種・肩書が世の中に誕生してからせいぜい20年程度。まだ間もないんですよね。 ただ、Webディレクターのスキル、例えば『顧客折衝力』『タスク管理力』『プロジェクト推進力』って、Web業界に限らず、様々な業界で必要なスキルですよね。だから他業界でも展開できるし、つぶしが効く。Webディレクションの仕事を始めて10年くらい経った頃にそのことに気付いて、将来に対する悩みがだんだん薄まってきました。」
というちゃんれみさん。その話を聞いた野澤さんも強く同意されていました。
「私も過去に転職に悩んだことがあって、自分のスキルを見つめ直してみたんです。その時に、自分の持つスキルは、Webディレクターだけじゃなくて、全く違う分野に行っても活躍できるんじゃないかって可能性に気付きました。だから、そのスキルをもっと高めたり、広げたりすることを今やるべきなのではないか、それが自分のキャリアのチャンスを広げることに繋がるんじゃないか、と考えられるようになって、以降はキャリアに悩まなくなりましたね。」
Webディレクター歴ではお二人の後輩にあたる湊さんは、このお話に気付きを得た様子。
「実はちょうど今、自分自身のディレクターのスキルに悩んでいたところだったんです。どこかに特化した専門性があるわけではないし、『万遍無く対応する』ことにどれほどの価値があるのか、と考えていました。 でも、お二人の話を聞いて、Webじゃなくてもこのスキルは活かせるんだって気付きを得られました。今はWebが好きだし、今後も関わりたいと思っているけれど、もしかしたらもっと広いキャリアの可能性があるのかもしれないですね。」
Webディレクターとしての「強み」は「好き」がヒント
続いて湊さんが気になったのは、「Webディレクターとしての強み」をどう見つけるか、という悩みでした。
「先ほどのお話から、Webディレクターのスキルは他業界でも活かしていけるとは感じられたのですが、その中でも自分ならではの強みって、どうやって見つけていったらいいのでしょうか。転職の面接でも必ず『あなたの強みは何ですか?』って聞かれますよね。『これなら負けないぞ』ということや、心がけていることなどありますか?」
この質問に対して、野澤さん。
「個人的には『何とかなるという精神力』や『お客様の身になって深く考える』ことなどは心がけていました。ただ、これといって尖っているところはなくて。
『ちょっと得意だな』っていうことを自信にして、モチベーションにしていけるとそれが強みになっていくと思うんですよね。普段の自分の仕事って、特に何も意識せずに行動してしまうことも多いのですが、少しずつ自分のやっていることに意識を向けていくことで、『あれ?これ他の人にはない長所かも』『これって私の強みかも』と気付けるかもしれません。
『得意なこと』だとちょっとぼんやりしちゃって自信が持てない時は、『好きなこと』でもいいかもしれない。自分が仕事の中でやりがいに感じること、好きだからこそ出来ていることを言語化していけるといいですね。」
子育て、体調、家庭との両立…女性特有の悩みもディレクションスキルで解決できる?!
話題は徐々に、女性ならではの悩みへと移っていきます。 ここでは、出産・育児をご経験され、産休育休から復職された経験のある野澤さんが体験談を語ってくれました。
「私が勤めている株式会社コンセントは、産休育休制度がしっかりしているし、これまで取得・復職してきた社員の実績も多くて、周りの社員の理解・サポートもある環境です。それゆえに、復職した後に自分がどう働くかというイメージを持てていたつもりだったのですが、復職前と確実に違うのは『使える時間が限られる』ということでしたね。
それまでは定時内に終わらなくても残業という選択肢がありましたけど、育児中は絶対にできない。たまに『子供が寝た後、夜中に対応する』って言っている方がいますが、その気持ちは絶対捨てたほうがいいです、家庭が崩壊します(笑)
だからこそ、私は『限られた時間でどう効率を上げるか』や『タスクの優先順位をつける』ということに、全力で意識を向けるようになりましたね。
他の育休復帰したメンバーと『復帰前後で変わったこと』について話していた時、案外ネガティブな気持ちを持っている人はいなくて、みんなポジティブに捉えられていたんですよね。
『仕事に対して前向きに取り組めるようになった』
『チームを信頼して上手くタスクを任せられるようになった』
『子供がいることで視野が広がった』とか。
あとは、普段子供のわがままに付き合っているから、仕事で大変なことがあっても広い心で受け止められるようになったっていう人もいましたね(笑)」
また、女性特有の体調変化や、妊活についてのエピソードも。
「女性特有の体調変化があって、人によっては妊娠中から仕事がしづらい・できない状況になってしまう方もいますよね。私は幸いあまりそういうことはなかったんですけど、どうしてもそういうリスクがあることは、事前にチームや会社に伝えておくと安心です。産休育休の実績があまりない会社だと不安になる方も多いと思うんですが、逆に自分をきっかけに会社に伝えて変えていくっていう動きもありなのではないでしょうか。
あと、子供を考え出して妊活を始めると、先々お休みを取る不安から、仕事をセーブしなきゃ、と悩む人も多いですよね。個人的にはわりと楽観的で、そこまで働き方を抑えたり、変えたりはしなかったです。
もちろん、リスクについては想定して対応策を考えて、体調に影響が出そうなことは必要に応じて会社に伝えたほうがいいこともあります。でも、それだけを理由にキャリアにポジティブになれないって、すごくもったいないですよね。」
この野澤さんの話にちゃんれみさんと湊さんは「Webディレクターに似ている」と気付きがあった様子。
ちゃんれみさん「リスクを想定して対策を用意するのって、まさにWebディレクターの仕事ですよね。 昔、まだ起きるかわからないリスクに対して不安になっている後輩ディレクターに『今不安になっても仕方ないよ』って、よくアドバイスしていたのを思い出しました(笑)
不安に思うのではなく、リスクの想定と対策を用意しておいたら、一旦棚に上げるのが大事ですよね。」
湊さん「体調不良とか家族のサポートが必要なタイミングって本来男女関係なく起こりえますし、その他にも急遽仕事ができなくなる状況ってありますよね。どんな状況になっても、社内でお互いにフォローし合えるように、仕事を属人化させない体制づくりが大事ですよね。」
そもそも『女性ならではの悩み』って本当は無いのかも?
その後話題は「女性だから得したこと、損したことはあったか?」という質問へ。
ちゃんれみさん 「仕事をしている中で、損したこと、うまくいかなかったことはたくさんありました。でも、その要因や課題を分析すると、『女性だったから』というより、自分のスキルやモチベーションが不足していたからっていうことばかりでしたね。
一方で、得したことというか、女性としての個性を活かせるのは、女性向け商材とか、女性ならではの視点を活かせるプロジェクトにアサインいただけた時です。」
湊さん 「私も、女性だから損したことってないと思っています。というより、何かうまくいかなかった時に性別のような変えようのないことを理由にはしたくないな、と考えるようにしていますね。」
野澤さん 「損したことは、強いて言えば昔はメイク・髪型・服装とか、女性だから身だしなみを整えないといけないと思っていた節はありました。でも、近頃はリモートワークであまり気にしなくて済むようになったり、多様性として受け入れてもらえることも増えてきましたよね。
個人的には女性への注目度が上がってきて、フォロー体制や制度が増えてきている、という印象で、逆に男性のみなさんに対して私たちがもう少しフォローしてあげたほうがよいことや、気付けていない特有の悩みなどもあるのかな、なんて考えたりもします。」
まとめ
登壇者のお三方には本音で語り合っていただき、最後の質疑応答まで大いに盛り上がりました。最終的には予定時間を30分オーバーする形でウェビナーは終了、総勢60名以上の方にご視聴いただきました!
私自身、職種は違えど働く女性の立場として、参考になる話がとても多かったです。
今後も、Director’s Beer Bashではみなさまに気付きを得ていただけるようなテーマで開催していく予定です!ぜひご期待ください!